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高まる米金融不安、投資家は一段のリスク回避を指向

 [東京 16日 ロイター] 米金融市場を襲ったリーマン・ブラザーズLEH.N破たんの激震は、連休明けとなった16日の東京市場にも波及し、株安/債券高/円高が急速に進んだ。米金融機関の経営をめぐる不透明感はぬぐえず、投資家はリスク回避指向を鮮明にしている。

 9月16日、米金融市場を襲ったリーマン破たんの激震は16日の東京市場にも波及。写真は株価ボードを見る男性(2008年 ロイター/Yuriko Nakao)

 市場には日米協調利下げの思惑も浮上しているが、震源地の米政府が明確なメッセージを発信しなければ、金融市場が落ち着きを取り戻すのは難しいとの見方も出ている。 

 <株価V字回復シナリオが後退、「次のリーマン」を探す動きも>

 株式市場では日経平均が一時、600円を超す下げ幅となり、3月に付けた年初来安値(1万1691円00銭)を更新した。金融不安の増幅から銀行株が売られたほか、円高の進行で輸出関連株も売られ、市場はほぼ全面安の展開となった。「海外勢の売りが目立っているわけではなく、実需の大口売りは予想外に少ないが、買い手不在の状況。米当局が民間金融機関の救済に消極的な姿勢を示したことで、株価V字回復シナリオが後退し、投資家の失望感は強い」(準大手証券エクイティ部)という。

 市場は、米政府が公的関与を見送った真意がつかめず「次のリーマン」を探す動きをみせている。「米金融セクターの混乱が米当局のコントロール可能な範囲にあるかどうか不透明だ。アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)AIG.Nの動向が懸念されるほか、米金融セクターが一巡した後は、ヨーロッパの金融機関への懸念も広がりそうだ」(いちよし証券・投資情報部・チーフストラテジストの高橋正信氏)とみられている。

 クレディ・スイス証券チーフ・ストラテジストの市川眞一氏は「米国金融システムの動揺は資本注入を含む強い公的関与なくして、もはやコントロール不能であることを示しているようだ。ブッシュ政権はレームダックの様相を強めており、大胆な施策は新大統領の決断を待たなければならないだろう。少なくとも11月中旬ごろまで東京株式市場は不安定な状態が続く可能性が強い」と指摘している。

 <リーマンのクレジット取引実態見えず>

 リーマンの破たんに関しては、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)などクレジット取引の実態がみえていない。取引先等の損失規模が確定できないことも不安心理を増幅させている。「リーマン側のディスクローズが先決だが、相当な時間がかかると予想され、それまでは金融市場も不安定な動きにならざるを得ない。信用不安の長期化が景気に与えるマイナスの影響も考える必要がある。米当局から何らかの明確なメッセージが出なければ株価の落ち着きは期待しにくい」(日興コーディアル証券シニアストラテジストの大西史一氏)との声も出ている。

 モルガンスタンレー証券・ストラテジストの神山直樹氏は「経済のファンダメンタルズをみれば、3月よりも現在のほうが改善している。3月当時は対ドルで円が100円を割り込んでいたほか、原油価格も1バレルあたり150ドルを目指すのではないかという予想が広がっていた。現在は景気は悪いが、商品価格や為替は比較的落ち着いている印象だ。日経平均が下げトレンドを明確にして1万1000円を割り込むような展開は予想していない」という。「日米ともに政治にはあまり期待できない状況だが、米連邦準備理事会(FRB)がクレジット市場に介入するといったことをすれば、相場の転換点になる可能性はある」と神山氏はみている。

 <国債先物が9年5カ月ぶりにストップ高>

 株安が進んだ一方、国債先物は大幅に続伸し、中心限月12月限は一時、前営業日比3円高の140円35銭と値幅制限(ストップ高)まで買われた。ストップ高は1999年4月15日以来、9年5カ月ぶり。10年最長期国債利回り(長期金利)はいったん、前営業日比15ベーシスポイント(bp)低い1.375%と4月18日以来の水準に低下した。

 リーマンの破たんで米金融システム不安が拡大し、安全資産とされる国債選好の動きが強まった。国債先物は取引開始直後から商品投資顧問業者(CTA)などの海外勢や国内ディーラーなどの買いを巻き込んで上げ幅を広げた。午前9時21分に値幅が2円を超えた段階で、東証は今年4月以来となるサーキットブレーカーを発動して取引を15分間停止。取引再開後も買い圧力が衰えず、ストップ高を付けた。

 市場では、16日のFOMC(米連邦公開市場委員会)を控えて米利下げ観測が浮上している。「ドル安が加速するリスクを踏まえると、市場では協調的な利下げの思惑が高まりやすい」(新光証券・債券ストラテジスト)との声も出ている。

 カリヨン証券・チーフエコノミストの加藤進氏は「業者やヘッジファンドなどは、スワップをはじめとするデリバティブ部門でリーマンと幅広く取引している。すでにリーマン破産を前提にしたポジションアンワインドの動きが出ているが、他の金融機関にデリバティブ取引に関連した損失が膨れる可能性も否定できない。今週は米大手証券の決算を控えているだけに、フライト・トゥ・クォリティー(質への逃避)が加速しそうだ。16日のFOMCに向けて、利下げ観測が高まる可能性もある。日銀も協調的なスタンスを迫られるだろう」と話している。

 (ロイターニュース 河口 浩一記者;編集 田巻 一彦)

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