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米で信用収縮問題が再浮上、日銀総裁の空席リスクも株売り材料に

 [東京 7日 ロイター] 米住宅ローン会社の破たん表面化などをきっかけに信用収縮に対する懸念が高まり、7日の東京市場は大幅な株安が進み、債券は買われやすい地合いとなった。いったん沈静化の兆しを見せ始めていた米金融市場の混乱が拡大する方向に動き始め、マーケットには重苦しいムードが広がり出した。

 3月7日、米信用収縮に対する懸念が高まり東京市場は大幅な株安が進んだ。写真は東京で株価ボードを見る人々。先月撮影(2008年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

 さらに日銀総裁の空席リスクも市場の話題に上り始め、株売りの材料として意識されている。

 7日の株式市場では、米株安を受けて日経平均が大幅反落し、下げ幅は400円を超えた。米住宅ローン会社ソーンバーグ・モーゲージTMA.Nが、債権者からの追加担保差し入れ要求に応じず、デフォルトとなったことで、信用収縮に対する懸念が高まった。プライベートエクイティのカーライル・グループの系列企業のデフォルトに関する報道も加わって、市場参加者の信用収縮への懸念が一気に深まり、グローバルマネーが委縮して、東京市場でも海外勢の売りが目立った。

 市場筋の観測によると、朝方、欧州系から400億円、米系から450億円、国内系から50億円、合わせて900億円規模のバスケット売りが出た。「TOPIX型のバスケット売りで幅広い銘柄が下げた。リスク許容度が低下した海外勢の実弾売りだ。先物は売り一巡後小康状態となったが、2月米雇用統計を控えて買いを見送る投資家が多く、反発力は鈍い」(大手証券エクイティ部)という地合いになった。

 <公的資金注入が米国でも視野との声>

 三菱UFJ証券・投資情報部長の藤戸則弘氏は「バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が議会証言で示唆したような金融機関の破たんが起こり始めていると市場が認識してきたようだ」と話す。「これまではサブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅ローン)問題に端を発した金融の混乱および懸念という段階だったが、金融機関の破たんという次の段階に移行しようとしている。米クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)で主要指数が暴騰しており、これが落ち着くまでは金融不安も沈静化しないだろう」とみている。

 クレジット市場のリスク指標が株価や実体経済より先行して悪化していることが株式市場を不安定にし、バリューやテクニカルなど従来型の投資尺度を効きにくくさせている側面もある。第一生命経済研究所主席エコノミストの嶌峰義清氏は「3月中旬からはゴールドマン・サックスなどを皮切りに米大手金融機関の決算発表が始まる。1─3月期の決算でサブプライムローン絡みの損失拡大の公算が大きいとみており、信用収縮・金融システム関連の悪材料の噴出がピークを迎えつつあるのではないか」と指摘する。

 同時に嶌峰氏は「逆に言えば、米国での公的資金注入が視野に入ってきたとみることができる。5日に出た米下院民主党が住宅市場支援法案を策定しており、質の悪化した住宅ローンを政府が買い取る案を協議しているとの報道は、それが近いことを裏付けている」とし、米政府の本腰を入れた対策が株価反転のきっかけになり得るとみている。

 ただ、公的資金が入る前に米系銀の自己資本が大幅にき損するようなら、貸し出し圧縮を経路として実体経済への下方圧力がさらに増すことになる。ある外資系証券の関係者は「ソーンバーグに追加担保を銀行が要求した背景には、米銀の自己資本自体がかなり低下してきているという問題も隠されているのではないか」と話す。

 日興コーディアル証券・シニアストラテジストの河田剛氏は「大手金融機関はSIVを連結したが、連結していないVIE(変動持分会社)の問題もあり、財務悪化が顕著になると追加的な問題が生じるなど、サブプライム問題に関する火種はまだ多い」と指摘する。

 ただ、リセッション入りは「基本的にぎりぎり回避され、株価は1月の安値を割り込まないというシナリオを維持している」と述べている。

 <金利マーケットでも信用収縮に目、無縁でいられない日本市場> 

 円債市場は続伸した。海外市場で金融機関の経営悪化懸念が強まり、株安/債券高となった流れを継いだ。投機的な踏み上げを巻き込み、国債先物は中心限月ベースで2005年9月22日以来、ほぼ2年半ぶりに139円台に乗せた。

 各年限ごとのスプレッド差を狙った取引を手仕舞いする動きや、3月期末を意識した「益出し売り」も出て、取引一巡後は上げ幅を縮小した。世界的な金融・資本市場で荒い値動きが続く中で、国内外の投資家のリスク許容度が低下しているとの指摘もあった。

 金利のマーケットでも、米国を中心にした信用収縮への懸念が高まっている。みずほ証券・チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏は「米国株が底割れの危機に直面していることは、減税と利下げという正攻法の米経済政策運営が手詰まりに陥ったことを意味している」と指摘する。

 その上で「減税や利下げだけでは信用不安を払しょくするには至らず、信用不安からくる市場のリスク回避志向の強まりは、株などの信用リスクを帯びた資産を売り、中短期の米国債を買うといった質への逃避的なマネーの流れが強まることを通じ、“公的資金催促相場”のような展開となっている。米国を中心とした信用不安拡大から、日本の市場も当然、無縁ではいられない」とみている。

 直近の市場動向について、外資系金融機関の債券ディーラーは「銀行勢がクレジットをロスカットし、収益作りにいくような動きだ。海外ファンド筋はポジションが痛み、理屈の通らない投げが出ている。利回り曲線はツイスト・スティープ化している」と話す。

 <日銀総裁人事の空白、海外勢の一部は株売り材料視>

 こうした中で、政府は新しい日銀総裁、副総裁の候補者案を国会に提出した。総裁には武藤敏郎・日銀副総裁、副総裁には白川方明・京大大学院教授(元日銀理事)、伊藤隆敏・東大大学院教授(経済財政諮問会議議員)が就任するという顔ぶれに対し、ある国内証券の関係者は「米国に追随した利下げを積極的に行うと言う感じではない」と述べ、ユーロ円金先はやや上値が重くなったと指摘した。

 ただ、民主党からは、元財務次官の武藤氏に難色を示す声が多く出ており、先の外資系証券の関係者は「民主党の反対で武藤総裁案が国会で不同意になって、19日の任期切れまでに新総裁が任命されない可能性も出てきた。これを日本株の売り材料として意識させようとしている海外勢もいる」と述べる。

 先の国内証券の関係者は「もし、19日までに新総裁が決まっていないと、日経平均は一時的に相当下がることになりそうだ」とみている。

 (ロイター日本語ニュース 田巻 一彦;編集:吉瀬邦彦 )

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