for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up

焦点:米金融大再編の波、いずれヘッジファンド業界に

 [ボストン 23日 ロイター] 現段階では銀行や証券より金融危機を上手く克服しているようにみえるヘッジファンド。しかし、新たな規制、投資家の不安が多くのヘッジファンドにとって命取りになる可能性がある。

 9月23日、米金融業界大再編の波がいずれヘッジファンド業界にも及ぶとの見方が出ている。写真はウォール街の標識。19日撮影(2008年 ロイター/Lucas Jackson)

 過去10年で最悪の運用成績、株価下落の犯人と批判されるなど、ヘッジファンド業界には今年、逆風が吹いている。ただ、ロング・ターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)やアマランス・アドバイザーズのような大規模な破たんはまだ起きていない。

 リーマン・ブラザーズLEHMQ.PKの経営破たん、メリルリンチMER.Nの生き残りをかけた身売り、アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)AIG.Nの政府による救済と続いた9月、ヘッジファンド業界では、商品に投資していたオスプレー・マネジメントの「オスプレー・ファンド」が清算に追い込まれた。ヘッジファンド・リサーチ(HFR)によると、ヘッジファンドの平均運用成績は約マイナス5%と低迷している。

 モーガン・クリーク・キャピタル・マネジメントのマーク・ユスコ最高投資責任者(CIO)は「リーマンやAIGと比べてオスプレーの損失はかなり少なく、ヘッジファンド業界は比較的上手くやっているように見える」と指摘した。

 しかし、それが一変する可能性はある。規制が緩く、高パフォーマンスを謳歌(おうか)していたヘッジファンド業界も、長期化する2つの問題に直面している。運用成績を改善するための手段が乏しくなっていること、損失拡大で不安に駆られた投資家の資金引き揚げだ。

 ヘッジファンド投資を手がけるアルファ・キャピタル・マネジメントの創設者ブラッド・アルフォード氏は「ヘッジファンド業界にとって未曾有の大再編の年になる」と予想。同氏は現在、一部のポートフォリオについて、申請期限の9月30日を前に解約・償還の手続きに忙しいという。

 アルフォード氏のような投資家は、いくつかのファンド・オブ・ファンズから数億ドル単位で資金を引き揚げている。

 HFRによると、今年上期に350のヘッジファンドが閉鎖した。投資家は、下期も少なくとも上期と同程度の閉鎖があるとみる。

 法律事務所モーガン・ルイスでヘッジファンドへの助言を担当するジェド・ワイダー氏は「投資家は、ファンドの見込み、ファンドが保有する証券という観点から自分のエクスポージャーに懸念を強めている。流動性や投資資金回収に関する権利の見極めにかなりの時間をかけている」と述べている。

 投資資金の枯渇とともにヘッジファンドが直面している問題は新たな規制、と運用会社や投資家は指摘する。一例は、ヘッジファンドが得意とする戦略である空売りが禁止されたことだ。

 ヘネシー・グループでヘッジファンド投資を担当するチャールズ・グラダンテ氏は「投資銀行のゴールドマン・サックスGS.Nとモルガン・スタンレーMS.Nが銀行持ち株会社になって米連邦準備理事会(FRB)の監督下に入ることにより、2社は新たな自己資本規制が課せられる。これまでほどレバレッジを高めることはできなくなり、ヘッジファンド向け融資も細る」とみている。

 米金融機関が融資先の選別を厳しくすればするほど、中小のヘッジファンドは苦しくなる。「大手には影響しないだろうが、小規模ファンドには打撃となり得る」(グラダンテ氏)という。

 来年初めにファンドの設定を予定するタクティカス・キャピタルのアンドレー・クレブスキー氏は「資金を集めるのが大変」と述べている。

 (Svea Herbst-Bayliss 記者;翻訳 武藤邦子)

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up