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日欧に波及するサブプライム問題、株式に好機か

 [東京 3日 ロイター] 米国のサブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅ローン)問題の拡大懸念がここにきて一段と強まってきた。米国のみならず欧州や日本でも問題が表面化するとの観測が投資家心理の悪化に拍車をかけている。

 8月3日、日欧に波及するサブプライム問題が株式市場には好機になると指摘する声も。写真は2月に都内で撮影(2007年 ロイター/Toshiyuki Aizawa)

 ただ、見方を変えれば、株式市場が割高感が解消するまで下げれば、サブプライムローンを債権化したクレジット物の金融商品を嫌気して引き揚げられた資金が再び株式に流入する可能性は十分あり、株式市場にとって好機になるとの指摘が一部で聞かれる。

 今週の株式市場は世界的に下げ圧力が強い展開となった。日経平均は1万7000円を割り込む水準まで大きく下げたが、背景としてサブプライムローン問題への懸念を挙げる市場関係者が少なくない。サブプライムローンは主に米国での問題が大きくクローズアップされ、足元急速にデフォルトなどへの警戒感が強まっている。

 この問題は、ハイリスクな住宅ローンなどを債権化したクレジット商品に投資したヘッジファンドや金融機関が、返済遅延などでローンが焦げ付いた場合、商品の価値が下がり、多額の損失を抱えてしまうことで、社債やバンクローンなどの企業向け貸し付け債権、クレジット・デフォルト・スワップなどを裏付けに発行された債券であるコラテライズド・デット・オブリゲーションズ(CDO)投資への懸念も出ている。

 ある国内資産運用会社の資産運用担当者は「サブプライムローン問題は、今後さらに焦げ付きが増加するとみている。資産担保証券(ABS)をバックとした裏づけ資産としたCDOは、裏づけ資産が劣化すれば、返済優先順位の低い低格付商品を中心に評価価格が悪化する。一部の投資家は転売を急いでおり、当該商品の流動性が乏しいことから、格付価格が理論価格をかなり下回っているとの観測も出ている」と話す。

 サブプライムローン問題は米国だけでなく、ヨーロッパや日本にも波及しているとの見方が大勢だ。3日付日経新聞朝刊では、ドイツのIKB産業銀行がサブプライムローンに絡んだ投資で損失を出し、政府が80億ユーロ(約1兆3000億円)の資金支援に乗り出すことになったと報道されており、ヨーロッパでのこの問題の広がりがうかがえる。

 日本でも「ファンド・オブ・ファンズなどの構成金融商品の中に入っている場合が多く、意外に多くの投資家がこれらのハイ・リスクなクレジット商品に資金を投資している可能性が高い」(第一生命経済研究所の主席エコノミスト、嶌峰義清氏)との指摘もある。

 <良好な実体経済>

 CDOなどクレジット物の金融商品にみられるように、足元の金融市場は不安定な状況だ。野村証券金融経済研究所、投資情報部のストラテジスト、海野広氏によると、金融市場の不安定化が実体経済にまで波及するプロセスとして2つのリスク・シナリオが考えられる。ひとつは、金融機関の貸し渋りなどクレジット・クランチが起きること。もうひとつは、債権化された資産価値の下落が個人の運用資産を悪化させて個人消費を圧迫した結果、民間部門から経済が減速することだという。

 ただ、海野氏は、現在の不安定な金融市場が実体経済を悪化させる可能性は低いとみている。「米国経済は依然、ソフトランディングするとの見方が大勢で、金融市場の悪化が実体経済にまで波及することはないだろう」(海野氏)との見方だ。

 第一生命経研の嶌峰氏も「世界経済は、生産が上向くなどファンダメンタルズが良好だ。金融政策は、米国は中立姿勢、日本はまだ引き締めが本格化していない。このような状況下で、クレジット・リスクの増大が現在の潤沢な流動性を過度に収縮させるようなことにはならない」と述べている。

 <サブプライム問題、株式市場に好機か>

 足元の国内株式市場は、サブプライムローン問題の顕在化が重しとなっているとみる市場関係者が少なくない。しかし、野村証券の海野氏は、サブプライムローン問題は逆に株式市場にとって追い風となる可能性が高いと指摘する。「投資家がクレジット物の金融商品から資金を引き揚げて、一時的には低リスクのトレジャリーなどに避難させるだろうが、その先はリスク資産を物色するはず。有望な投資先として株式に行く公算は大きく、このような動きは8月─9月にも起こるのではないかと期待している」(海野氏)という。

 興銀第一ライフ・アセットマネジメントのシニア・ポートフォリオマネジャー、宮田康弘氏は、ヘッジファンドや大手機関投資家の損失問題などが表面化するたびに、市場心理に影響を与え、株式市場の上値を抑える要因になるとしながらも、株式は過去の信用収縮による調整局面と違い、バリュエーションが割安であることや、世界経済の底堅い動きが続くとみられることから、株式に対して強気スタンスだという。「クレジット物から、株式や社債へマネーがシフトすることは十分考えられる」(宮田氏)からだ。また、日本については「第1・四半期の企業決算は、全体として好業績。上期までの業績上方修正のトレンドが維持されるとみる。投資家のポジション調整に伴う下げ局面では、追加投資を検討したい」との考えだ。

(ロイター日本語ニュース 石渡亜紀子)

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