[東京 5日 ロイター] 外為市場では、ユーロ/円が近々に100円を割り込むとの見方が強いままだ。欧州金融安定ファシリティー(EFSF)債購入を示唆する日本政府高官の発言を、市場はユーロ安へのけん制と受けとめたが、予想される規模などからトレンド転換には力不足との声が多い。
欧州ソブリン問題に突破口がみえず、リスク回避のユーロ売りが続いており、あすの欧州中銀(ECB)理事会で利下げが示唆されれば一気に大台割れの可能性があるとみられている。
<日本のEFSF債購入示唆、100円割れ阻止には力不足か>
ユーロ安/円高の進行で、日本の輸出企業から悲鳴が上がるなか、日本の政府高官は5日、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)が発行する債券について「引き続き購入を検討する方針に変わりはない」と述べた。市場では「ユーロ安/円高の抑制をねらった口先介入」(バークレイズ銀行チーフFXストラテジストの山本雅文氏)と受け止められ、ユーロ/円はいったん下げ渋ったが、再び弱含みの展開に戻った。
日本政府はこれまでも外為特会を通じてEFSF債を3回購入しているが、いずれも外為特会で保有していたユーロを利用して買い入れた。このため為替市場には直接影響しなかった。しかし、一部メディアで伝えられているように新たに政府短期証券(FB)を発行して円資金を調達し、市場でユーロに変えてEFSF債の買い入れ原資とすれば、実質的にはユーロ買い/円売り介入と同じ効果を持つ。
ただ、これまでの3回のEFSF債購入規模は、最大で11億ユーロ。「この程度では、ユーロ安/円高是正の効果は限定的」(大手銀行)との声が多い。
<ECB理事会きっかけに大台割れも>
ギリシャ支援の難航を背景にユーロ売りが進み、ユーロ/円は4日に100.77円まで下落するなど10年ぶりのユーロ安/円高水準で推移している。明日のECB理事会次第ではユーロが100円を割り込むと市場では警戒されている。
政策金利を据え置いたうえでトリシェ総裁が会見で先行きの利下げを示唆するとの見方が多いが、この場合、金利差縮小からユーロ売りになる可能性があるという。
現在の為替を動かすドライバーは金利より市場のリスクセンチメントのため「株式市場が先行きの利下げを好感すればユーロは逆に上がる可能性もある」(クレディ・スイス証券チーフ通貨ストラテジスト、深谷幸司氏)という。ただ、リスクの源泉であるソブリン問題に対する利下げの効果は限定的とみられ、ユーロは買われても一時的で、当面の戻り天井を確認するだけとの予想が多い。
「ユーロ安のトレンドは変わらない。ギリシャ支援や金融セクターへの公的資金注入などが早期に決まらない限り、ユーロはいずれ100円割れだ」(大手銀行)との見方が依然として市場のコンセンサスだ。
<相場波乱ならドル円とユーロ円セットで介入との見方も>
市場には、ドル/円での介入警戒感に比べ、ユーロ/円での介入に対する警戒感は乏しい。日本の介入に対し欧州当局者の抵抗が強くなるとみられているほか、輸出企業の業績に与えるインパクトは「ドル/円のほうが圧倒的に大きい」(大手銀行)ためだ。日本政府はユーロ/円の下落については静観するとの見方が市場では多い。
しかし、ユーロ買い/円売り介入の可能性がないわけではないという。不安定な市場センチメントが続く中、相場が大きく荒れれば、ドル/円とユーロ/円のセットで介入する可能性が高まるとみられている。「ユーロだけでなく、株式市場やドル/円も急落するような市場の大混乱が起きれば、ドル/円をメインにユーロ/円でも介入する可能性がある。ユーロ/円が100円を割り込んだあたりから、介入の可能性が高まっていくだろう」(バークレイズ銀行の山本氏)という。
(ロイターニュース 松平陽子 編集:伊賀大記)