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海外での放射能風評被害が収まらず、新規輸出開拓難しく

 [東京 31日 ロイター] 東京電力9501.T福島第1原子力発電所の事故に伴う、海外での放射性物質に対する風評被害は工業製品にも広がりを見せており、事故から2カ月以上経っても収まる兆しがない。

 5月31日、福島第1原発の事故に伴う海外での放射性物質に対する風評被害は、工業製品にも広がりを見せている。写真は車内で放射線量を測定する男性。4月撮影(2011年 ロイター/Yuriko Nakao)

 政府は1次補正で、工業製品にも検査補助金を計上して対応を始める計画だが、運用はまだ始まっていない。海外での説明会も実施しているものの、その内容は風評問題を抱える企業の納得のいくものとはなっていないようだ。このため、日本商工会議所の発行する簡易証明への申請は増加している。検査にかかる費用や税関で留め置かれる保税コストなど企業負担増に加え、専門家からは新規の輸出開拓が難しい状況になっているとの指摘もある。

 <海外説明会でも、有効な対策得られずとの声>

 外務省とジェトロ(日本貿易振興機構)が各国で開催している風評被害に関する説明会に出席した現地日本企業からは、十分な情報を得られなかったとの声が挙がっている。

 欧州連合(EU)は日本からの船舶・コンテナの放射能汚染評価基準を「0.2マイクロシーベルト/時」を採用するよう、加盟国に推奨(5月26日現在)しているが、そのお膝元のベルギー・ブリュッセルで5月中旬に説明会が開催された。出席者の1人によると、その内容は外務省が安心・安全をアピールする内容に終始したという。

 日本製品を輸入している現地企業から「顧客の独企業から繊維製品に放射能汚染がないことの証明書提出を求められたが、政府のジェネラルステートメントを出せないか」との要望が出された。大使館側の回答は「枝野官房長官が4月の世界経済フォーラムグロバールリスク会議で大丈夫だと説明したものがそれにあたる」というもの。現地企業からの出席者は「風評被害による需要減少のデータや分析を公表してほしい」と要望したが、日本政府からの回答は「ありません」との一言だった。チェコの企業は、日本に出張する際、放射能への危険性について現地の日本大使館に質問したが、「文部科学省の放射能量の公表値を自分で見るように」との素っ気ない回答だったという。

 政府やジェトロは、風評被害への対応について、基本的に民間の輸出企業と海外輸入企業同士の対応に任せる姿勢を示しているが、企業にとっては「民間では安全性の保証のやり方もわからず、そのための設備投資はきつい」との声があった。

 <日商の証明発行が頼り>

 国内でこうした風評被害に対応して証明書を発行しているのが日本商工会議所だ。中小企業から大企業まで幅広い企業からの申請がきている。発行を始めた3月28日以降、5月20日までに2754件の申請に応じたという。このうち、65%が工業製品、で35%が食品。震災から1カ月間よりも、4月半ば以降の方が申請件数が増えている状況。 

 もっとも日商が発行している証明書は、製品自体の放射能そのものの検査証明書ではなく、文部科学省発表の放射線量を掲載、申請企業が日商登録企業の署名であることを示す「サイン証明」にすぎない。同会議所国際部の原伸一課長は「それでも輸入先の企業が納得してくれれば、日本企業にとっては役に立つもの。法的なリスクを回避するためにサイン証明としたが、費用も低廉できわめて有効との評価を受けている」と語る。実際、先のブリュッセルでの説明会でも、政府からの迅速な情報や対応がない中で「最も有効かつ活用できるのは日商の証明書」との声が挙がっていた。  

 <1次補正で検査補助金、実施はこれから>

 一方で、日商の証明書は、政府による「非汚染証明」が必要な国や、海外輸入業者から詳細な検査要求を受けた場合には、有効ではない。諸外国政府で工業製品に対して政府の証明書を法的に義務づけている国はほとんどないが、通関は通っても輸入業者からの厳しい要請はいまだに収まっていない。ロイター企業調査によれば、放射性物質の風評被害が企業活動の障害要因となっているとの回答は、4月調査よりも5月調査で増加。全体の2割が障害要因として挙げている。

 このため、日商や企業は、政府に対して放射性検査の拡充や証明書の円滑な発給を要望してきた。政府も重い腰を上げ、1次補正で輸出品の放射線量検査に要する経費を補助するために6.7億円を計上。予算計上した経済産業省では、現在、15社程度の検査会社を選定中で実施は6月中旬以降を目指すという状況にあり、まだ運用に至っていない。しかも検査自体に時間がかかるのが実情だ。

 <企業の輸出に遅れ、コスト負担増が問題に>

 政府レベルでは諸外国の輸入規制や厳しい放射性基準について外交努力を通じて、農水産品を中心に風評被害の緩和に動いているのは事実。5月の日中韓首脳会議では、日本からの要請が奏功した面もある。しかし、民間輸出入業者間の取引レベルでの風評被害は「いまだに沈静化していない」(経済産業省)状況だ。

 こうした風評被害がいつまで続くのか、ジェトロでは「今のところ収束のメドはついていない。原発の状況次第」(広報)とみている。企業にとっては、輸出の際の検査証明の取り付けや、相手国での通関検査のための保税コストの負担がのしかかっている状況は改善されていない。

 ジェトロでは輸出への障害について、「親会社から海外子会社などへの販路をもっている企業は、時間とコストさえかければ大きな影響は出ないとみているが、新規の輸出先開拓は難しい状況になっている」(広報)とみている。輸出に活路を見出そうとしている企業にとって、原発の風評被害の影響が次第に大きくなってきている。   

  (ロイターニュース 中川泉;編集 伊藤純夫)

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