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日本経済は資源高より新興国の需要勝るとの見方

 中川 泉

 3月10日、日本経済にとって原材料価格上昇による悪影響よりも、新興国の旺盛な需要効果が勝るとの見方が民間エコノミストの間で大勢となっている。ブリュッセルで8日撮影(2011年 ロイター/Yves Herman)

 [東京 10日 ロイター] 日本経済にとって、原油価格の急上昇など原材料価格上昇による悪影響よりも、新興国の旺盛な需要効果が勝るとの見方が民間エコノミストの間で大勢となっている。このため2011年度は、物価見通し、成長率見通しともに上方修正されている。

 ただ、日本経済をけん引している新興国はいまだ引き締めが足りず調整先送りの側面をはらむうえ、先進国の金融緩和長期化がますます商品価格を押し上げ、いずれ過熱のマグマが大きな反動をもたらす危険性は高まっている。

 <コスト上昇圧力鮮明、交易条件急速に悪化>

 原油をはじめとして、素材価格の上昇に拍車がかかっている。2月の企業物価指数は前年比1.7%上昇し08年11月以来の上昇幅となった。素原材料の物価水準は3カ月前より11.6%も上昇している。2月のロイター企業調査では、製造業の78%が資源価格上昇が下期収益に影響すると回答しており、企業業績の懸念材料。食料品やガソリン価格も上昇しつつあるため、家計支出への影響もありそうだ。

 資源高の影響を企業がある程度価格転嫁せざるをえない状況になる中、今年の消費者物価(CPI)の見通しもここへきて大きく上方修正されている。3月のESPフォーキャスト調査(エコノミスト43人の予測集計)では、前月調査までのマイナス見通しから0.17%にプラス転換。12年度はさらに上昇する見通しだ。

 バークレイズキャピタル証券チーフエコノミストの森田京平氏は、「資源の一大消費拠点であるアジア経済の回復の底堅さや、グローバルに供給されている流動性の多さを考慮すると、今後も国際商品市況が上昇していく可能性が高く、今年の物価の焦点がデフレから交易条件の悪化へと代わることを示唆する」とみている。

 <それでも成長率見通しは上ぶれ>

 もっとも、「企業部門にとって、コスト上昇は海外需要拡大である程度カバー可能」(伊藤忠商事・主任研究員の丸山義正氏)との見方が大勢だ。

 フォーキャスト調査では、11年度の実質成長率見通しは毎月のように上方修正され、3月調査では1.6%となった。12年度には2.0%程度に上昇する見通し。生産回復が鮮明となっていることや、先行性のある機械受注統計で輸出がけん引していることなどが背景。

 新興国経済は、インフレ抑制のために引き締め政策を実施しているものの、「実質金利はまだ低く、引き締めは足りない状況」(JPモルガン・チーフエコノミストの菅野雅明氏)。今後、原油高の影響などからインフレ率はがさらに上昇すれば、実質金利はますます低下圧力がかかる。物価高で低所得層の消費は影響を受けるものの、新興国の企業部門は引き続き成長が続くとみられ、「日本の企業部門は、資源高の影響よりも数量効果が勝る」(同氏)とみられている。

 <金融緩和と資源高の悪循環、マグマ溜まる>

 ただ、成長率やCPIの上向きを手放しで喜べる状況ではなさそうだ。新興国の高成長持続の裏には、インフレ抑制の困難さが見え隠れしている。「こうした状況は問題の先送りにすぎず、来年、再来年には資本規制などが一気に強まる可能性もある」と菅野氏は指摘している。

 資源高は、新興国の引き締めの遅ればかりが原因ではない。先進国の金融緩和により世界的な低金利が長期化し、過剰マネーが商品市場に流入、コモディティが金融商品化していることもある。

 日銀の分析によると、新興国などの実需と投資資金の増加が相俟って商品市況を基調的に押し上げており、その背景には世界的に緩和した金融環境が関連している(3月4日発表の日銀レビュー)。

 分析では「個々の中央銀行の視点からすると、国際商品市況の変動に逐次対応することは、世界経済を不安定化させる」としているが、かえってそれがインフレ上昇と実質金利低下を招くなど緩和環境を後押しし、商品市況を押し上げるよう作用している側面があるとも指摘。「緩和的な金融環境の長期継続は、投資家の利回り追求スタンスやリスクアペタイトを強め、バブル生成の確率を高める」と懸念している。

 資源価格の上昇は中東の地政学的リスクばかりが要因ではなく、金融政策当局の対応によっても一層助長される側面があることにも注意を促している。今年新興国、先進国当局ともに対応を誤れば、来年、再来年には大きな反動が来る可能性も否定できない。 

 (ロイターニュース 編集 伊藤純夫)

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