[東京 7日 ロイター] 日銀は6─7日に開いた金融政策決定会合で、政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標を0─0.1%程度に据え置くことを、全員一致で決定。東日本大震災を受け、被災地金融機関に対して総額1兆円の低利融資を実施し、担保要件も緩和する方針も打ち出した。
市場関係者のコメントは以下の通り。
●次回会合で追加緩和策の検討ありえる
<三菱UFJモルガン・スタンレー証券 シニア債券ストラテジスト 長谷川治美氏>
今回の日銀金融政策決定会合で、政策金利、基金の規模と内容が据え置かれたことは予想通りだった。震災復興支援のために、総額1兆円、期間1年、金利0.1%の貸し出しを行うことは、事前に報道があったことなどで、この点も予想の範囲内だった。今回は、系統金融機関などに間接的に資金供給を行うことで、被災地により広く資金が行き渡るように考えたもようだ。
景気判断は下方修正した。日銀は、これまで「踊り場を脱却して、2011年度以降は緩やかな回復局面に戻る」とみていたが、震災の影響によって抜本的に見通しの下方修正を迫られた。次回4月28日の会合では、追加緩和策の検討の可能性もあるとみている。
●金融システム安定にフォーカスした政策、為替への影響少ない
<SMBC日興証券 金融市場調査部 シニア債券為替ストラテジスト 野地 慎氏>
市場の一部では、資産買い取り枠を拡大する思惑があったが、日銀は買い取り枠の規模拡大はせず、被災地金融機関向け融資など、クレジット問題に配慮し、金融システムの安定に照準を合わせた政策を打ち出した。日銀は、マネタリーベースの拡大や量的緩和など、為替レートに直接的な影響を及ぼす政策を選択していないため、為替相場への影響は限定的だとみている。
今後は新興国および米国の株価動向や商品価格の先行きをにらみ、クロス円が買われやすい地合いが続く可能性がある。ドル/円については昨年5月につけた95円付近の高値と介入直前の安値76.25円の半値戻しのレベルとなる85.62円をはさんだもみ合いを予想する。
●予想の範囲内、総裁会見でのコメントに期待
<立花証券 執行役員 平野憲一氏>
日銀金融決定会合では政策金利を全員一致で据え置いた。総額1兆円の被災地金融機関向け低利融資も決定したが、予想の範囲内ととらえている。日銀は震災後に十分な資金供給をしており、政策としては評価できるが、震災復興のためのシグナルをもっと強く発信してほしいというのが正直なところ。総裁会見でもう一歩踏み込んだ発言が出てくることを期待したい。
株式市場への影響は現時点で限定的とみている。
●市場は落ち着いており追加緩和の必要なし
<マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木隆氏>
マーケットが落ち着いている現状では日銀は特段何もすることはないし、できないとみていたので政策金利と基金規模の据え置きは予想通りだった。
海外が利上げモードであり、日銀が動かなくても円安に進む可能性が大きいほか、無理に金融緩和をして円安が急速に進めば円安デメリット面も懸念される。株価がパニックで急落していれば指数連動型上場投資信託受益権(ETF)買い入れ枠の増額などもありえたが、安値から半値戻しを達成し一応落ち着いている。景気や企業業績の悪化で株価が下落しても、それは自然な流れだ。
ただ被災地の復興に対して何か行う必要があるということで、総額1兆円の被災地金融機関向け低利融資を決定したということだろう。
●次回会合で社債買入拡充策を期待
<三井住友海上きらめき生命保険 経理財務部部長 堀川真一氏>
日銀金融政策決定会合の内容は想定内。債券・クレジットとも影響は限定的とみている。国債直接引き受けの政府圧力に対して、日銀は基金を通じた国債買入増額で先手を打つとの見方があったが、ひとまず補正予算策定に向けた議論を見極めたいとのスタンスなのだろう。
新年度に入り1週間が経過しようとしている。しかし社債市場では新発債の起債がフリーズしたままだ。今後は震災後の復興需要に伴い、企業の資金調達需要が強まる可能性があるだけに、社債市場の正常化が急務だ。次回以降の決定会合では社債買入オペの拡充策に期待したい。