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米雇用統計が改善:識者こうみる

 [ワシントン 4日 ロイター] 米労働省が4日発表した2月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が19万2000人増加し、国勢調査が押し上げ要因となった昨年5月以降で最大の伸びとなった。失業率は8.9%と2009年4月以来の水準に改善した。

 3月4日、2月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が19万2000人増加し、国勢調査が押し上げ要因となった昨年5月以降で最大の伸びとなった。3日のNY証取のトレーダー(2011年 ロイター/Lucas Jackson)

 専門家の見方は以下の通り。

●より良い内容予想しただけに問題、雇用回復は依然出遅れ

 <FTNフィナンシャルのチーフエコノミスト、クリストファー・ロー氏>

 全く予想通りだ。ただ市場予想は先週2月25日にまとめられており、今週発表された米供給管理協会(ISM)データを反映していない。ISMデータの好調さから、今回の雇用統計はより良い内容になると予想していた。予想通りの結果に問題があるのはそのためだ。雇用統計だけが、依然として他の経済指標から出遅れている。

 回復は持続しており、失業率は0.1%低下した。だが900万人近い失業者が職に戻るためには、一段と速い雇用創出ペースが必要だ。

 ホワイトハウスは、雇用の伸びは依然として鈍いとして明らかに不満だが、雇用市場が改善し、特に失業率が低下している限り、オバマ大統領に問題はないだろう。

●良い内容、3カ月の失業率低下幅は近年で最大

 <コモンファンドのチーフエコノミスト、マイケル・ストラウス氏>

 結論としては良い内容だ。失業率が特に重要で、3カ月間の失業率低下幅としては、近代の歴史において最大だ。これは意義深い。中東情勢が緊迫化する前まで、経済が明らかに加速していたことを示している。また過去の数字にもかなり目を引く上方修正がなされており、政府が昨年半ば以降、雇用者数を実際より少なく数えていた可能性を示唆している。

 この水準でも、数字を下押しする天候要因によるゆがみが一部残っている可能性がある。

●米雇用統計こうみる:回復に向けた一歩、予想先走りで失望誘う可能性

 <4キャストのエコノミスト、ショーン・インクレモナ氏>

 それほど素晴らしい内容ではない。失望を誘った1月の内容からは見事に回復したが、内訳をみると、賃金は横ばいで労働時間も依然として低水準だ。全般的に回復は進行しているが、まだ素晴らしいとは言えない。ただ建設は、前月の天候要因による減少から回復しており、これはプラスだ。

 明らかに回復に向けた一歩だが、今回は予想が先走りしていたこともあり、全体的にはおそらく失望を誘う内容と受け止められるだろう。

●FRB、拙速な利上げ極力回避

 <みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト 上野泰也氏>

 2月米雇用統計の結果に対するマーケットへの直接の反応は、4日の米国市場をみる限り、大きくならなかった。前日にイニシャルクレーム(新規失業保険申請件数)の大幅改善を材料に株価が急上昇するなど、雇用統計の良い結果を事前に織り込んで動いてしまっていたため、直前の市場予想に近い雇用統計の数字が出てきても、追加的に動く余地があまりなかったという印象が強い。

 材料の出方次第だが、市場では今後も米国経済に関する過剰な楽観論に基づいた売買、あるいは米連邦準備理事会(FRB)による早いタイミングでの金融引き締めを警戒した売買が行われ、イレギュラーな振れが発生するだろう。しかし、バーナンキFRB議長は、1930年代の大恐慌期における時期尚早な引き締めの失敗や、日銀が2000年8月に行ったゼロ金利解除の失敗などを熟知しているはず。FRBが今回、同じ轍(てつ)を踏むことのないように今後も慎重に行動し、拙速な利上げは極力回避しようとするとみられる。

●FRBの低金利維持でドル買われにくい

 <JPモルガン・チェース銀行 チーフFXストラテジスト 棚瀬 順哉氏>

 2月の米雇用統計の内容は、平均賃金が前月比横ばいであったことを除けば、総じて堅調な結果だった。米利上げ期待が織り込まれて長期金利が上昇し、ドルが買い進まれてもよい環境だったが、現実はその逆になった。

 背景は米雇用統計直前に、バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長をはじめFRBの高官が、低金利維持のスタンスを堅持する姿勢を見せたことだ。

 このため、ポジティブな指標が発表されても、FRBの利上げ期待が大きく高まりづらく、ドルの上値が重くなっている。したがって、当面のリスクは引き続き、利上げ期待の後退による米金利低下を背景とするドル下落方向に傾いているとみられる。

 さらに、これまでも見られたように、原油価格の上昇はインフレ・プレミアムを高め、ドルを押し下げる方向に作用している。

●緩やかな回復傾向続く、景気回復基調が定着

 <コスモ証券 投資情報部担当課長 田口はるみ氏>

 新規失業保険申請件数の大幅な減少で想定された通り、雇用統計も回復してきた。製造業が回復するなかで、横ばい基調だった建設業がプラスに転じたことは注目される。米供給管理協会(ISM)の雇用指数やインターネット求人動向なども改善しており、今後も緩やかな回復が見込まれる。米景気の回復基調が定着しつつあるといえるだろう。

 今回の雇用統計の回復で米連邦準備理事会(FRB)が金融政策を変更するほどのインパクトはないが、このまま雇用の回復が続けば6000億ドルの米長期国債購入の期限である6月以降に追加的な金融緩和策を採らない可能性がありそうだ。

●中身は良くても米利上げはしばらく先

 <マネックス証券 チーフ・エコノミスト 村上尚己氏 >

 中身は悪くない。建設業の雇用なども下げ止まってきた。賃金や週平均労働時間の増加にはまだつながっていないが、少しずつ回復が広がっていることがうかがえる。マーケットはADP全米雇用報告や新規失業保険申請件数で、雇用状況の改善を織り込んでいたので反応が鈍かった。

 しかしながら、失業率は改善したとはいえ依然8.9%と高水準だ。FRB(米連邦準備理事会)が利上げに動くのはまだしばらく先だろう。日銀の利上げはさらにそれよりも後とみられていることから、3つの主要通貨では、ユーロが一番強く、その後ドル、円の順になるのではないか。原油価格が落ち着けば、円安が日本株の下支え要因になるだろう。

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