[ワシントン 20日 ロイター] 国際通貨基金(IMF)は20日発表した世界経済見通しの改定で、米欧をはじめほぼすべての地域の成長率予想を下方修正し、リスクは引き続き下向きとの認識を示した。欧州債務問題や米景気回復の遅れが世界経済の成長を妨げかねないとし、米欧は措置を講じなければ二番底に陥る恐れがあると指摘した。
IMFは2011年の米成長率見通しを1.5%とし、6月に示した見通しの2.5%から下方修正した。12年の見通しは1.8%。前回見通しは2.7%だった。
ユーロ圏の成長率は11年が1.6%、12年が1.1%と予想し、6月見通しの2.0%および1.7%からそれぞれ引き下げた。
日本については、11年の成長率見通しを6月時点のマイナス0.7%からマイナス0.5%に上方修正する一方、12年は2.9%から2.3%に下方修正した。
先進国の成長率は11年が1.6%、12年が1.9%と予想し、6月時点の2.2%および2.6%から大幅に下方修正。
世界経済全体の成長率見通しは11、12年ともに4.0%とし、6月予想の4.3%および4.5%から引き下げた。
IMFは欧州について、高水準の債務や生産減速、市場の混乱によって、欧州の景気回復が危ぶまれており、ユーロ圏の見通し悪化回避に向け、政策担当者の迅速な行動が不可欠との見解を示した。
また、首席エコノミストのオリビエ・ブランシャール氏は欧州が「大きな懸念材料」とし、「政策担当者が市場に一歩後れを取っているとの認識が広範囲で見られる」と指摘。欧州は深刻化しつつあるソブリン債危機に「しっかりと対処」する必要があると強調した。
米国についてIMFは、歳出削減を急げば成長が一段と減速する恐れがあるとし、米連邦準備理事会(FRB)は追加金融緩和の用意を整えるべきとの見方を示した。
日本経済に関しては「3月の東日本大震災と津波による供給ひっ迫が緩和され、信頼感が戻っている。活動は上向き始めている」と指摘した。
IMFは新興国の経済見通しについて、11年の成長率が6.4%、12年も6.1%と比較的力強い伸びを維持する可能性が高いものの、不透明感が増しているとの見方を示した。その上で、景気過熱の兆候は引き続き注視すべきとした。
世界経済の成長減速を背景に、中国や他のアジアの新興国の成長率予想を下方修正し、中国は11年の成長率が9.5%、12年は9.0%になるとの見通しを示した。6月時点の予想は11年が9.6%、12年が9.5%だった。
IMFは、アジアでは堅調な成長が続くとしながらも「稼動力に対する制約が台頭しつつあることに加え、外需の低下により(成長は)緩やかになっている」と指摘した。