[フランクフルト 4日 ロイター] 欧州中央銀行(ECB)は4日の理事会で、主要政策金利であるリファイナンス金利を1.50%に据え置いた。さらに、ユーロ圏債務危機に対処に向け、国債買い入れ再開を示唆した。
トリシェ総裁は理事会後の会見で「先行き不透明感は高い。しかし、ユーロ圏のみに限られていないことは事実だ」と語った。
国債買い入れの再開をめぐっては、一部ECB当局者の間からECBの主要任務であるインフレ抑制への妨げとなる恐れがあるとして、反対の声が上がっていた。トリシェ総裁は、国債買い入れに関する理事会の決定は全会一致でなかったことを明らかにした。
総裁は「私は(国債買い入れプログラムが)休止していると言ったことはない」とし、「プログラムは継続中で、透明性は完全だ」と語った。
トレーダーによると、トリシェ総裁の会見中、ECBは市場でアイルランド・ポルトガル国債の購入を実施。両国債の利回りは一時、約0.2%ポイント押し下げられた。
欧州金融筋はロイターに対し、ECBによる介入があったことを確認しつつも、アイルランド・ポルトガル以外のソブリン債購入予定はないことを明らかにした。
アナリストの間からは、ECBの国債買い入れによって市場の緊張が長期的に和らぐ公算は小さいとの声が聞かれる。
ABNアムロのニック・コーニス氏は「ECBの資産買い入れプログラムがスペイン・イタリア国債市場の緊張緩和で持続的な効果を示すことは疑問だ」と述べた。
トリシェ総裁はさらに、無制限の流動性オペを必要な限り実施し、少なくとも年末まで継続すると言明。「一部金融市場で新たなひっ迫がみられることを踏まえ、期間約6カ月間の追加のリファイナンスオペを、供給額無制限で実施することを決定した」と述べた。
ユーロ圏の経済成長については、過去数カ月で成長ペースが鈍化していることが示されているものの、今後数カ月は「緩やかな拡大が継続する」との見通しを示した。これを受け、総裁が、世界景気が突如減速するリスクを過小評価している可能性があるとの懸念が強まった。
また、トリシェ総裁が追加利上げの可能性を示唆したことも、すでに軟調となっているユーロ圏経済への一段の圧迫材料になりかねないとの懸念を誘った。
総裁は基調判断として「物価安定への上振れリスクに関するすべての動向を引き続き非常に注意深く監視(monitor very closely)していく」とし、前月理事会後の会見で示した表現を再度用いた。
エコノミストはトリシェ総裁の会見前、総裁が用いた表現は年内の追加利上げを示唆するとの見方を示していた。一方市場では、ユーロ圏債務危機を踏まえ、年内に追加利上げが実施されるとの見方は織り込まれていない。
この日のECB理事会では、下限金利の中銀預金金利は0.75%、上限金利の限界貸出金利は2.25%に、それぞれ据え置かれた。