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オリンパス待ついばらの道、内視鏡狙う買収やカメラ切り離しも

 [東京 11日 ロイター] 企業買収を隠れ蓑にした損失隠しが発覚したオリンパス7733.T。上場廃止が濃厚となり、民事や刑事面での重い責任も問われかねない情勢だ。収益源である内視鏡ビジネスを狙った同社買収を予想する声がある一方、不振のカメラ事業の先行きも楽観できない。

 11月11日、優良企業から一転、未曽有のスキャンダルにまみれたオリンパスには再生に向けた重い課題が待ち受けている。写真は10日撮影(2011年 ロイター/Toru Hanai)

 優良企業から一転、未曽有のスキャンダルにまみれたオリンパスには再生に向けた重い課題が待ち受けている。

 <ばん石な内視鏡ビジネス>

 オリンパスは医療現場で使われる内視鏡で世界的に高いシェアを誇る。特に消化器や呼吸器の検査で用いる軟性内視鏡は世界シェア7割と圧倒的な市場支配力を堅持している。2011年3月期の営業利益は前期比41%減の353億円。カメラなどの映像部門は150億円の赤字を出しているものの、内視鏡を含む医療部門が693億円を稼ぎ、全体の収益を支えている。

 「オリンパスのない治療は考えられない」――。都内にある総合病院勤務の呼吸器内科医はこう話す。同医師はほぼ毎日オリンパス製を使っており、3カ月前には同社製の気管支鏡カメラを買い替えたばかり。購入時にほぼ同じ価格のペンタックス製と比べたが、「オリンパスの操作性のほうが格段に良かった」という。別の消化器内科医も「性能は明らかにオリンパス。今回の不祥事があっても、今後も基本的にはオリンパスを使う」と言い切る。

 軟性内視鏡市場では、残るシェアの15%ずつを分ける富士フイルム4901.Tとペンタックスが追撃しているが、技術力で群を抜き、顧客に行きわたっているオリンパス製品の牙城切り崩しは難航している。都内某大学病院の消化器内科医は「微妙な操作性を重視する内視鏡検査で、普段使わない会社の製品を使うのは非常に違和感があり、一度使ったメーカーの製品を継続して使いたいと思う医師は多い」と説明する。最善の治療ができる医療機器を求める医師の間では「経営の混乱やブランドイメージなど気にしていられない」との声も多く、今回の不祥事がオリンパス製品への信頼を揺るがす可能性は低い。

 また、内視鏡ビジネスは先進国を中心に安定成長が見込まれる。人体にメスを入れる従来の外科手術に比べ、内視鏡手術は患者の体への負担が少なく、術後の回復も早く、入院期間が短縮できるなどの利点がある。高齢化社会の進展や医療費削減の流れが強まる中、「内視鏡の需要は確実に増える」(前出の医師ら)見通しだ。

 <内視鏡狙いの買収を画策する動き>

 しかし、今回の不祥事を機に、オリンパスの内視鏡ビジネスを狙って同社買収に動く企業が現れるのでは、という思惑も高まっている。セルサイドのアナリストは「投資家からオリンパス買収に関する相当数の問い合わせがある」といい、実際、投資銀行関係者も「話は世界中から来ている」と明かす。「内視鏡からは年間1000億円のキャッシュフローも期待できる。医療機器事業の参入を伺う企業にとってオリンパスは魅力だろう」(準大手証券ストラテジスト)との見方だ。

 オリンパスの株価は連日ストップ安が続いている。マイケル・ウッドフォード元社長解任が発表された直前の10月13日終値(2482円)から11月11日終値(460円)には約8割も下落。今回の騒動が発生する前に6700億円超だった時価総額は1200億円台と5分の1以下にまで落ち込んでおり、「同社の内視鏡事業の価値から見れば割安」との指摘もある。

 だが、会社を丸ごと買収するとなれば、赤字のカメラ事業や前期末時点で6487億円に膨れた連結有利子負債も引き継ぐことになる。株主代表訴訟などの費用もどこまで膨らむか読みにくく、「現時点では買収も積極的に進めづらい」(国内証券アナリスト)。また、安全保障上の理由から、武器や軍事転用の可能性が高い汎用品を手掛ける企業に対しては外資による出資規制がある。オリンパスもこの規制に抵触しかねず、海外企業による買収も難航する可能性がある。

 <リストラ候補はカメラ事業、売却難航も>

 過去には粉飾決算が発覚した山一証券やカネボウ、ライブドアは事業売却や社名消滅など厳しい末路をたどった。オリンパスとしても今回の不祥事に絡む費用をねん出するために、「事業の切り売りなど一定のリストラを迫られる事態も否定できない」(国内証券アナリスト)。そのリストラ候補に挙がっているのがカメラ事業だ。

 だが、「シェアも低く、イメージが悪化したオリンパスブランドのカメラに買い手が見つかるだろうか」(同)と売却の難航を懸念する声もある。オリンパスは人気のデジタル一眼カメラ「PEN」シリーズなどを持つが、10年のオリンパスの世界シェア(米調査会社IDC、出荷ベース)は6%と8位。首位のキヤノン(18.5%)、2位のソニー(17.5%)とは3倍もの開きがある。

 9位のカシオ計算機6952.T(3.9%)などと弱者連合を組むという手もあるが、リコー7752.Tがペンタックスのカメラ事業を買収した際、リコーの株価は下落した。オリンパスとペンタックスを同じ次元で語るのは適切でないとしても、「内視鏡は欲しいが、カメラを欲しがる企業が存在するかどうか微妙だ」(国内証券アナリスト)。中国などの海外企業が名乗りを上げることも考えられるが、「技術流出などの点から積極的には売りにくい」(同)という。

 <経営陣刷新と組織改革>

 今回の不祥事では、オリンパスのブランド力は傷ついたが、幸い、同社の高い技術力が傷ついたわけではない。市場では「オリンパスが解任したマイケル・ウッドフォード元社長や新たな経営陣のもとで同社が再建できる可能性はある」との声が多い。大株主自らが経営陣の刷新を求める動きも出始めている。オリンパス株の約5%を実質保有する米運用会社サウスイースタン・アセットマネジメントは8日、臨時株主総会の開催、取締役と監査役の早期退任を要求した。

 4%以上保有する英投資ファンドのベイリー・ギフォード氏は10日、ウッドフォード元社長を社長に復帰させ、会社の刷新を託すべきとの考えを示した。同ファンド関係者も「今必要なのは不正の一掃であり、この問題の解決にはウッドフォード氏が適任者だ。不正行為に関与したすべての取締役と社員を解雇すべき」と主張している。個人株主も「組織ぐるみの不正ではないだろうか。長年溜め込んだ悪い膿みを出すには組織にも大胆にメスを入れる必要がある。さもなければ、オリンパスは生まれ変われない」と怒りを隠さない。

 20年に及んだオリンパスの損失隠しは、英国人社長の理不尽な解任など経営の迷走につながり、ついには会社の存続が問われる事態にまで発展しつつある。高山修一社長は8日の会見で「株価は下がっているが、今までのように(オリンパス製品が)提供できる価値は下がっていない」と述べた。だが、オリンパスが優良企業としての地位を回復できるかどうかは不透明。再生には多くの時間と曲折が予想され、険しい道のりを歩むことになりそうだ。

(ロイターニュース 白木真紀 編集:北松克朗)

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