[東京 16日 ロイター] 正午のドル/円は、ニューヨーク市場午後5時時点とほぼ変わらずの77円前半。ドルは77円付近で足踏み状態を続けたが、ユーロはフランス国債の格下げの憶測が再浮上したことや、下落過程で損失確定のユーロ売りオーダーを巻き込んだことで、下げ足を速めた。
正午までの取引で、ドルは76.99―77.15円と狭いレンジ内に収まった。ユーロは朝方の高値1.3540ドルから一時1.3437ドル付近まで値を崩した。朝方の取引では、1.35ドル割れの水準でオプション関連の買いがあると見られていたが、ユーロ買いは長続きせず、1.3470―1.3480ドルの水準でストップ(損失確定売りオーダー)を次々と巻き込み下値を伸ばした。ユーロ/円は朝方の高値104.31円付近から一時103.60円まで下落した。
市場では、前週末に顧客向けに配信されたという米系大手銀2行によるユーロ投資戦略レポートが話題となっていた。1行はユーロを買い推奨した一方で、他の1行はユーロ売りを推奨。「いずれにせよ、ユーロ圏のどさくさに紛れて、一儲けしようというスタンスは同じ」(外銀)との声も出ており、普段の年なら年末に向けて、ファンド勢など投機筋の売買が次第に細る時期に入ったものの、今年はファンド勢の成績が振るわず、「年末までに一発逆転のチャンスを狙っているファンドが目立つ」(同)という。
日銀はきょう、金融政策決定会合の結果を発表する。10月27日の前回会合で資産買入等基金の規模を50兆円程度から55兆円程度に引き上げたばかりで、今回は現状の金融政策を据え置く公算が大きい。外為市場でも、現状維持との見方が大勢を占めており、市場では「見送られても、市場の反応は限定的だろう」(外銀)との声が出ていた。
<ユーロ売りの口実>
この日はユーロの全般的な弱さが目立った。「特段にニュースはないが、フランス格下げの噂がまた広がり、ユーロ売りの口実となった。日本勢は全般に動意薄」(運用会社)だという。市場はユーロ売りに傾いており、「材料はなんでもいいからユーロを売りたい」(同)との雰囲気が台頭しているという。
仏国債については、米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズが10日、一部の顧客に対して仏国債の格付けが変更されたとのメッセージを誤って流し、その後、仏国債は最上級の格付けで依然維持されており、引き下げられていないとの異例の声明を発表している。
<カウンターパーティ・リスク>
他方、ウォールストリートジャーナル紙は15日の電子版で、ニューヨーク連銀が21のプライマリーディーラーに対し、MBSの取引に際して担保を積み増すように要請すると報じたことが、市場で話題を呼んだ。同措置はMBSの取引相手との決済リスクを軽減することが目的で、15日に実施されたプライマリーディーラーとの電話会談で連銀が明らかにしたという。
「この記事でリスクオフムードが広がり、クロス円やユーロ、豪ドル等が売られた」(外銀)という。
欧州でカウンターパーティーリスクの指標となる3カ月物欧州銀行間取引金利(Euribor)と3カ月物オーバーナイト・インデックス・スワップ(Eonia)のスプレッドは88.5ベーシスポイントと9月末以来の高水準となっている。同スプレッドは9月26日に90.7bpまで拡大し2009年2月以来、2年7カ月ぶりの高水準となった。
Euribor及びEoniaは欧州銀行協会(EBF)が発表するもので、ユーロ圏のインターバンク金利の指標となっている。
<米財務長官コメント>
ガイトナー米財務長官は15日(日本時間16日早朝)、欧州は金融危機克服に向け徐々に前進しているが、複雑な問題に直面している、との認識を示した。 ウォールストリート・ジャーナル紙が主催したコンファレンスで語った。為替市場の反応は限定的だった。
長官は、ECBが危機解決により効果的な役割を果たす方法は「多数」ある、としたうえで、米国にとって、欧州の危機脱却を支援することが「大きな利益」になる、との見解を示した。また、中国が人民元をより急速に上昇させることが「どの地域の成長にとっても望ましい」とした。
(ロイターニュース 森佳子)