[北京 8日 ロイター] 北京五輪が予定通り8日午後8時に、大掛かりな花火の打ち上げと共に開幕した。メーン会場「鳥の巣」スタジアムを埋め尽くした観客は、デジタルイメージと中国の伝統文化を混合させたパフォーマンスと目を見張るような仕掛けに大歓声を上げた。
北京五輪は中国が国の威信をかけて開催する世界最大のスポーツイベント。200を超える国と地域が参加し、約1万500人の選手が参加する過去最大の大会となる。日本オリンピック委員会(JOC)によると、北京五輪に出場する日本代表選手は前回のアテネ五輪の312人を上回り、339人になる見通し。東京五輪を除き最多となる。
旗手を務める女子卓球代表の福原愛を先頭に、紺のブレザーに白のズボン姿の日本選手団は日中両国の小さな国旗を手に23番目に入場した。
<環境や民族問題で揺れる中国、華やかな開会式の周辺には多数の警官>
1896年にギリシアのアテネで第1回大会が行われてから戦争による中断をはさみ北京五輪は29回目の夏季大会。1964年の東京、1988年のソウルに続き、アジアで開かれる3回目の「人類の祭典」だ。これまでも戦争や政治によって影響を受けてきた五輪だが、今回も環境問題や民族問題で揺れる中国で開かれることで、聖火リレーへの妨害などが起きたほか、各国首脳のセレモニー出席も難航した。
日本経済研究センター・アジア研究部主任研究員の室井秀太郎氏は中国にとっての五輪の意味を「対外的に国の自信をアピールすることだ。無事にオリンピックを終えることは日本人が考える以上に中国にとって意味が大きい。四川大地震、バス爆破事件、チベット暴動など中国は多くの問題を抱えている。国家的イベントを無事に終えることは対外的に国家の安定を示すことができる」と話す。
新華社は4日に、中国の新疆自治区で国境警備隊分署が攻撃され、警官16人が死亡し、12人が負傷したと伝えた。
華やかな開幕式の周辺では数多くの警備担当者が短い間隔で立ち目を光らせるなど、オリンピック会場内と外の「気温差」は大きい。大会は24日まで17日間開催される予定だ。
<日本の目標は金2ケタ、メダル総数30以上>
日本はアテネで国・地域ランキング5位の金メダル16個、総数では史上最多のメダル37個を獲得したが、北京では苦戦を予想する声も多い。トップ選手が高年齢化しているほか、その半面で若い力が伸び悩んでいるためだ。開催国中国も総力を挙げて選手を育成しており躍進は必至。上村春樹日本代表総監督が目標に掲げる「金は2ケタ、メダル総数30以上」達成には「ベテランの経験」と「まだ見ぬ力の発現」が欠かせない。
日本選手団の中では競泳エースの北島康介、マラソン女王の野口みずき、女子柔道初の3連覇を目指す谷亮子らに連覇の期待が膨らむほか、体操男子団体や今回が公式種目として最後になる野球、ソフトボールなどにもメダル獲得への期待が大きい。
日本との時差が1時間と短いのは欧米勢に比べ有利。ただ環境面での不安は残る。暑さや大気汚染問題、世界大会とは異なる競技日程など外部環境は必ずしも味方ではない。アテネ大会に続く好成績を残すには、開催国としてメダルの量産を狙う中国などの強敵を破る必要がある。
(ロイター日本語ニュース 伊賀 大記記者、大林 優香記者)