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秋以降の景気下ぶれシナリオに現実味、需要先食いや重い税負担響く

 [東京 28日 ロイター] 東日本大震災からの復興需要や海外需要のけん引で、年度後半から来年度にかけて回復に向かうとみられていた景気に、予想以上の下ぶれ圧力がかかり始めた。

 7月28日、東日本大震災からの復興需要や海外需要のけん引で、年度後半から来年度にかけて回復に向かうとみられていた景気に、予想以上の下ぶれ圧力がかかり始めた。都内で2007年2月撮影(2011年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

 足元の節電や地デジ移行に伴う耐久消費財の販売が需要の先食いを招いているほか、肝心の復興需要は本格的な第3次補正予算成立の遅れで後ずれの可能性が高まり、今年度後半は失速気味となりそうだ。来年度は需要創出効果が期待できるが、復興債の償還財源となる増税のマイナス効果で一部相殺されてしまう。日本経済はここへきて、不透明感が増しつつある。 

 <震災の反動増薄らぎ、特需もはく落へ> 

 震災以降、予想を上回るスピードで生産・消費が回復してきたことが、かえって年度後半以降の景気にブレーキとなる可能性が指摘され始めている。6月の小売業販売額は前年比1.1%増と、震災後初めて前年を上回り、早くも震災の影響が薄らいできたことをうかがわせる一方で、需要の先食いを示す内容となった。節電家電や暑さ対策商品、地デジ移行関連商品が、一時的に全体を押し上げているためだ。このため、BNPパリバ証券では「いったん消費行動が平時に戻った後は、消費の回復ペースが鈍化するとみられる」と予想している。 

 消費を支える所得の先行きも、見通しは悪い。夏のボーナスは、経団連集計で昨年を5%上回り増加の見通しだが、震災による企業収益の悪化で、所得の回復が続くことは難しい状況だ。 

 需要のけん引役として期待されていた海外需要も、減速感が強まる方向だ。米経済は個人部門の回復の遅れにより、さえない指標が目立つ。中国、インドなど、新興国市場での乗用車販売の減速も気がかりだ。日本のサプライチェーン寸断の影響ばかりではなく、相次ぐ金融引き締めの影響があるとも指摘されている。

 ある内閣府幹部は、予想されていたV字回復は上期で終わり、下期はむしろ景気下ぶれが意識されてくる展開に変わったとみている。 

 <秋以降は需要の真空地帯に> 

 こうした生産・需要の回復予想の前倒しにより、電力不足の影響が懸念された7─9月の景気回復ペースは大きく上方修正され、10─12月は逆に下方修正されつつある。シティーグループでは、生産回復とそれに伴う所得の増加により、7─9月の国内総生産(GDP)は前期比年率で10%近い大幅な伸びになる可能性があると見込んでいるが、10─12月は同1%台に減速するとみている。最大の背景は、復興予算策定の遅れで公共事業に切れ目が発生するためだ。「第3次補正の国会提出は9月中旬以降、国会可決は10月初旬にずれ込むとみられ、財源調達としての増税のコンセンサス形成が遅れれば、さらに後ずれする可能性も十分ある」(シティグループ)という。

 クレディスイス証券は「エネルギー基本計画を巡る閣内での混乱は、企業の中期的な生産や設備投資計画、そして雇用政策にも影響を及ぼすことになる」と指摘する。 

 <増税負担で家計慎重に> 

 来年度になれば復興需要が本格化し、景気も浮揚するとみられているが、政府による相次ぐ増税方針の打ち上げは、明らかに需要を下押しそうだ。本来の復興需要がどの程度削がれてしまうのかを見極めながら、増税のタイミングや方法を探る必要がある。

 復興債の財源に加えて、B型肝炎訴訟和解対応費用、1次補正に転用された基礎年金国庫負担分を増税で賄うとすると、13.5兆円程度となる。当面所得税や法人税などが増税となり、さらにその先、税と社会保障のための消費増税も加わってくる。みずほ証券では「日本経済はパイが拡大せず縮小する時代にすでに入っており、閉塞感が強い中、兆円単位の増税が来年度から持続的にのしかかってくるというのは、やはり重い話と言わざるを得ない」とみている。 

 増税による12年度のGDP成長率への影響を野村証券金融経済所が試算したところ、3次補正の6割程度を真水とする前提にした場合、GDP押し上げ効果は1.64%だが、所得税や法人税を10%引き上げると、その効果は1.5%に低下する。仮に、消費税率を一気に4%ポイント引き上げると1.27%に低下する。消費税については、時間をかけて小幅な増税を繰り返せば景気押し下げ効果は小さくなるものの、その分、財政赤字拡大が長期化し、財政の健全化は損なわれると同金融経済所は指摘する。 

 様々な要因が重なり展望が開けなくなりつつある現状、民間からも政策当局からも先行きの不透明感が以前より増しているとの声が増えつつある。  

(ロイターニュース 中川泉;編集 石田仁志)

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