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日銀短観、震災後の集計を4日発表へ:識者こうみる

 [東京 1日 ロイター] 日銀が1日発表した3月全国企業短期経済観測調査(短観)によると、大企業製造業の業況判断DIは2四半期ぶりに前回比で改善した。先行きの業況判断について大企業製造業が3四半期連続で悪化を見込むなど、日銀では、企業は先行きを慎重にみているとしている。

 4月1日、日銀は3月短観を発表した。3月11日に発生した東日本大震災を受け、企業マインドの変化を分析するため、日銀は震災前と後に分類した結果を4月4日に公表する。写真は2007年7月、都内で撮影(2011年 ロイター/Yuriko Nakao)

 3月11日に発生した東日本大震災を受け、震災前後の企業マインドの変化を分析するため、日銀では今回の短観結果について、震災前と後に分類した結果を4月4日午前8時50分に公表する。

 市場関係者の見方は以下の通り。

●震災織り込めず、消化難

 <RBS証券 チーフ債券ストラテジスト 福永顕人氏> 

 日銀短観は震災の影響を織り込み切れておらず、債券市場では消化難となろう。復興関連で、一部議員からではなく、政府から日銀引き受けの本格的な検討がなされているという話が報じられており、予算の財源に関する震災特例公債発行法案に日銀引き受けの可否が盛り込まれるかどうかが注目される。

 実際に日銀が国債を引き受けても、その額が5―10兆円程度以下であれば、直接的にマネーを膨張させてインフレを引き起こす効果は極めて小さい。だが、問題は、そういった直接的な金融効果ではなく、これまで日銀が拒否反応を示してきた国債引き受けを実施することになった場合、日銀の独立性、ひいては円の信認が失われるという効果だ。

 日銀が繰り返しデメリットを強調し続けてきただけに、そのような政策がなされた場合に、今後はいかなる政府の要望も受け入れる可能性があると市場が受け取る可能性は高い。

 仮に日銀の国債引き受けが実施されることとなった場合、国債の需給をサポートするという観点からの金利低下は起こらず、かなりの円安と長期金利の上昇が起こるのではないか。日銀引き受けが求められるほど震災国債の市中消化に不安があるわけでもない。リスクの大きさを考えると、見送られる可能性は高いものの、実際に見送りが確定するまでは不安定な相場が続きそうだ。 

●生産など厳しいが金融政策の変更には至らず

 <マネックス証券 チーフ・エコノミスト 村上 尚己氏>

 震災前のデータが多く参考にはならないが、PMIや自動車工場の状況などをみると3月の生産は10%近く落ちる可能性が大きい。この経済ショックは大きく、日銀は何らかの対応を検討するかもしれない。

 ただ現時点では金融政策の変更には至らず、一部報道のあった被災地の金融機関への低利融資といった政策にとどまるのではないか。

●4日発表の短観結果に注目、震災後のDI悪化は確実

 <コスモ証券 投資情報部担当課長 田口 はるみ氏> 

 東日本大震災が起こった3月11日までに72%の企業が回答しており、今回の日銀短観は震災の影響をほとんど受けていない。製造業では機械や自動車などで輸出が堅調だったほか、非製造業でも小売売上高の増加や建築の改善が寄与しているが、調査回収日(3月11日)ベースで震災前と後に分類した短観結果を4日に発表するとしており、こちらを見ない限りは現状をつかめないだろう。

 ただ震災後の被害の大きさからみて業況判断DIの悪化は確実だろう。製造業では計画停電などが生産計画に影響を与えるとみられるほか、非製造業でも消費の自粛や物流の停滞がネックとなる。福島原発の先行きが読めないことも企業心理を悪化させる一因だ。

●震災後の状況が十分に反映されておらず、円買いにはならない

 <クレディ・スイス証券 外国為替調査部長 深谷幸司氏>

 短観が示す業況判断は若干改善方向にあるものの、震災後の足もとの状況が十分に反映されていないため、円買い材料にはなりにくい。震災の影響を受けて、一段の金融緩和状況が長引く日本は、早期利上げが見込まれる欧州や量的緩和第2弾に終止符が打たれる予想が台頭している米国との比較において、金融政策の方向性に明確な差異がある。

 G3間で金融政策にギャップがある環境は、市場のボラティリティの低下と相まって、キャリー・トレードを招きやすい。キャリー・トレードはまだ本格化していないものの、今後も円安トレンドが続くとみている。

●震災後の復興需要の見通しに注目

 <農林中金総合研究所主任研究員 南 武志氏> 

 今日の統計だけではあまり役に立たないので、分類短観結果公表のような工夫は必要。復興需要がいつごろ発生するかみえてこないが、そのあたりを企業がどう見ているのか注目している。

 日銀は国債引き受け自体はできないと思う。その代わり市中から買うことはできる。資産買い入れ基金を通じた買い入れでもいい。そういう対応が可能だし、できることをすべて出し尽くす必要がある。

 ただ、今直ちにそういう措置を取る必要はない。現在は金利が落ち着いているが、後々はわからない。補正予算が固まり、どれだけの国債を発行するのかが分かった時点で協力するということでよいのではないか。 

●震災の影響織り込まず、決定会合でさらなる金融緩和を実施するかどうかに注目

 <トヨタアセットマネジメント 投資戦略部 チーフストラテジスト 濱崎優氏>

 今回の日銀短観は震災の影響を織り込んでいないことから、論評しても仕方がない。これからの注目すべきことは、来週開催される日銀決定会合において、日銀が震災の復興にどれだけ関わって被災地を支援していけるのかという点。最近のオペの状況からみても緊急な対応はとりあえず終えている。すでに包括的な金融緩和を行なっていることを踏まえると、資産買入等の基金の対象を広げるのかなど、さらに強化するのかどうかに課題が移っている。

 クレジットからみると、今の状況は必ずしもマイナスばかりではない。震災直後は社債だけでなく、政地債、財投機関債などの一般債すべてのスプレッドが当面の資金繰り、換金売りなどを背景に急拡大したが、3週間経った現在は東京電力9501.T<0#9501=JFI>を除けば、だいぶ落ち着いている。スプレッドは縮小する局面にはないものの、さらに拡大する事態は想定しにくい。

●震災後のDI発表であらためて評価

 <SMBC日興証券 チーフ債券ストラテジスト 野村真司氏>

 3月日銀短観は3月11日で回収率が約7割ということで、数字自体に相場が反応することは限定的にとどまるだろう。リーマン・ショック直後の短観もそうだったが、なかなか反応しづらい短観といえる。少なくとも震災前は1─3月に景気の踊り場脱却がみえており、緩やかな景気回復トレンドに戻るというのがシナリオだった。現状は状況が変わった。今後、震災後のDIが発表されて、あらためて評価されていくだろう。 

 来週の日銀金融政策決定会合に関しては、被災地向けの緊急融資は議論されるだろう。3月のマクロデータが揃わず、景気への不透明感が強まる中、追加緩和策などを含めていつでも動ける状況にする方向で検討が行われるのではないか。

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