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コラム

海外勢が日本株売り、円債市場は国債バブルの様相も

 [東京 10日 ロイター] 週末10日の東京市場は、株、為替、金利市場ともに小幅な値動きで推移している。ただ、水面下では海外勢の日本株売りが大規模化する兆しもみえるほか、円債市場では日銀の「異例の措置」が延長されることを前提に国債バブルの様相が強まりつつある。マーケットは静かにマグマを溜めつつあるようだ。 

 7月10日、週末10日の東京市場は、株、為替、金利市場ともに小幅な値動きで推移。水面下では海外勢の日本株売りが大規模化する兆しもみえる。写真は都内の株価ボード。2008年6月撮影(2009年 ロイター/Toru Hanai)

 <一部海外勢に政権交代への懸念>  

 10日の株式市場では、日経平均が小幅安。前日まで7日続落となっていたことから朝方は、自律反発狙いの買いで上昇した。だが、国内外の実需筋の動きは鈍く前場中ごろから伸び悩んだ。「欧州勢によるバスケット売りの観測が出ている。米国市場で原油が一時1バレル=60ドルを割り込むなど、投資家がリスクの高い資産から資金を引き上げる動きが続いている。為替も円高基調を脱却できず、買い手がかりに乏しい」(東海東京証券・エクイティ部部長の倉持宏朗氏)という。

 外資系証券の関係者によると、一部欧州勢を筆頭に足元で日本株を売る動きが目立ち始めていると言う。「遅くとも9月までにはあるであろう総選挙で、民主党が勝って今まで株式市場がポジティブに捉えてきた自民党などによる政策が変更され、混乱が生じることを材料視しているようだ」とその関係者は語る。

 国内証券の関係者は「海外勢の売りを国内の個人投資家の買いで吸収してきた構図があったが、海外勢の売りが継続すると、個人の打撃が大きくなり、個人が手を引くと大きな下げになるリスクがある」と述べていた。 

 <相次ぐ大型増資、2カ月で2兆円の資金吸収> 

 日本株の下げは、6月米雇用統計が事前予想よりも悪化したことで、基調が鮮明になった経緯がある。景気の先行きに対する楽観論が後退したためだが、JPモルガン証券・チーフストラテジストの北野一氏は「雇用統計はもともと振れのある統計だ。米雇用の改善傾向は続いているとみられるため、一喜一憂すべきではないだろう」と指摘する。

 同時に「日経平均が1万円を付けに行く過程では強気になり過ぎた面もある。通常、スピード調整は1カ月、長くて2カ月程度かかる。7月いっぱいか8月くらいまでは調整が続く可能性がある」と予想していた。 

 ある準大手証券ストラテジストは「企業の大型公募増資が続き資金が吸収されている」と話す。月間でみると、過去最高の公募増資額はNTTドコモ9437.Tの公募増資があった2001年2月の9615億円。それが今年6月が9320億円、7月は1兆1200億円と、2カ月間で2兆円を超える。「環境関連など個別材料株が値下がりを続けていることもあり、荷もたれ感が強くなっている」と同ストラテジストは話している。

 この先は、12日の都議選の結果が、マーケットに影響しそうだ。カブドットコム証券・投資情報局マーケットアナリストの山田勉氏は「自民党が敗北した場合、総選挙が最大限に先送りされ10月となる公算が大きい。だが、総選挙の時期、勝敗の行方など含めて全て不透明要因で、どちらかといえば手控え姿勢につながる」と予想していた。 

 <日銀の企業金融特別オペ、延長への思惑根強く> 

 円債市場では、2年ゾーンから10年ゾーンにかけた金利格差がこれまで以上に広がり、イールドカーブは2年ゾーンから10年ゾーンにかけてスティープニングする形状となった。 

 ドイツ証券・チーフ金利ストラテジストの山下周氏は、日銀の企業金融支援特別オペについて、複数のメディアが7月会合で延長を決めると報道したことに関連し「現状のままで、企業金融支援特別オペが延長されれば、中短期ゾーンを引き続きサポートするだろう。ただ、市場は織り込み済みとみられ、中短期ゾーンの波乱材料が消えるということになるだろう」と指摘した。

 中短期ゾーンは金融政策の影響を受けやすい年限とされる。ドイツ証券の山下氏は「ドル/円が80円台に突入するようなら、追加緩和の観測が浮上しかねず、そうした思惑を先取りするような動きではないか」とも話した。 

 <余剰資金が国債へ、バブルの声> 

 余剰資金を抱える金融機関が国債での運用に迫られ、償還期間の短い年限のイールドが潰されやすくなっている面もある。市場には「公募増資に踏み切った企業の資金が設備投資にまわらず、結局は銀行に預金する構図が鮮明になっている。こうした資金が国債市場に流入している」(外資系証券)との見方も出ている。

 過去1カ月間で10年最長期国債利回りは約30ベーシスポイント下がり、国債先物は2円50銭上昇したため、長期/先物ゾーンでは、行き過ぎ感が漂っている。

 RBS証券・チーフストラテジストの市川達夫氏は「テクニカル分析上では、相場の過熱度合いを測るとされるオシレーター系のチャートは、買われ過ぎのサインを出している」と指摘する。「現在の金利水準では、1―3月期につけた金利レンジの下限に近づいている。ロールダウン効果も加味すると、保有銘柄の大半が益出し対象となっている可能性がある。戻り売りが出始めている相場水準であることに加え、国内投資家のフローが寡占化し、一方通行化するリスクが高まっている市場構造であるため、先物が1―2円急落するリスクは軽視できない」と、RBS証券の市川氏は話す。

 銀行勢は、預金が負債になる基本構造になっており、持ち切れる年限はせいぜい5年程度までとされる。仮需が実需を駆逐するようなら、「国債バブル」の様相を色濃くしそうだ。参加者からは「銀行勢のキャピタル狙いの買いが入り、10年ゾーンが主導するかたちでイールドカーブがフラットニングするかどうかが、国債バブルに突入するかどうかの分水嶺。いまはまだ、その手前で足踏みしている」との指摘があった。 

 <円反落、一部クロス円は急落前の水準回復> 

 外為市場では、8日に急騰した円が反落。きょう朝方までにユーロ/円が130円半ば、英ポンド/円が152円付近、スイスフラン/円が86円前半と、8日海外で円が急伸する以前の水準にほぼ値を戻した。南アフリカランド/円も11円前半と急落前の11円半ば、NZドル/円が58円後

半と同59円前半に接近。豪ドル/円は73円付近と下げ幅の半値近い戻しを見せた。

 円急反落の背景となったのは、急伸のきっかけだった原油価格の急落や米金利の急低下が一服となったこと。前日の東京市場で「国内大手投資家から、かなりまとまった規模の円売りが入った」(都銀)ことも下支えとなり、短期筋を中心に円を売り戻す動きが強まった。

 一方、ドル/円は前日海外の序盤に一時93.60円まで上昇したものの、東京市場では日経平均の伸び悩みなどもあって92円後半へ反落。クロス円に比べて戻りの鈍さが目立った。

 そのひとつの要因となっているのが、ドルの下落だ。8日海外市場では「海外勢の間ではドルの上昇が円より話題で、(ドルが下落した)対円だけが特異な動きとして扱われた」(外銀)ほど、円と同時にドルは大きく上昇。前日海外でドルは、その反動で幅広く下落している。広範なドルの売り戻しがドル/円の上値の重さにつながった形だ。

 急騰した円が翌日には急反落したことで、市場ではドル/円やクロス円の先行き見通しが交錯している。「もう一段の買い戻しの可能性がある」(冒頭の都銀)との声の一方、「この水準で伸び悩めば再度売り仕掛け」(別の都銀)との指摘も上がっている。

 (ロイター日本語ニュース 田巻 一彦 ;編集 宮崎亜巳)

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