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米債務問題、ホワイトハウスと与野党指導部が合意:識者こうみる

 [ワシントン 31日 ロイター] オバマ米大統領は31日、ホワイトハウスと民主、共和両党指導部がデフォルト(債務不履行)を回避に向け連邦政府の法定債務上限を引き上げるとともに、今後10年で約2兆5000億ドルの財政赤字を削減することで合意したと発表した。

 7月31日、オバマ米大統領は、ホワイトハウスと民主、共和両党指導部がデフォルトを回避に向け連邦政府の法定債務上限を引き上げるとともに、今後10年で約2兆5000億ドルの財政赤字を削減することで合意したと発表(2011年 ロイター/Jonathan Ernst)

 市場関係者の見方は以下の通り。

●市場の焦点が財政から成長率低下へ

 <RBS証券 チーフ債券ストラテジスト 福永顕人氏>

 米国で債務上限引き上げ問題の当初からの期限である2日を控え、最終的に合意に至ればリスク資産がこれを好感する可能性はあるが、債券市場はそれによって金利が上昇するとは考えにくいだろう。それよりも、市場の焦点が財政から長期平均成長率の低下へと変化し、これまでのスティープなカーブ形状を変えるリスクを意識しておいたほうが良いだろう。

 円債市場については、長期平均成長率の低下がグローバル債券市場のテーマとなっても、長期的な税収の伸びに不安が生じ、むしろ財政リスク・プレミアムの増加を通じて、ロングエンドにとっては金利低下要因とはならない。引き続き欧州の金融危機懸念を最重視して7年までブル・フラット化、7年超ブル・スティープ化を見込んだポジションとすべきと考えている。 

 <今後1カ月の長期金利の予想レンジ>

    1.1─0.9%

●上昇してもドル80円程度、大統領選前に問題再燃

 <外為どっとコム総合研究所 社長 植野大作氏>

 目先のデフォルト回避というのは朗報だし、この問題をネタにドルショートを作っていたのは海外勢のほうが多かったので、彼らが参入してきたときに巻き戻され、78円、79円程度までは上昇するかもしれない。

 しかし、この内容だと上昇しても80円が精一杯だと思う。 危機を回避できるのは8─12カ月間とのことなので、大統領選前にもう一度このチキンレースが再開される可能性を意識せざるをえない。格下げリスクも心理的重しとして残る。 

 <今後1カ月のドル/円の予想レンジ>

    75円─81円

●オバマ政権の求心力低下でドル安が続く

 <三井住友銀行 市場営業推進部 チーフストラテジスト 宇野大介氏>

 ドルを基軸とする戦後の国際金融システムの疲弊がドル安の背景とみている。戦後の価値基準であった米国債の格下げやデフォルトリスクが意識されること自体、一つの時代が終わったことを予感させる。デフォルトが回避されようがされまいが、米国債が格下げされようがされまいが、ドル安トレンドは変わらないとみている。

 共和党と民主党の指導部が債務削減について暫定合意に達したが、削減額は予想を下回るもので、共和党のプランを受け入れた形だ。合意という形だけみればドル買いだが、事実に基づいて考えれば、オバマ政権の求心力の低下を表し、ドル売りのインプリケーションがある。

 <今後1カ月のドル/円の予想レンジ>

   70円─75円

●米債はマクロ重視する展開

 <みずほインベスターズ証券 チーフマーケットエコノミスト 落合昂二氏>

 オバマ米大統領が31日、「両党指導部が赤字削減・デフォルト回避で合意」との声明を発表した。期日の8月2日前に合意に達したことは、良いニュースだが、市場参加者は、この問題に関しては冷めた目でみていたと思っている。政治の駆け引きの道具に使われたとの見方もある。

 合意を受けて、マーケットの反応はこのところの逆の動きを一時的にみせるだろうが、米国の債務削減問題が日本経済に直接かかわる問題はほとんどないため、円債の反応は限定的だろう。

 米債の動きは気になるが、債務上限問題ではマーケットはほとんど動いていない。やはりマクロが重要視される展開を見込む。  

 <今後1カ月の長期金利の予想レンジ>

    1.150─1.000%

●ドルは80円程度まで反発か、格下げの可能性は残る

 <クレディ・スイス証券 チーフ通貨ストラテジスト 深谷幸司氏>

 オバマ米大統領が、両党指導部が赤字削減やデフォルト回避で合意したことを明らかにしドル/円は反発している。この問題を嫌気してドル/円が落ち始めたレベルはまだ遠いため80円程度までは戻る可能性があろう。米両院議員がこの案で合意するかという点も残っているが、指導部が合意したということであれば、議員も合意に至るとみていいのではないか。

 デフォルト(債務不履行)が回避される見通しになった一方、米国債格下げの可能性は残っている。暫定合意の赤字削減幅が10年間で1兆ドルとやや少ないとみられるためだ。

 いずれにせよドル/円の下値は堅くなったとみている。 

 <今後1カ月のドル/円のレンジ予想>

     77円─82円

●デフォルト回避はポジティブ、格下げまで至らず

 <BNPパリバ証券 チーフクレジットアナリスト 中空麻奈氏>

 赤字削減は10年間で約1兆ドルと、小幅削減にとどまったものの、デフォルト(債務不履行)を回避することができることは世界のマーケットにとってポジティブな材料だ。ただ、米連邦債務の問題がこれほどまでにクローズアップされたことで、オバマ米大統領が今後いかに納得いくような政策を打ち出せるのかが焦点。根本的な債務問題を先送りさせたことで、注目を集めるたびに同じ問題が蒸し返されるリスクを抱えることになる。 

 格付けに関しては、デフォルト回避から格下げまでに至らず、格下げ方向の見直し継続にとどまるのではないか。米国債が格下げされれば、政府系住宅金融機関(GSE)の連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)FNMと連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)FMCC、米金融機関に格下げ圧力がかかり、混乱が避けられなくなる。 

 日本のクレジット市場への影響については、目先の不安材料が1つ減ったうえ、東京電力9501福島第1原子力発電所事故の巨額賠償負担がのしかかる資金繰りを支援する枠組みとなる「原子力損害賠償支援機構法案」が修正のうえ、今週にも成立する見通しのため、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)にタイト化圧力がかかりやすい。もっとも、欧州債務不安を抱えていることを踏まえると、ワイド化の余地は残るとみている。 

 <今後1カ月のCDSiTraxxJapanシリーズ15の予想レンジ>  

  100─140bp

●長期金利1%割れが視野

 <JPモルガン証券 チーフ債券ストラテジスト 山脇貴史氏>

 米連邦債務の上限引き上げ問題の解決に加えて、日本の第3次補正編成をめぐる不透明感は債券相場の弱材料だが、1)長期化する欧州問題、2)鈍化が鮮明となった米国経済――などが強材料となりそうだ。

 7月21日に開かれた欧州首脳会議では、ギリシャへの追加支援策と同時にEFSFなどの機能拡充などが発表され、いったんは安ど感によってイタリアとスペインの対独スプレッドは急速に縮小した。しかし、そうした動きは一時的にとどまり、再びイタリアの10年債利回りは5.85%まで上昇している。ソブリン市場は引き続き厳しい。一方、米国GDPは金融政策・財政政策を総動員しても厳しい数字が続いている。長期金利の指標10年債利回りは節目の1%割れが視野に入ってきたのではないか。  

 <今後1カ月の長期金利の予想レンジ>

    1.120─0.950%

●格下げのリスクは依然高い

 <クレディ・スイスの金利ストラテジスト、IRA JERSEY氏> 

 ベイナー案と似ていないとは言えず、下院通過の可能性がみえる内容だ。歳出削減は少し光が当たっている程度で、格下げのリスクは依然やや高い。これが今後の市場の動きを左右する可能性がある。われわれは、S&Pによる格下げ回避には3兆ドルの歳出削減が必要と考えており、依然として格下げの可能性は高い。ただ、財政面のショックは回避できるだろう。

●市場は好感、格付け機関の反応は不明

 <ブルティック・キャピタル・マーケッツのマクロ経済ストラテジスト、キャスリン・ローニー・ヴェラ氏> 

 合意案は明らかに市場にとってはプラスのニュースで、株価先物は既に上昇している。ただ、この合意案は上下両院での可決が必要という点に留意すべきだ。両院で可決されると予想しているが、民主・共和党内には今回の合意案を全面的に支持せず、より理想的な内容を主張する向きもいる。

 合意内容をみると、かなりの規模の歳出削減だが、その多くは将来の歳出削減だ。ただ主要部分は歳出削減といえる。仮に米国の状況が今よりも健全と受け止められればドルは上昇するだろう。 

 次の問題は格付けだ。格付け機関は4兆ドルの削減を求めていたが、この案では削減額は約3兆ドルにとどまっている。格付け各社が今後の状況改善や歳入増加を期待するのか、もしくは米国を格下げするかは不明。

 仮に米国が格下げされれば、株価はすぐに3─4%下落するだろう。米国債は、結局、相対的に安全な資産という観点からさほど下げないだろう。格下げは株価にとりマイナスだが、米国債が大きく売られることはない。

●米景気に不透明感、円高残るか見極め <UBS証券 シニア・エコノミスト 会田卓司氏>

 オバマ米大統領は、民主・共和両党指導部が赤字削減とデフォルト(債務不履行)回避で合意したと発表し、為替はドル高/円安方向に若干戻り、株価も上昇している。ただし、この流れがどの程度続くか、様子見の状況でもある。

 債務問題が改善しても、今後も円高が残るのかどうかが留意点だ。先週末に発表された米国内総生産(GDP)が弱かったことで、米国の成長が弱いのではないかという景気自体への不安感も出ている。現状では、もう少し円安方向に振れてもよいと思うが、米国で弱い経済指標が続き、円高が残る場合は、財務省・日銀による為替介入の可能性が高まるだろう。

●厳しい米実体経済、格下げ懸念払しょくされず

 <バークレイズ・キャピタル証券・チーフ公的セクター・クレジット・アナリスト 江夏あかね氏>

 民主・共和両党指導部の米債務協議の暫定合意を受け、米国ソブリンのデフォルト(債務不履行)回避に向けて一歩前進した。短期的に金融市場がいったん落ち着く可能性が出てきた。しかし、米実体経済の厳しさを踏まえると、根本的な解決には程遠く、格下げ懸念が払しょくされたわけではない。米国が格下げされた場合には、ソブリンシーリングの観点から他の格付けにも下方圧力がかかりやすい。

 全体のソブリンCDS市場への影響は限定的だろう。CDS取引通貨は多くのソブリンがドル建てであるのに対して、米国ソブリンはユーロ建て。また、主要取引者の1つである米国金融機関は相関の観点から自国ソブリンのCDSを取引していないためだ。

 もっとも、米国ソブリンが格下げされた場合には、地方債や政府系住宅金融機関(GSE)にも影響を及ぼしかねず、モメンタムの悪化は避けられないだろう。投資家層が異なる日本の公的セクターに対して直接的な影響はないにしても、同じ状況が一定程度継続するのであれば、間接的な影響を受ける可能性も否定できない。

 <今後1カ月の日本ソブリンCDSの予想レンジ> 

 80bp後半─90bp台で不安定に推移。

●一時的措置、上限引き上げは格付け機関の動きと無関係

 <BNYメロン(ニューヨーク)のシニア為替ストラテジスト、マイケル・ウルフォーク氏>

 合意は一時的な措置とみられ、格付け機関が求めていた長期的な解決策が打ち出されたわけではない。

 債務上限が引き上げられたことは、格付け機関の動きとは関係がない。格付け機関が格下げに動けば、米ドルにとって悪材料となるだろう。ユーロ/ドルは1.50ドルまで上昇する可能性がある。

 来週月曜朝の米国株式市場は債務協議の進展を好感するだろうが、ドルは一部の売り圧力にさらされる見通しだ。リーマンショックのころから、米株式市場とドル相場には逆相関の関係がみられる。

 来週以降、(合意案などについては)さらに詳細が分かるだろう。当面はテクニカル・デフォルトという外部リスクは問題ではなくなり、市場に一定の安ど感を与えるとみられる。

●米格付けのネガティブの見通し変えるには不十分

 <TDセキュリティーズのアジア太平洋リサーチ部門代表、アネット・ビーチャー氏> 

 政府にはテクニカル的なデフォルト(債務不履行)を回避することができたという自信があるようだ。しかし、これがネガティブの見通しを変更させるのに十分な内容かどうかは疑問だ。

 最終的な格下げを避けるため格付け各社が今回の措置を受け入れるという確証はない。

 現在市場は明らかにリスクオンだが、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)がネガティブの見通しを再度示せば、また不安定な状況に戻るだろう。

 デフォルト回避が必要だが、そのためには今以上の規模の歳出削減を打ち出さなければならない。

●円安に弾みなら日経平均は一段高

 <大和住銀投信投資顧問 投資戦略部長 門司総一郎氏>

 日本の景気や業績回復が元々あるなかで、これまで重しになっていた米国景気は改善が見込まれるほか、米国の財政問題では今月デフォルト(債務不履行)のリスクが回避された。

 きょうは株価が上がっているが、もう少し円が売られても良い気がする。マーケットでは、米国がデフォルトを回避しても、格付け会社が米格付けを見直す可能性などが懸念されている。

 需給面を含め、米債務上限問題の合意で米長期金利は上昇するとみており、円安という形につながるとみている。8月中に1ドル80円よりも円安が進む場合は、株式市場にとってエクストラなプラス要因となるだろう。

 <今後1カ月の日経平均株価の予想レンジ>

 9800円─1万0500円

●歳出削減による米景気への悪影響に留意

<大和証券投資信託委託 シニア・ストラテジスト 長野吉納氏>

 米債務上限引き上げに関し、合意期限に最終的に間に合うとみられていただけに、予想どおりという面がある。足もとでは歓迎しつつも、為替市場ではドルの戻りも限定的となっている。今回の合意を受けて、数日間はとりあえず懸念後退というムードになる可能性があるが、問題は米国の景気だ。

 米国経済が不透明な中で、景気は持ち直すのか、減速が続くのかどうか、米ISMなど米経済指標を含めみていく必要がある。今後10年間の歳出削減は、景気が元々強ければ財政健全化でより良いわけだが、先週末の米GDPのように、米国経済は決して強いとは言えない状況だ。

 歳出削減額は、一部で議論されていた3兆ドル、4兆ドル規模よりもマイルドになったが、緊縮財政・歳出削減の影響が、米国経済に悪影響を与えるかどうかが懸念されている。

 日経平均株価は足元では1万円を回復しているが、基本的には9000円台での推移をみている。経済指標の動向をみながら、場合によっては、今回の反発が一時的なものとなる可能性がある。

●底流の景気回復懸念が金利下げ

 <東海東京証券 チーフストラテジスト 佐野一彦氏>

 前週の米国債市場は債務上限問題が主な材料だった。その合意に楽観ムードが生じたことに加え、4―6月期実質GDPが弱かったため、米金利は一時、2.77%と年初来最低水準を更新した。これは円債にとって追い風要因だが、債務上限問題の解決は同時に株高/ドル高を招くため、その分は割り引いて考えるべきではないか。

 それでも底流の景気回復懸念が金利を押し下げやすい状況になっている。需給的には、4―6月に国債を買い切れていない投資家も少なくないとみられ、「1.1%台は押し目買いのターゲット」との見方はさらに強まったのではないか。長期金利の指標10年債利回りは、向こう1カ月にかけて0.9%から1.2%で推移すると予想する。

 <今後1カ月の長期金利の予想レンジ>

    1.200─0.900%

●米経済の先行きが今後の焦点

 <野村総研 金融ITイノベーション研究部主席研究員 井上哲也氏>

 ホワイトハウスと民主、共和両党指導部がデフォルト(債務不履行)回避に向け連邦政府の法定債務上限を引き上げるとともに、今後10年で約2兆5000億ドルの財政赤字を削減することになったが合意は市場の予想通りで、不透明要因が1つ消えたことを評価する。今後は米経済のファンダメンタルズに市場の焦点が移る。下期はかなり成長ペースを高めないと当初の見通しに達しないといった見方もあり、今後発表される雇用統計などが注目される。今後の回復ぶりが確認されないとドル/円の上値は重くなるだろう。債務の上限問題を不安視して米株は下げていたので、合意により懸念が払しょくされれば米株は上昇しやすくなるだろう。ただ、それが日本株をサポートするかどうかは読みにくい。

●米追加金融緩和の可能性高まる

 <みずほ証券 エクイティストラテジスト 瀬川 剛氏>

 米債務上限引き上げの暫定合意には至ったものの、来年の大統領選挙に向けて、いずれ「政治ショー」が繰り広げられるだろう。また今回の件で財政が出しにくくなったのも事実だ。第2・四半期国内総生産(GDP)が市場予想を下振れしたように米経済の足取りは覚束ない。量的緩和第2弾(QE2)は終了したばかりだが、米連邦準備理事会(FRB)は追加金融緩和を飲まざるを得ない状況になるだろう。

 日本株の上値が重いのはドル/円の戻りが鈍いのが一因だが、ドルはこうした米追加緩和の可能性を織り込み始めている可能性がある。

 日経平均は米問題の後退などベストシナリオなら上振れする可能性もあるが、不安定な国内政治もあり、基本的に上値は限られるとみている。

 <今後1カ月の日経平均株価の予想レンジ>

 9800円─1万0500円

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