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GDPマイナス成長:識者はこうみる

 [東京 13日 ロイター] 内閣府が発表した2008年4─6月期国民所得統計1次速報によると、実質国内総生産(GDP)は前期比マイナス0.6%、年率換算マイナス2.4%となった。07年4─6月期以来の実質マイナス成長となった。

 8月13日、内閣府が発表した2008年4─6月期国民所得統計1次速報によると、実質GDPは前期比マイナス0.6%、年率換算マイナス2.4%に(2008年 ロイターグラフィックス/Catherine Trevethan)

 ロイター通信の事前調査では、4─6月期の実質GDPの予測中央値は前期比マイナス0.6%、年率マイナス2.3%だった。市場関係者のコメントは以下の通り。

●市場は2四半期連続のマイナスを織り込む

 <三井住友銀行 市場営業推進部チーフストラテジスト 宇野大介氏>

 4─6月期のマイナス成長、マイナス幅もほぼ事前予測通りだったとはいえ、国内ファンダメンタルズの悪化を確認したという意味で株と債券は反応しそうだ。輸出などの経済指標も足元で悪化傾向が鮮明となっており、7─9月期も外需を中心に2四半期連続のマイナス成長となる公算が大きい。

 グローバル・リセッションが現実味を帯びてきた一方、原油などの一次産品価格が下落基調となりスタグフレーションというよりはシンプルな景気減速となってきたという認識を投資家が持てば、債券買い・株式売りが強まる可能性があるとみている。

●予想通り、景気悪化が材料の債券買いは一段落へ

 <トヨタアセットマネジメント・チーフファンドマネージャー 深代潤氏>

 内需のマイナスが大きく、外需はそこそこ持ち堪えてはいるとはいえ今後は落ちてくることが予想されるので、景気鈍化から後退へと流れつつある状況が確認された。

 もっとも、予想以上の落ち込みではなく、円債相場としてはある程度織り込んでいたものの範囲内。もちろん景気の底打ちが見える段階にならないと金利の上昇は難しいが、景気悪化を手がかりにした債券買いはそろそろ一段落しつつあるのではないか。今までは景気と信用不安対物価の上昇というテーマで揺れ動いていたが、信用不安はまだくすぶってはいるとはいえ、全体的なテーマとしてはひと通りこなした。長期金利1.4─2.0%のレンジを確認したところで、市場の焦点は次のテーマである補正予算などに移っていくだろう。

●潜在的には債券買い材料

 <みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト 上野泰也氏>

 実質GDPに関しては予想に沿った数字だったため、市場の反応は限られている。意外感もない。しかし、詳細にみると例えば名目GDPやユニットレーバーコストなどで景気の弱さを示す数字が並んでいる。ユニットレーバーコストはマイナスに逆戻りしている。潜在的には債券の買い材料になり得るのではないか。

●内需・外需総崩れ、景気後退を確認

 <三菱UFJ証券・チーフ債券ストラテジスト 石井純氏>

 4─6月期実質国内総生産(GDP)の数値は市場コンセンサス通りとなった。しかし、内需・外需が総崩れとなり、今年前半の景気後退が確認された。デフレーターや名目GDPが落ち込んだことで、先行きにも影を落とした。

 外需が先行き不透明感を増すとともに、内需もけん引役が見当たらず、在庫や雇用、設備投資の調整圧力が強まる可能性を感じさせる。景気後退が浅く、短くなるとの見方はリスキーといえる。

 10年最長期国債利回り(長期金利)の想定レンジを引き下げる。長期金利の低下余地は今年9月末まで1.40%、今年12月末までを1.35%として従来予想から0.1%下方修正する。

●日本経済の先行き不安、円高につながる余地

 <JPモルガン・チェース銀行 ヘッド・オブ・FXストラテジー 佐々木融氏>

 GDPは予想の範囲内で為替市場での反応は薄い。ただ、日本経済に対する先行き不安から株が下落すると、円が買われやすくなるという構図は変わっていない。円は売り手がいなくなると日本の黒字を背景に、実需面から買われやすい。これまで円の売り手の中心は、リスクテークが出来る、資金的な余裕がある人々であり、株安はそうしたリスクテーク余力の低下を示す。

 きょうは、豪ドル、ニュージーランドドルを中心に対円でのロング・ポジションの投げが出ている。これには個人の証拠金取引のロスカットも含まれる。証拠金取引の保有残高の減少は思ったほど進ちょくしておらず、個人の円売りポジションの強制的縮小は今後とも続くだろう。この面からも円に上昇圧力がかかりやすい。

●個人消費と輸出が落ち込み、7─9月期はゼロ成長を予想

 <カリヨン証券・チーフエコノミスト 加藤進氏>

 好調さを保っていた個人消費と輸出が落ち込んだたことがマイナス成長の背景である。また、注目された設備投資は前期比0.2%減になり、下方修正された1─3月期の同0.1%減に続いて2四半期連続のマイナス。設備投資の緩やかな調整が続いたこともマイナス成長の背景になった。内需項目で経済成長を引っ張るものはなかった。

 日本経済は外需への依存度が高まっていたが、4─6月期は外需が寄与しなかったためGDP成長率もマイナスに転落したことになる。実績はカリヨン予想および市場のコンセンサス予想に近かったが、日本経済が調整局面にあることが明らかになった。実績がカリヨンの予想をやや下回ったのは、住宅投資が予想に反して反落したことが主な背景である。

 また、4─6月期の実質GDP成長率の大きなマイナスは、2007年10─12月期、2008年1─3月期と連続で強めの成長が続いた後の反落といった側面も否定できないが、経済成長の停滞には違いない。当面は、この減速を止める要因は見当たらない。エネルギー価格の反落はインフレの沈静化にはプラスの材料だが、景気を安定させるまでには多少の時間を必要とする。7─9月期も景気が低迷することは避けられず、前期比ゼロ成長を予想する。

 日銀にとっては、4─6月期の実質GDP成長率の大幅な減速は予想を上回ったものと考えられ、景気の先行きに対してさらに警戒感を高めてくると予想される。インフレの高進が景気にダメージを与えているが、当面は景気を優先する姿勢には変化はないだろう。従って、金融政策は当面様子見に徹すると予想される。

●景気後退的内容、政策手詰まりで円安トレンドは息切れか

 <バンク・オブ・アメリカ 日本チーフエコノミスト兼ストラテジスト 藤井知子氏>

 GDPのヘッドライン数字はほぼ予想通りだった。ただし、内容は内需・外需とも景気後退を裏付けるものだ。与謝野経済財政担当相のコメントを見ると、経済対策実施の意向はあるものの、財政再建の目標も堅持する意志もうかがわれ、景気に対して実効性のある対策が出てくるとは思いがたい。

 さらに選挙前ということもあり、規制緩和政策も打ち出しづらいだろう。結論として政策は手詰まりであり、株式市場の低迷は続くだろう。株価低迷で投資家のリスクテイク余力は低下し、結果として円安に傾いてきた為替市場の流れが長続きしない可能性が高まってきた。

 他方、このところのドルの対ユーロでの調整は行き過ぎ感があり、米金融システム懸念が払しょくされていないことからも、ドルは過大評価されていると言えよう。

●景気後退印象づける、信用力低下のSB中心に売り

 <新生証券 債券調査部 シニアアナリスト 松本康宏氏>

 2008年4─6月期国内総生産(GDP)のマイナス成長は市場予測通りで、景気の後退局面入りを印象づける結果となった。食品、ガソリンなどの上昇が実質所得を目減りさせ消費支出をマイナスに転じさせたほか、日本の景気拡大を支えてきた外需の寄与度が落ち込んだことに注目している。

 一般債市場への影響については、景気の後退、企業業績の悪化から信用力が低くなった国内普通社債(SB)を中心に売りが先行する可能性が強まった。金利水準が高くなることが期待できないため、スプレッドの厚みが要求される展開となろう。

●日本の金融政策余地限られるが、円全面高にはならない

 <ドイツ証券 グローバル・マーケッツ統括本部 シニア為替ストラテジスト 深谷幸司氏>

 GDPの内容は景気後退色が強い。日本は利上げも利下げも困難という状況にある。一方、利下げ余地のある豪州やニュージーランドに対するクロス円相場は、ポジションのまき戻しの継続により、円高傾向が続くだろう。他方、グローバルな景気不透明感のなかで、ドルの買い戻しが進んでおり、ドル/円は底堅いトレンドを維持すると見ており、円の全面高にならないだろう。

 このところの商品相場の下落は、グローバルな景気減速を背景とした需要の低下という側面から捉えることができ、この面からは世界の株価は下落余地があると言えよう。株価下落で投資家のリスクテイク余力が低下し、クロス円の下げに結びつきやすい。

 短期的な予想レンジは、ドル/円で108.50―110.50円、ユーロ/ドルで1.4600―1.5000ドルと見ている。 ユーロ/円は160円を試さざるを得ないだろう。

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