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景気変調懸念が急浮上、東京市場は大きな潮目に

 [東京 11日 ロイター] 週末11日の東京市場は、株安/債券高が大幅に進み、日経平均は1万4000円台を維持できるかが注目される水準まで下落し、長期金利は1.4%前半に低下した。ニューヨーク・タイムズ紙が米メリルリンチMER.Nの損失額が150億ドルに膨らむ見通しと伝え、午後の取引に入って価格変動幅が大きくなった。

 1月11日、株安/債券高が大幅に進む東京市場、相場の基調が変化する大きな潮目を迎えようとしている。都内の株価ボード前で4日撮影(2008年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

 ただ、日本経済への懸念が市場関係者の間で注目度を高める展開になっていることが株安の大きな要因との指摘も多く、東京市場は相場の基調が変化する大きな潮目を迎えようとしている。

 <NYタイムズの米投資銀損失拡大の報道、株安/債券高に拍車>

 11日の日経平均は大幅続落。9日に付けた取引時間中の昨年来安値を下回り、終値でも2005年11月以来の安値を記録した。朝方はバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が10日の講演で成長支援のため「相当の追加的措置」取る用意があると述べたことで、市場では米大幅利下げの可能性が高まったと受け止められ、好感されたが、プラス効果は長続きしなかった。

 メリルリンチの損失拡大を伝えるニュースが昼休みに伝わり、午後の取引開始直後から株価の下げが大きくなり、日経平均は200円を超える下落となった。

 市場では「サブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅ローン)問題による米銀の打撃が拡大し続けており、その不安感から売りが加速した」(国内証券)との声が聞かれた。

 <小売・不動産株に売り、日本経済のぜい弱さを嫌気>

 ただ、そのニュースが東京市場で広がる前から、日本株は独歩安。米株高にもかかわらず日本株が大きく売られたのは、日本経済への不信感が強まったためだ。

 10日にセブン&アイ・ホールディングス3382.TとJ.フロントリテイリング3086.Tが業績予想の下方修正を発表したことで国内消費への不安感が強まったほか、不動産ファンドを手がけるアセット・マネジャーズ2337.OJが業績予想を下方修正したことで不動産関連株も大きく売られている。

 三菱UFJ証券・投資情報部長の藤戸則弘氏は「株価が最高値を更新するインドなど他のアジア新興国は、たとえ米経済が減速しても国内インフラ投資が依然高水準であり内需主導で成長できる。一方、内需が低迷する日本では外需がダウンすると大きなダメージだ」としたうえで、不動産投資信託(REIT)の下落などからみて、日本株からリスク資金が逃避している可能性があると指摘する。東証REIT指数は一時5%超の下落となった。

 市場では、オイルマネーによる鉄鋼株の買いなどが観測されているが、「あくまで打診買いの域を出ない。底値が近いと思っていても目先の相場が下がるとみれば、積極的には買ってこない」(米系証券ストラテジスト)というわけだ。「年金は日経平均でみて500円刻みでターゲットを設定している。1万4500円を割れたときに買いが見られたが、今度買いが入るのは1万4000円を割り込んだときだろう」(複数の証券会社)との指摘もあり、買い手が乏しい状況が続いている。

 <都銀勢が中期ゾーンで金利低下のポジション形成>

 円債市場では、国債先物中心限月3月限が大幅に続伸した。日経平均の大幅続落や日銀の金融政策に対する思惑を手掛かりに、銀行勢の買い戻しや海外勢のロスカットなどが相次いだ。

 米国の流れを受けて現物市場短期債を中心に利回りが低下。5年債利回りは一時前日比5.0bp低い0.865%に低下(約2年ぶり)、2年債利回りも一時同5.5bp低い0.580%に低下(約1年10カ月ぶり)している。

 市場筋によると、円・円スワップ市場でも、都銀勢が横並びでレシーブして、3─4年ゾーンの金利低下が目立った。

ある邦銀関係者は「NYタイムズの記事で株安と同時に国債先物に買いが集まった」と話す。別の邦銀関係者は「米金融機関の損失だけでなく、国内景気の失速懸念が金利低下に結びついている」と指摘する。

 その関係者によると、日銀の武藤敏郎副総裁が10日に札幌で国内景気の減速に言及し、市場の一部では利下げの思惑も浮上した。実際、OIS(オーバーナイト・インデックス・スワップ)は4月以降は売り・買いともに0.4%後半での推移。5月以降は20%程度の利下げ確率を織り込むようになった。「福井俊彦日銀総裁の任期中(3月まで)は利上げは難しいものの、利下げはないだろう。しかし、それ以降は多少なりとも利下げ期待が出てきている。実際、本気で利下げを織り込んでいる向きが増えているとは思えないが、0.4%後半であれば仮に利下げがなくても損失は大きくないということで、レシーブを入れる動きが出ているようだ」(国内金融機関)との声が出ている。

 <新興国経済の拡大が日本株をサポートとの声も>

 ただ、市場では悲観論一色というわけでもない。ユナイテッド投信投資顧問・シニアファンドマネージャーの高塚孝一氏は、株価は底値も近いとの見方を示している。次のヤマ場は欧州の金融機関の決算発表がある2月とした上で、「米国の金融機関はクレジット周りの損失を正直に見積もるようになっており、マーケットにとっては良いサインだと言える。日本株は先行して売られてきただけに日経平均でみれば下がってもあと1000円だろう」と述べる。「貿易でみれば対米国よりも対BRICSの方が上回ってきている。米国リセッションによって日本経済が悪影響を大きく受けるという昔のイメージが強いために日本株はなかなか買われないが、状況は変化し続けているということを忘れてはならない」と悲観論の行き過ぎに警鐘を鳴らしている。

 外為市場では、ドル/円が午後3時前まで109円前半で推移していた。都銀や国内証券系のドル買いが午前の取引で出て、ドルをサポートしていたという。

 バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が講演で、利下げに積極的な姿勢を示す発言をしたが、「市場では、インフレ懸念も同時にあるので、どこまでFRBが利下げを果敢に実行するか、疑心暗鬼の参加者が多い。このため米利下げ加速でドル売りという割り切った取引が出てきていない」(都銀関係者)との声が出ている。

 一方、香港上海銀行・外国為替営業部長の花生浩介氏は、バーナンキFRB議長の発言に関連して「利下げはサブプライム問題解決の必要条件だが、十分条件ではないというこれまでの状況は変わらない。米政府の対応が依然として後手に回っている印象だ。ドルは買われづらく、円が底堅い動きとなるだろう」との見通しを示している。

 (ロイター日本語ニュース 田巻 一彦;編集 山川薫)

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