[東京 14日 ロイター] アジア時間終盤の取引でドル/円は1円近く上昇した。市場では為替介入への緊張が走ったが、実際の有無は不明のまま。米銀によるまとまったドル買いとのうわさをはじめ、市場ではさまざまな憶測が飛び交った。
東京時間の午後に入り78円半ばでこう着していたドル/円は、午後3時近くに79.60円まで急上昇した。市場では真偽不明の情報が錯そう。米銀が大量にドルを買ったという観測は共通して聞かれたが、そのほかにも、日銀がレートチェックを実施した、日本の大手銀行が追随して買った、日本郵政が買った、誤発注だった、などのうわさが出ていた。介入があったとの情報は市場から聞かれなかった。
財務省幹部は介入の有無についてコメントを控えたが、事前に強い口先介入がなくても「為替介入はありうる」と述べた。
野田佳彦財務相は午前中、為替の動向について「実態とかけ離れた偏った動きだ。定着しては困る」と円高をけん制する発言をしたものの、「マーケットを注視していく」と述べるにとどめていた。介入を示唆するとみられている「断固たる措置」という文言を使わなかったことから、市場からは「段階を判断して使い分けているのだろう。まだ介入に踏み込む段階ではないということだ」(国内銀行)との声が出ていた。
この日のドル/円は朝方の79円前半からじりじりと下落。仲値の需給はほぼ均衡だったが、仲値通過後しばらくして78.45円まで急落した。「海外勢とみられる大口売りで値を下げた」(国内銀行)、「78.50円にあったオプションのトリガーを狙いにいったようだ」(別の国内銀行)などの声が聞かれた。
前日の議会証言でバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が追加緩和の可能性に言及したことや、ムーディーズが米国の格下げを示唆したことで、ドルが幅広い通貨に対して売られた。欧州債務問題も、逃避的な円買いを誘発した。
(ロイターニュース 久保 信博記者;編集 田中志保)