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日銀は一段の景気減速警戒し様子見継続、資源高による所得悪化で

 [東京 15日 ロイター] 日銀は19、20日に開催する金融政策決定会合で現状の政策金利を維持し、景気の悪化度合いを見極めていく見通し。日銀にとって大きな懸念材料として浮上しているのが、世界的なインフレ懸念のもとで資源高による企業の収益悪化や物価上昇による実質所得の減少など所得面が悪化しつつあることだ。

 5月15日、日銀は19、20日に開催する金融政策決定会合で現状の政策金利を維持し、景気の悪化度合いを見極めていく見通し。写真は昨年2月に日銀本店前で撮影(2008年 ロイター/Issei Kato)

 景気がこうした要因でさらに下ぶれする可能性を念頭に置いており、16日発表の1─3月期国内総生産(GDP)統計で所得面がどの程度悪化しているのか注視している。金融市場では世界景気悪化の峠は越えたとの楽観論も漂い始めたが、日銀は慎重姿勢を維持し、景気と市場の動向に応じて柔軟に対応していく方針。

 <国際商品市況の上昇が最大の景気悪化要因に>

 「世界経済が4%程度の成長に多少減速する程度だと、原油価格はさらに上がる可能性もある」─日銀内では4月の展望リポートを出す以前から、世界景気の下ぶれの度合いと商品市況の上昇のバランスに相当リスクがあるとの見方が強まっていた。世界経済があまり減速せずにインフレが進む場合は、今度はインフレが世界経済を悪化させるという最悪のケースになることもありえるからだ。

 5月に入っても原油価格の上昇は止まらず、新興国では食料不足による暴動も起きている。こうした中で、多くの幹部がここへきて国内景気のさらなる悪化要因としてあげているのが「資源高」。白川方明総裁も12日の都内での講演で、世界的な本格インフレへの「臨界点に近づいている」との認識を示し、国際商品市況が一段と高まれば「インフレ抑制のための金融引き締めなどを通じて世界経済の下ぶれ要因になる」と指摘。さらに「日本にとっても海外への所得流出が増加することから、実体経済面で下押し圧力がかかる可能性がある」と述べるなど、「資源高」が最も濃い霧としてたち込めている状況だ。

 しかも、資源高の震源地は主に新興国であり「一国の金融政策ではどうにもならない要因」(複数の幹部)であるだけに、各国の適切な金融政策に期待するしかない状況。過度な金融引き締めによる景気悪化や、物価高・食料不足による社会不安、実質購買力の低下など、一歩間違えれば世界経済のさらなる減速につながりかねない。

 特に新興国の中でも大きなウエートを占める中国でのインフレ懸念は深刻になりつつある。四川省大地震の影響でインフラ投資のタガが緩むなど一段の資源高要因となりかねない面を懸念する声も浮上している。

 国内でも、3月短観からもうかがえるようにコスト増による企業収益の悪化は鮮明だ。購入頻度の高い食品や身の回り品の値上がりで、家計の実質所得も減少していると見られる。今後は設備投資の減速、個人消費への影響が顕在化する可能性があると日銀では見ている。

 <霧が晴れるまでは様子見>

 白川総裁は12日の講演で、一般論として「石油価格上昇による購買力に影響が及び、経済も悪化するような場合には、金利は据え置くことが適当」だと述べ、物価上昇と景気悪化には金利を動かさずに臨む姿勢を示した。今回のインフレ懸念の背後には供給ショックだけではなく、世界的な需要の増加を伴っているため、その程度を見極めたいと指摘し、問題が複雑であるとの認識を示した。

 白川総裁をよく知る翁邦雄・前日銀金融研究所長は「一次産品の価格上昇を無理に押さえ込むような短期的な引き締め政策はショックや調整が大きくなることから(日銀は)無理な対応はしない」とみている。さらに白川総裁はかつてバブル崩壊後にデフレに陥った日本経済の経験から、10年単位での長期的な物価安定を視野に入れていると指摘。白川総裁の発言もそうした視点で理解するべきだという。

 金融市場の一部ではサブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅ローン)問題に端を発した金融市場の動揺が峠を越えたとの見方もあるが、日銀では「峠はまだこれから」(複数の幹部)とみている。欧米における金融機関の与信タイト化の流れは改善されていない上、米国経済は停滞ないし後退局面にある。さらに資源高という新たな霧が立ち込める中で、景気の先行きは下方リスクが強い状況との認識だ。

 それでも「現在の実質金利は概ね0%近辺にあり、潜在成長率と比較すると極めて低い水準」(白川総裁)にあることを考えれば、種々のリスク要因が遠のけば当然日本経済を押し上げる力が働くことになり、その時は金利引き上げに動く姿勢を崩していない。しかし現在のところ「霧は、そう急には晴れない」というのが大方の幹部の見通しであり、今の段階では米国経済や金融市場動向、そして新興国経済のインフレ懸念がうまくコントロールされていくのか見守る以外にない状況のようだ。

 (ロイター日本語ニュース 記事執筆:中川 泉、取材協力:志田 義寧)

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