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リーマンめぐる報道でマーケット乱高下、高まる先行き懸念

 [東京 10日 ロイター] 米金融システム不安がグローバルなマーケットの大きな重しになっていることが、10日の東京市場の値動きで一段と鮮明になった。

 9月10日、東京市場は、リーマンをめぐる報道で相場が乱高下、先行き懸念も高まった。写真は9日、都内で(2008年 ロイター/Yuriko Nakao)

 リーマン・ブラザーズLEH.Nの資本調達をめぐる懸念を背景に米国株が大幅安となったことを受け、朝方は日経平均の下げが一時200円を超えた。だが、韓国産業銀行がリーマンの経営権取得を模索しているとの報道が伝わると急速に買い戻された。

 市場では、米投資銀への政府の関与が金融システムの再活性化に避けられないとの見方が出ているものの、任期切れが近づくブッシュ政権では打開策が出てくる可能性は低いとの見方が多く、金融不安と実体経済の悪化が進む中で、市場には先行きを懸念する声が高まってきている。 

 <米金融機関への公的資金の注入、解決に不可避の声> 

 東京株式市場は、米金融不安や円高などを背景に、銀行、ハイテクなどに売りが先行した。「海外勢の売りが目立ったほか、先物にも断続的に売りが出て下げ幅を拡大させたが、売り一巡後は国内年金とみられる買いが入って下げ渋った」(大手証券)との声が出ていた。

 こうした状況について、第一生命経済研究所・主席エコノミストの嶌峰義清氏は「(米国では)金融システム不安から金融危機に発展する恐れが出てきたとの印象を受ける」と指摘。具体的な現象として「急速にマネーが滞ってきた。資金調達コストの上昇に加え、サブプライムローン問題など、損失発生源の解決が見出せない状況下で、優良資産がどんどん不良資産に変わっていく」と分析した。

 その上で「放置しておくと、与信機能の悪化が一般事業会社にまで広がり、クレジット・クランチに発展するまでに時間はかからない。米当局が打つべき次の一手は、モラル・ハザードを覚悟しても、投資銀行など破たん危機にある民間金融機関に公的資金を注入することではないか」と指摘している。 

 <共和党に根強い公的資金注入への抵抗感> 

 ある外資系証券の関係者は「米住宅金融機関(GSE)に続いて、民間金融機関への公的資金注入が避けられないとの声が、米市場関係者にも多くなってきているが、米政権の与党・共和党内には、公的資金の金融機関への注入に断固反対の勢力が多く、11月の大統領選を前に打開策が出てくる可能性はゼロだろう」との見通しを示す。

 米金融情勢に詳しいある邦銀関係者も「金融面からの経済悪化のリスクが高まっている。このまま事態が悪化していくと、11月から年末にかけてかなり状況が悪化している可能性がある。米国に期待ができない以上、中国の景気対策に期待するしかない」と述べる。

 DIAMアセットマネジメントシニア・ポートフォリオマネジャーの宮田康弘氏は「金融システム不安に対する次の一手は、新興国や欧米など世界協調利下げ」と述べる。世界的にマクロ経済が悪化する半面、原油価格の下落で期待インフレ値が低下している中、利下げは理解が得られやすいとみている。 

 <日本株の割安感を指摘する声> 

 ただ、日経平均がこのまま下げて1万円の大台を割り込むような悲観的状況を想定している参加者は、予想外に少ない。みずほ証券・ストラテジストの北岡智哉氏は「金融不安と実体経済の悪化が絡み合いマーケットは深刻に受け止めているが、ここからは原油安のメリットを織り込み始める」と述べる。「トヨタ自動車7203.Tなど自動車株が底堅い動きを示しているのは象徴的だ。経済や企業業績に与えるメリットは大きく、景気後退は長期化しない可能性が高くなった」と先行きを展望する。

 また、東洋証券・シニアストラテジストの児玉克彦氏は「PER(株価収益率)15倍台や2%の配当利回りから株価の割安感が生じるため、時価水準は売り込みにくいとの印象を与えている」と話している。

 他方、ファンドクリエーション投信投資顧問・シニアファンドマネージャーの山田拓也氏は、最近の相場について「市場参加者の厚みがなく特定筋の売買で相場が振らされている。機関投資家は9月末が接近しているほか、日経平均株価の水準が3月月中平均よりも低く動けない一方、ヘッジファンドの売りで一部の個別株の動きが大きくなっている」と指摘。「海運や商社、鉄鋼などは商品市況の下落という売り要因以上に下げがきつくなっている。株価が急落した昨年7月後半以降にみられた相場の動きに似ており、警戒が必要だ」と厳しくみている。

 <注目が集まる今夜のリーマン対応策>

 こうした中で、10日午後の市場で、韓国産業銀行がリーマンの経営権を6兆ウォンで取得することを模索しているとの聨合通信の報道が伝わり、日経平均は急速に買い戻された。市場では「米金融不安を材料に売られていた面が大きかったので、このニュースを材料に買い戻しがかなり出た」(国内証券の関係者)という。

 外為市場でもこのニュースが伝わった後にドル/円が107円後半まで上昇する場面があった。円債市場は、国債先物の限月交代が絡み、かなり不規則な動きとなったが、聨合ニュースの報道後に国債先物12月限は下げ幅をいったん拡大した。

 午後3時を過ぎて、韓国政府関係者や韓国産業銀行関係者から、リーマンと産業銀の合意は難しい情勢であるとの発言が伝わり、マーケットは10日夜のリーマンの対応策発表を見守るムードになった。

先の外資系証券の関係者は「リーマンの再建策をめぐる思惑が、株価やその他のマーケットの大きな重しになっていたことが、聨合ニュースの件で明らかになった。今夜発表されるリーマンの再建策で、米当局の関与がほとんどないとなった場合、失望感から米株が下げる展開も予想される」と述べる。

 邦銀関係者の1人は「米金融不安と言う爆弾は、いつか爆発するのではないかという不安感が、半年前と比較すると市場に広がっている。グローバルに市場が大崩れするリスクはかなり高まってきている」と警戒感を強めている。 

  (ロイター日本語ニュース 田巻 一彦;編集 石田仁志)

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