[ウロツワフ(ポーランド) 16日 ロイター] ガイトナー米財務長官は16日、欧州連合(EU)財務相非公式理事会に出席し、債務危機への対応力を高めるため、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)の融資能力拡大を提案した。ただ、具体的な手段についての合意は得られなかった。
ユーロ圏高官によると、ガイトナー長官はユーロ圏財務相会合に30分間出席。ギリシャ、ポルトガル、イタリアなどの国が直面している問題の解決に向け、現在4400億ユーロのEFSFの融資能力を拡大するよう提案した。
同提案に詳しいアナリストによると、ガイトナー長官の提案は、ユーロ圏債券に関する損失の一部をEFSFが補償するというもの。補償の対象は全体の20%と提案されているもようで、この場合5倍のレバレッジを掛けることができるとしている。
ユーロ圏財務相の間には、米国が政策に口出しすることに対する抵抗も存在する。
オーストリアのフェクター財務相は会合後、記者団に対し「ガイトナー長官はわれわれに対し、システム全体を困難な状況に陥れないために資金を確約するよう、熱心に訴えた」としたうえで、「米国のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に関するデータはユーロ圏と比べてかなり悪いにもかかわらず、米国がわれわれに対し何をするべきか、いつ提案するべきかについて提言するのは、奇妙なことのように思える」と述べた。
ただユーロ圏高官は、ガイトナー長官の提案は、拒否されてはおらず「議論されている」としている。
ガイトナー長官とユーロ圏財務相らとの議論が過熱し、不愉快なものになったとは伝わっていない。ただ、会議後の双方の反応からすると、正面から向かい合って議論が行われた形跡はない。
ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のユンケル議長は記者団に対し、ユーロ圏は内輪の問題を外部の人物と議論する用意はできていないとの立場を示し、「ユーロ圏に加盟していない国とEFSFの拡大に関する議論は行わない」と述べている。
ガイトナー長官はユーロ圏財務相会合に出席した後、銀行幹部らとの会合に出席。その席上、EU加盟国はユーロ圏解体に関して安易に言及するべきではないとし、危機対応に向け欧州中央銀行(ECB)とより緊密に連携する必要があるとの立場を示した。
そのうえで「(欧州にとって)非常に悪影響なのは、議論全般や戦略に関する域内の不協和音ではなく、現在も続いている政府と中央銀行の対立だ。双方は危機脱却に向け、協力して必要な措置を講じる必要がある」と主張。「政府と中銀は、市場から破滅的なリスクを排除すべき」とし、ユーロ解体をめぐる安易な発言を避けるべきだと述べた。