for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up

金融不安に加わる世界的な実体経済悪化、日本は正念場へ

 [東京 3日 ロイター] 金融不安に実体経済の悪化が加わる最悪のシナリオを予想する市場関係者が多くなってきた。週末3日の東京市場では、自動車や機械など景気敏感株を中心に売りが先行し、円債市場の参加者の一部からは利下げ観測も出てきた。

 10月3日、金融不安に加わる世界的な実体経済悪化、日本は正念場へ。写真は昨年2月、都内で(2008年 ロイター/Toru Hanai)

 金融危機に直面している米経済の後退観測は日に日に強まり、その波は欧州から新興国に押し寄せ、外需依存度の高い日本経済は、正念場を迎えようとしている。

 <欧州系年金がハイテク、自動車売り>

 株式市場では日経平均が続落し1万1000円台を割り込んでいる。「前日に続いて海外ファンド勢とみられるまとまった売りが出ている。金融安定化法案の米下院での採決や米雇用統計の発表を控えて買いが入りにくい状況だ」(大手証券)という。市場ではヘッジファンドの解約に備えた売りだけでなく、ハイテク、自動車などの主力株には欧州系年金など長期運用資金からの換金売りが出ているとの観測も出ている。

 米金融安定化法案修正案については、引き続き警戒感が強い。法案は上院で1日に可決し、下院で3日に再度採決するが、可決成立のメドが立ったとはいえない状況だ。「最終的に可決成立しても法案の実効性や運用面での懸念もある。株価のV字回復を期待するのは厳しそうだ」(日興コーディアル証券・シニアストラテジストの大西史一氏)との声が少なくない。

 大西氏は株価反転のきっかけとなるのが日米欧の協調利下げとみている。「協調利下げは来年以降とみていたが、年内にも踏み切る可能性が出てきた。これに中国の株価対策や景気対策などが加われば、いったんは市場に安心感が出る」と話している。

 <マーケットのテーマ、世界的景気後退にシフトへ>

 日米ともに金融株が持ち直す一方、自動車などのグローバルな景気敏感株が売られている。市場が警戒する対象は金融問題から景気にシフトしてきていることを示している。大和総研・投資戦略部シニアストラテジストの成瀬順也氏は「3日の9月雇用統計や9月米ISM非製造業景気指数が下振れれば、米連邦準備理事会(FRB)は米連邦公開市場委員会(FOMC)を待たずに緊急利下げをしても正当化しやすい。11月4日の大統領選挙にもまだ間があるので、タイミングとしても今週末から週明けにかけてが好機となる」と指摘している。

 マーケットの視点が世界的な実体経済の悪化に向かいつつあり、ある投信関係者は「欧米の金融セクターの混乱や急速に進行する海外景気の悪化を考えると、外需株は買えない。米金融安定化法案が下院で可決されても、戻ったところは戻り売りだろう。配当利回りが前引けで6%を超える日産自動車7201.Tも、海外依存度の高さから売りが先行している」と話す。

 国内証券の関係者は、米経済がこの先、足元での金融危機のあおりを受け、さらに悪化して景気後退が明確になると指摘。対米輸出に大きく依存している企業は「この先かなりの打撃を受けるのは間違いない」と述べる。さらに「設備投資も減少傾向である上、個人消費もさえない。もともと内需は不振だったので、日本経済は総崩れの様相だ。企業の設備、雇用と家計部門の過剰がないと言っても、この先は厳しい。政府がかなり大胆な政策を打ち出さないと失速する。日本経済は正念場だ」と話している。

 <ECBの利下げシフト、相場の流れを変える>

 一方、欧州ではトリシェ欧州中央銀行(ECB)総裁が2日、理事会後の会見で、今回の理事会では利下げについても討議したと明らかにした。理事会で政策金利を4.25%に据え置いたが、総裁の発言を受け、市場では早ければ11月にも利下げが行われる可能性があるとの見方が広がった。

 また、ユーロなど欧州通貨の売りが、ドルと円以外の主要通貨の売りを誘発。日経平均の1万1000円割れも意識され、3日の市場では、クロス円などが引き続き軟調地合い。ただ、きょう発表の米雇用統計や米金融市場安定化修正法案の審議を控え、午前中から様子見ムードが広がっているという。

 米欧で利下げ観測が出ているためドルや欧州通貨は買いづらく、クロス円では引き続き円が買われやすい。一方で、銀行間取引市場で資金調達に窮した金融機関によるドル買い需要も堅調で、ドルは底堅い。ドル/円に関しては、ユーロ/ドルやクロス円の値動きが波及しているという。

 ユーロ/円は、朝方の取引でトリシェECB総裁の発言を背景に前日の安値を下抜け、一時約2年ぶりの安値144.57円を付けた。その後の反発にも勢いは乏しかった。きょう発表の米雇用統計や米金融市場安定化修正法案の下院審議を控え、動きにくい状況とみられている。東京市場午前は、「薄商いのなか必要な取引だけで、仲値公示以降は様子見ムードが広がっている」(外銀)と指摘される。

 <にわかに高まる米欧と日銀の協調介入観測>

 円債市場でも、トリシェ発言をきっかけに協調利下げ観測が台頭し、現物市場では金融政策の影響を受けやすい中短期ゾーンを中心に堅調。5年利付国債利回りは同6.5ベーシスポイント(bp)低い0.980%と9月16日以来の水準に低下。10年最長期国債利回り(長期金利)は6ベーシスポイント(bp)低い1.450%を付けた。市場関係者によると、海外勢が先物買いに動いたほか、銀行など国内勢も金融政策の影響を受けやすい中短期ゾーンを中心に買いを入れた。

 市場では「前回会合まではインフレの上振れリスクに警戒し、据え置きと利上げが議論されてきたが、明確に緩和の方向に変わった」(野村証券・チーフストラテジストの松沢中氏)と受け止められた。これまでタカ派色が強かったECBの政策姿勢変化で「主要国では利下げ方向への動きが急速に強まりつつある」(外資系証券)という。

 トヨタアセットマネジメント・チーフファンドマネージャーの深代潤氏も「ECBの利下げ時期は声明を見る限り、賃金上昇という懸念材料があることを踏まえると、11月ではなく12月になるのではないか」と述べている。

 こうした中で、東京市場でも日銀が米欧に協調して利下げするのではないかとの声も大きくなっている。ある邦銀関係者は「日銀には利下げ余地がないと言っても、米欧利下げで日銀が下げないと、円高圧力が増してしまう。最近まで利下げの可能性はないと見ていたが、ECBの方針転換は日銀にとっても意味が大きいのではないか」と話している。 

 (ロイター日本語ニュース 田巻 一彦;編集 宮崎 亜巳)

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up