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世界同時に株安・債券高、起点にヘッジファンドの資金繰り難

 [東京 5日 ロイター] 5日の東京市場は、欧米市場での大幅株下落/債券上昇を受け、日経平均が一時、前日比400円近い下げとなる一方で国債先物、現物が急騰。商品投資顧問業者をはじめ海外勢が先物主導で株売り/債券買いの注文を大規模に出し、世界同時に大幅な株安/債券高となった。

 9月5日、世界同時に株安・債券高となっており、起点にはヘッジファンドの資金繰り難があるとの声も。写真はニューヨーク証券取引所のトレーダー。7月撮影(2008年 ロイター/Chip East)

 背景には世界的な景気後退への懸念と、解約要求に直面するヘッジファンドの資金繰りを反映したポジション手仕舞いがあるとみられ、この先の世界的な市場の混乱を懸念する見方が浮上してきた。

 <東京株式も全面安>

 5日の株式市場では、米国株の急落を受けて幅広い銘柄で売りが優勢となった。海外機関投資家やヘッジファンドなどから大口のポジション調整売りが出たとみられるほか、寄り後も9月中間期末を控えて損失を限定したい国内機関投資家から、先物にヘッジ売りが断続的に出て上値を抑えた。

 信用取引の追い証(追加担保の差し入れ義務)発生に伴う個人投資家の投げ売りもみられ、株式市場はほぼ全面安の展開。国内外の景気、米金融システム、国際情勢など懸念材料は目白押しだが、あらためて大きな悪材料が出たわけではない。売りが売りを呼び込むという需給主導の下げ相場といえる。

 ソシエテジェネラルアセットマネジメント・チーフエコノミストの吉野晶雄氏は「3月の下落時と比べてバリュー面の調整は不十分だ。もう一段の下落もあり得る。ただ、日本のマネタリーコンディションは世界的にみて優位性がある。過度に悲観はしていない」と述べる。

 大和総研・シニアストラテジストの成瀬順也氏は、米株急落の背景に、減税の効果のはく落と消費減退を起点とした景気の大幅な後退懸念があるとみている。「雇用統計は7カ月連続で小幅なマイナスで収まってきたが、きょう5日に発表の8月分では2ケタ減となるおそれがあるほか、4日に発表された米小売各社の8月既存店売上高も悪く、9月以降の景気の本格的な後退が視野に入ってきた」と指摘する。

 <ヘッジファンドが換金売り>

 こうした株売りの背景には、世界景気への懸念だけでなく、ヘッジファンドを中心にした投機筋の資金繰りの問題があるとの指摘がマーケットで出ている。みずほ投信投資顧問・執行役員の岡本佳久氏は「足元の株価下落の本質は、ファンダメンタルズというより需給が大きい。パフォーマンスの悪化したヘッジファンドの閉鎖が表面化してきており、解約売りも含めた換金売りが圧迫している」と指摘。

 その上で「これをにらんだ短期筋が売り乗せし、株価の下げで個人投資家などが売らされている。売り方は年初来安値を意識して売ってくる。安値を付けたとき、買い場という判断ができるかどうかだ。ただ、底打ちはそう遠くないとみている。ここ1─2週間が一番苦しい時期だろう」とみている。

 ある外資系証券の関係者も「ヘッジファンドの手仕舞いがコモディティ価格の全面的な下落に結び付いた。それがコモディティに大きく依存した別のヘッジファンドの経営を圧迫し、信用収縮の連鎖がグローバルに起きている」と話す。

 <CTAが株先売り/債先買い>

 円債市場では、株式市場と反比例するかたちでマネーが流入。国債先物9月限は一時、139円09銭まで買い進まれ、10年債長期国債利回りは1.435%までいったん低下した。

 複数の市場筋によると、前日に国債先物を大規模に売っていたCTAが一転してまとまった買い注文を出し、つれて国債現物も上昇した。CTAはこの日、株先売り/債先買いの裁定取引を大規模に展開していたという。

 市場では「海外ヘッジファンドなどが主体となった先物の売買に振らされ、需給だけで動いている状況。ファンダメンタルズの材料が出てきて反応するとか米債が買われたので円債も素直に買われるといった側面が薄れ、非常にひねくれた相場展開になっている。ファンド勢が一気にポジション解消に動く前日のような動きが、再び起こらないとも限らない」(別の外資系証券関係者)との声が漏れた。

 ある邦銀関係者は「現物7年の利回りと5年の利回りがほぼ、フラットになるまで7年が買われた。これは国債先物の買い進まれ方が、いかに激しかったかを示す。この先、国債先物には調整売りが出てくる可能性がある」と予測する。

 三井住友アセットマネジメント・保険資産運用第一グループヘッドの堀川真一氏は「景気の悪化を見込んで金利が低下してきたが、このテーマがさらに続いていくかという点については疑問を感じている。景気回復の兆しはまだ見えないが、どこかのタイミングで補正予算などに絡み債券の需給に焦点が移るのではないか」との見通しを示した。

 <円売りポジションの巻き戻し始まる>

 外為市場では、このところ下落基調が鮮明だった資源国通貨に加え、欧州経済の後退懸念を背景にユーロの下げも目立ってきた。5日午前までの取引で、ユーロ/円は一時150.60円と2007年8月以来1年1カ月ぶり、豪ドル/円は85.84円と06年7月以来2年2カ月ぶり、英ポンド/円は186.13円と03年12月以来4年9カ月ぶり安値をそれぞれ付けた。

 市場では「世界的な利下げ観測の高まりや株安で投資家がリスク削減の動きを強め、低金利通貨であるドルと円でファンディングされたマネーが巻き戻されている」(バンク・オブ・アメリカの日本チーフエコノミスト兼ストラテジスト、藤井知子氏)とする声が出ている。

 ある国内証券の関係者は「米系を中心にしたヘッジファンドのポジション手仕舞いで、マネーが米国に還流している。ドルが円を除く主要通貨に対して高くなっている背景は、フロー的には米系投資家のリパトリエーション(資金の国内還流)がかなり影響している。実態は信用収縮なので、日本の株式市場からもさらに海外勢の資金が出て行く可能性がある」と指摘。その上で「日経平均のチャートも崩れてしまい、海外勢の中には日経平均で1万円近辺まで売り込むことを考えている向きもいるようだ」と述べている。 

(ロイター日本語ニュース 田巻 一彦;編集 宮崎 大)

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