[東京 8日 ロイター] オリンパス7733.Tは8日、不明朗な資金の流れが指摘されていた過去のM&A(買収・合併)に関し、1990年代ごろから有価証券投資などの含み損を先送りし、その穴埋めのために買収資金を利用していたことが判明したと発表した。
これまで同社は過去の買収は適切に処理してきたと主張していたが、高山修一社長は会見で「不適切な処理は事実」と認めた。同社長によると損失先送りの責任者は菊川剛前社長、森久志副社長、山田秀雄常勤監査役で、「飛ばし」かどうかについての判断は第三者委員会の評価に委ねる。
オリンパスは損失計上先送りについては、今月1日に設置した第三者委員会(委員長:甲斐中辰夫弁護士)の調査で判明したと説明している。ロイターでは7日の報道で、英社買収に関し、オリンパスから多額の手数料を受け取った仲介者が90年代に同社の損失先送りスキームに深く関与していたことを明らかにしていた。
オリンパスによると、同社は1990年代ごろから有価証券投資等に関する損失計上を先送りしていた。英医療機器メーカー、ジャイラスの買収に際し、アドバイザーに支払った報酬や優先株の買い戻しの資金、アルティス、NEWS CHEF、ヒューマラボの国内3社の買収資金は、複数のファンドを通すなどの方法により、損失計上先送りによる投資有価証券などの含み損解消などに利用されていたことが判明したという。これまで同社は、過去の買収について「違法または不正な点があったという事実はない」と主張していた。
高山社長によると、損失計上先送りの規模は現段階で集計できておらず、「飛ばし」かどうかについても第三者委員会の評価に委ねる。責任の所在についても菊川、森、山田氏の他には、責任のある人間は十分に認識していないと述べ、第三者委に評価してもらうと述べた。経営陣3人の刑事告発の可能性については「必要なら考える」と語った。オリンパスは会見に先立ち、同社は森副社長が同件に関わっていたことが判明したとし、同日付で副社長執行役員から解職することを決めたほか、同件に関わっていた山田常勤監査役からは辞任の意向が示されたと発表した。
オリンパスの発表を受け、ロンドンに滞在中のマイケル・ウッドフォード元社長がロイターとの電話インタビューに応じ、同社の取締役会は全員辞任すべき、との考えを示した。同氏は「取締役は今や、そのポジションを維持することはできない」と指摘した。また、株主が望んだ場合には、オリンパスに復帰して再び同社を経営するという「希望」を持っているとも述べた。
<上場廃止リスク>
商法や金融商品取引法を専門とする複数の弁護士によると、過去の連結決算で重要な虚偽記載が判明した場合、金融商品取引法で禁じられている有価証券報告書の虚偽記載にあたり、その会社の代表者は10年以下の懲役または1000万円以下の罰金を科せられ、また、有価証券報告書を発行した企業側には7億円以下の罰金が科せられる可能性がある。
一方、自己または第三者の利益目的で、任務に背いて過大な買収代金やアドバイザリー手数料の支払いを、実行、加担、黙認した取締役や監査役らは、会社に損害が生じた場合に、会社法で禁じる特別背任罪に問われる可能性がある。
東京証券取引所[TSE.UL]の上場規定によると、上場会社が有価証券報告書などに虚偽の記載を行い、東証がその影響が重大であると認めた場合は、上場廃止になる。これまでに、西武鉄道(当時)やライブドアなどが、有価証券虚偽記載(粉飾決算)で上場廃止になった。
東証は8日、オリンパスの株式を監理銘柄に指定するかどうかを決めるには追加情報が必要との見解を明らかにした。広報担当者がロイターの取材に答えた。先送りした損失の規模や、投資判断への影響を見極める必要があるという。
高山社長は会見で、上場廃止にならないよう全力で努めると語った。
8日の東京株式市場では、オリンパス株が前日比300円安のストップ安で寄り付き、前場は前日比289円(27.95%)安の745円で引けた。後場に入り、再び売りが膨らみ、午後1時45分現在、前日比300円安の734円でストップ安売り気配で推移している。
オリンパスの発表内容について、市場関係者や専門家からは厳しい反応が出ている。ITCインベストメント・パートナーズ取締役の岡崎良介氏は「ひどい内容で、かなり厳しい処置がくるのではないか。歴代の経営陣に(責任が)遡及して追及されるだろう」と予想。今後の見通しとしては「過去20年の虚偽記載であれば(オリンパスの)上場廃止リスクある」と述べた。
(ロイターニュース 江本 恵美 村井令二 ティム・ケリー:取材協力 程 近文)
*内容を追加して再送します。