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委縮するマネー、リスク・ポジションの手仕舞いが拡大

 [東京 26日 ロイター] グローバル経済の減速が懸念される中、世界の金融市場でマネーの萎縮が拡大している。欧州ソブリン危機、金融機関の不良債権問題、米国では出口の見えない超金融緩和の継続など、深まる一方の不透明感を嫌気しているためだ。

 9月26日、グローバル経済の減速が懸念される中、世界の金融市場でマネーの萎縮が拡大している。写真は都内の株価ボード(2011年 ロイター/Toru Hanai)

 金融・商品市場では9月期末を目前に、資産売却を伴うリスク・ポジションの解消売りが進み、新興国の株価や通貨を直撃しているほか、クロス円相場が急落し、ドル/円でも下値リスクが広がりつつある。 

<あらゆる資産が圧縮の対象に> 

 「EFSF(欧州金融安定ファシリティー)の強化が市場が望むペースで進んでおらず、今年はカレンダーを早送りして年末の手仕舞いをしているような雰囲気だ」。みずほ証券リサーチ&コンサルティング・投資調査部副部長の小原篤次氏は、機関投資家に広がるポジション圧縮の動きについてこう指摘、「ポジションを保有する身としては、流動性の低いところから(ポジションを)落としたい」と話す。

 圧縮の対象は、金、銀、アジア通貨、資源国通貨など広範囲に及んでおり、「あらゆるリスク資産が現金化(リクイデート)されている」(資産運用会社のポートフォリオマネージャー)状況だ。「欧州銀のバランスシート圧縮や、大手ファンドの閉鎖など、いろいろなレベルで中長期の投資家が動いている」(同)とされ、現在進行するリスク資産安は、短期のファンド勢の日ばかり取引のみが原因ではないとの見方が広がっている。 

 金はアジア時間の取引で3%超下落し、8週間ぶりに1オンス=1600ドルを下回った。また、銀は12%安の1オンス=27.3ドルを付けた。バンコク株式市場のSET指数は6.8%下落、ジャカルタ株式市場が4.17%下落、フィリピン株は4.24%安で終了した。 

 為替市場では、豪ドルが朝方の高値0.9865ドルから一気に0.9622ドル付近まで下落し、過去1年間の上昇分をほとんど吐き出した格好。韓国ウォンが対ドルで2.56%安の1195.8ウォンと、2010年9月以来の安値をつけた。 

 ユーロ/円は東京時間に102円を下回り、10年ぶりの安値更新。ドル/円も76円前半で過去最安値の75.941円に迫った。

<ファンディング・アービトラージの行き詰まり> 

 一部の欧州系金融機関は、「ファンディング・アービトラージ」と呼ばれる裁定取引で大量の株価を保有していたが、その解消売りが進んでいる模様だ。 

 このアービトラージでは、まず株価先物を買い期日まで保有し、短期資金市場でファンディングして現引く。さらに、その現物株を貸し出して収益を確保していた。しかし、ギリシャのソブリン債務問題を起点とするカウンターパーティーリスクの高まりで、短期資金市場でのファンディングが困難となり、ポジションを圧縮せざるを得なくなった。 

 LIBORで調達できなくなった一部の欧州銀は当面のドル資金確保先として為替スワップ取引への依存度を高めているが、ここではユーロをドルに交換する際に支払う上乗せ金利(プレミアム)が高止まりしている。 

 一部欧州銀がユーロ/ドル為替スワップ取引を通じてドル需要をカバーした場合のフォワード・スプレッドはユーロ・ディスカウントの10.775bp(3カ月物・年率)と、3カ月物ユーロLIBORとドルLIBORの金利差(112.603bp)を大幅に下回る。ユーロ・ディスカウントの低下はドルプレミアム上昇の裏返し。ドル資金市場(LIBOR)とスワップ取引の金利差101.83bpは、一部の欧州系金融機関がドル調達する際のプレミアムといえる。 

 3カ月物のプレミアムは12日にリーマン・ショックを受けた2008年12月以降で最大の110bpまで拡大した。9月15日に欧州中央銀行(ECB)が、米連邦準備理事会(FRB)、イングランド銀行(BOE、英中銀)、日銀、スイス国立銀行(SNB)と協調して、年末越えのドル資金供給オペを年内に3回実施すると発表したことを受けて、16日にいったんは縮小したものの、26日には再びプレミアムが急拡大した。市場参加者によると、欧州銀のアービトラージポジションはまだ完全に閉じられていない可能性があるという。 

<超過準備の積み上がり> 

 欧州債務危機をきっかけとするリスク回避やポジションの手仕舞いの動きは、各国中央銀行で超過準備の膨張にも現れている。各市場でリスク・ポジションが閉じられ、現金化された資金は中央銀行の預金準備に積み上げられているからだ。 

 米連邦準備理事会(FRB)のデータによると、金融機関が必要額以上にFRBに預け入れている超過準備は2008年9月のリーマン・ショックから急激に増加し、それまでの10億ドル台から一気に500億ドル台に膨らんだ。その後2009年11月に1兆ドル台にのせてからは今年年初までほぼ1兆ドルを保ったが、7月末には1.62兆ドルと過去最高水準に達した。 

 欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのノワイエ仏中銀総裁は15日、米マネー・マーケット・ファンド(MMF)が欧州から資金を引き揚げていると指摘し、フランスだけでなく欧州の全ての銀行がビジネスモデルを修正する必要があるとの見方を示している。市場では、米MMFが欧州から資金を引揚げ、米国内の金融機関で預金を増やした結果、米銀の超過準備が増えているとの指摘も聞かれた。  

<資産圧縮とファンドの閉鎖> 

 ポジション手仕舞いの動きは、欧州銀による資産売却や、ファンドの閉鎖も一因になっている。

 フランスの銀行大手BNPパリバBNPP.PAは14日、リスク加重ベースで700億ユーロ(957億ドル)の資産売却を実施する計画を明らかにした。負債や資金調達に関する投資家の懸念を和らげることが狙い。 

 フランスの銀行大手ソシエテ・ジェネラルSOGN.PAは12日、2013年までに40億ユーロ相当の事業資産を売却し、新銀行自己資本規制(バーゼルIII)の「狭義の中核的自己資本(コアTier1)比率」を100ベーシスポイント(bp)改善させる計画を明らかにした。 同行は声明で、資金調達と流動性に関する懸念を緩和するための幅広い取り組みの一環として、第3・四半期これまでに既に35億ユーロの資産を売却したことも明らかにした。 

 米ゴールドマン・サックスGS.Nは15日、主力ヘッジファンドの一つであるグローバル・アルファ・ファンドを閉鎖すると明らかにした。今後数週間以内に清算を完了する予定。 グローバル・アルファはコンピューターによる取引指示に基づいて運用するファンドで、多額の損失を被っていた。現在の運用資産は約16億ドル。 関係筋によると、グローバル・アルファは9月初めまでに13%の損失を出し、コンピューター取引を用いたヘッジファンドの中でもパフォーマンスの悪さが際立っていた。  

 グローバル・アルファはゴールドマンが運用するファンドでは最大規模のファンドで、一時は運用資産が120億ドルに達していた。しかし、同ファンドは金融危機が始まった2007年8月にも22.5%の損失を出しており、多額の損失を出したのは過去4年間で2度目。   

(ロイターニュース 森佳子 編集:北松克朗)

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