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ECB総裁が4月利上げの可能性示唆:識者こうみる

 [フランクフルト/東京 4日 ロイター] 欧州中央銀行(ECB)は3日、主要政策金利を予想通り過去最低の1%に据え置いたが、トリシェECB総裁は理事会後の会見で、来月にも利上げに踏み切る可能性を示唆した。専門家の見方は以下の通り。

 3月3日、欧州中央銀行(ECB)は、主要政策金利を予想通り過去最低の1%に据え置いたが、トリシェECB総裁は理事会後の会見で、来月にも利上げに踏み切る可能性を示唆した。ECB本部前のロゴ(2011年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

●4月利上げは単発、目先の追加利上げの可能性小さい

 <IHSグローバル・インサイトのハワード・アーチャー氏>  

 ECBは金利という銃に弾を込め、引き金を4月に引こうとしている。これ(4月利上げ)はインフレ対応のための1度だけの威嚇射撃だと思われる。ECBは現在は、目先に追加的利上げをする計画はない。

 ECBは、ユーロ圏インフレの上振れリスクが高まっており、物価安定の維持という点で強い警戒が正当化される、とはっきりと表明した。

 トリシェ総裁は同時に、ECBは行動について前もって約束することはしない、と述べ、決定は最新の情報やデータ次第とも言っているが、4月利上げを示唆した以上、実行しないことはほぼあり得ないだろう。

●4月利上げはほぼ決まり、追加利上げのタイミングが問題

 <RBCキャピタル・マーケッツ(ロンドン)のストラテジスト、ピーター・シャフフリク氏>

 4月利上げは9割がた確定したようなもので、市場は虚を着かれた格好だ。4月利上げはほぼ決まり。その後、追加利上げがあるだろう。追加利上げまでの期間は分からない。

●来月からの利上げサイクル入りの可能性織り込む必要

 <ウニクレディト(ミュンヘン)の債券ストラテジスト、コルネリウス・プルプス氏>  

 早ければ来月から利上げサイクル入りする可能性を織り込もうとするべきだ。その必要性は非常に明白で、EURIBORの短期ゾーンで20ベーシスポイント(bp)の利上げを織り込む動きとなっている。まだ利上げの可能性を完全に織り込めたわけではない。

●利上げに向けた慣用語が復活、4月利上げはほぼ確実

 <INGグローバル・エコノミクスのカルステン・ブルゼスキ氏>

 ECBは、過去最低金利の期間終了が近いことを示唆する多様なヒントを与えた。今回は据え置きだったが、トリシェ総裁は事実上、次回4月に利上げすることを前もって発表したようなものだ。

 ECBが発した最初のシグナルは、マクロ経済の評価だ。物価安定へのリスクがついに上向いたと指摘した。ECBが正式に物価上振れリスクを指摘したのは2008年11月以来だ。

 第2のシグナルは、冒頭の声明。金利はもはや「適切(appropriate)」でないとの見解を示し、「強い警戒(strong vigilance)」という言葉が加わった。ECBの慣用語の歴史はまだ浅く、その間に微調整されているが、強い警戒という表現は、次回会合で利上げするという明快なシグナルだ。

 ECBの慣用語をめぐってはかつて「注意深く監視(monitor closely)、「非常に注意深く監視(monitor very closely)、「強い警戒(strong vigilance)」と段階を上げて利上げという運びだった。4月に利上げがありそうだが、非標準的措置の流動性供給措置は維持されるだろう。

●流動性供給オペ変更なしは驚き

 <BNPパリバの金利ストラテジスト、パトリック・ジャック氏> 

 トリシェ総裁によるタカ派的な発言は予想されていた。しかし、ECBが少なくとも6─7月、もしくはそれ以降までは金利を据え置きながら、流動性供給オペを変更していくと予想されていたことから、総裁の発言はサプライズと受け取られた。総裁の発言からは、早ければ来月に利上げが実施される公算が大きい一方で、流動性オペは変更なく継続されることが示された。

 これは、たとえオペの条件が例えば3カ月間変更されないとしても金利には大きな影響がある。リファイナンスオペの平均金利が3カ月物オペ金利を左右するため、ECBの決定による影響は重大なものとなる。

●4月と9月の利上げ予想、周辺国めぐるリスク高い

 <RBSヨーロピアン・エコノミクスのジャック・カイユ氏> 

 欧州中央銀行(ECB)は、2008年と同じようなやり方で、次回会合での利上げを予告した。われわれは4月利上げへと従来予想の変更を迫られた格好だ。

 これまでは9月までの据え置きを見込んでいたため、これは衝撃的だ。

 ユーロ圏周辺国が依然として圧力下に置かれている状況では、このような判断に付随するリスクは高い。そのためこのような状況下にあっては、潜在的な副作用の可能性から、ECBが短期間に複数回の利上げを行うと想像することは困難だ。

 われわれはECBが4月に利上げを行った後、9月に再度利上げすると予想する。

 市場は四半期に1度の利上げを織り込む可能性が高いが、現段階ではこれは適切とみている。ただ4─9月の間の追加利上げの可能性についても、もちろん排除はしない。

●4月利上げ示唆はサプライズ、ECBの独自性が強く出た

 <みずほコーポレート銀行 マーケット・エコノミスト 唐鎌大輔氏>

 まさか来月に(利上げ)という話になるとは思わなかった。利上げはあったとしても今年の10─12月期だと予想していた。前月の総裁会見で、現行の政策金利水準は適正と言っていたので、1カ月でそんなに状況が変わったのかということに驚いた。

 為替は短期的な期待で動くので、ユーロが上昇した動きに違和感はないが、利上げが本当に景気にとって良いことなのか分からない。ただ、伝統的措置と非伝統的措置を明確に分けている欧州中央銀行(ECB)の独自性が強く出た。資金供給は継続する一方、利上げをすると言っている。

 追加でどんどん利上げしていくとは思わない。財政再建の進ちょくなどを見ると思う。トリシェ総裁も一連の利上げの始まりではないと言っているので、とりあえずは利上げの可能性を発信して物価上昇の行方を見たい、ということなのだろう。

 他の中央銀行が(利上げに)追随するとは思わない。足元の物価高はコストプッシュ型でデマンドプル型ではない。しかしECBは、どちらにしても物価高に対して強い姿勢を示すDNAを持った銀行。他の中央銀行が同じ措置に出られるかといったら、そうは思わない。

 これは基本的に円安方向の材料。ユーロ/円は上方向に振れやすい通貨ペアなので、こういう材料が出ると1、2円すぐ動く。しかもユーロ/円はドル/円ほど上値を抑える輸出企業もいない。ユーロ/円主導でドル/円も円安になりやすい。

 きょうは米雇用統計があって(為替の)ポジションを傾けにくい。ドル/円は83円台に乗せて雇用統計を迎えることはないだろう。82.50円も厳しいと思う。

●利上げ言及は意外感、物価上昇への警戒姿勢示す

 <大和証券キャピタルマーケッツ金融証券研究所 投資戦略部部長 高橋和宏氏>

 年内の利上げはないとみていたため、今回のトリシェ総裁による利上げ言及には意外感があった。ただ、食品価格などの物価上昇に対する一時的なものとみており、物価上昇が続けば次の手を打つという姿勢を示すことで警戒感を払しょくさせる意味合いが濃い。南欧の財政不安は足元で拭えておらず、どんどんと追加で利上げする可能性は低いとみている。

●円債市場にとってのポイントは為替動向

 <ドイツ証券 チーフ金利ストラテジスト 山下周氏>

 トリシェ総裁は記者会見で、「(インフレについて)強い警戒が必要だ」としたうえで、「次回の政策委員会での利上げはあり得る」と述べた。4月利上げの可能性を示唆したと受け止められ、欧州債の中短期ゾーンは売り込まれた。EURIBOR先物をみると、市場は4─6月期に25ベーシスポイント(bp)の利上げ、年末までに75bp程度の利上げを織り込んでいる。一方で、リファイナンスオペの固定金利入札・全額供給を継続する旨も表明しており、金利政策と流動性政策を切り分けている形だ。

 今回の発言は、物価安定に比重を置く立場としてインフレ警戒感を明確にした形であり、サプライズとはいえない。連続的な利上げを示唆しているわけではなく、実際、ECBは、2008年7月にインフレ懸念から一回だけ利上げした後、金融危機を背景に利下げに追い込まれている。ただ、市場は、先行きのリスクを過大に織り込むのが常であり、四半期毎に25bpの利上げを織り込むのは普通だろう。その点、市場では、利上げシナリオを織り込んだといえ、中短期ゾーンの金利上昇余地は限られるとみている。

 円債市場にとってのポイントは、為替となろう。これまでユーロをキャリー通貨とした高金利通貨買いのポジションは相応にあったはずだ。キャリー通貨がユーロから円にシフトすれば円安要因となり、円金利の上昇圧力となる。きのうは当然ユーロ高で反応したが、持続的なユーロ高/円安につながっていくかに注目したい。

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