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中国の景気対策に伴う資金需要、短期的に米国債市場に打撃も

 [ニューヨーク 11日 ロイター] 中国政府が今週5860億ドルに上る景気対策を発表したことについて、市場関係者の間では、米国債市場にとって新たな悪材料になりかねないとの懸念が広がっている。

 11月11日、中国の景気対策は、短期的に米国債市場に打撃も。写真は10月、安徽省の建設現場で(2008年 ロイター)

 その理由は、中国が景気対策に必要な資金を確保するため、保有する巨額の米国債を売却するか、あるいは米国債の購入ペースを落とす必要が生じる可能性があるためだ。

 それに加え、米国政府が国債を増発し、来年は発行額が2兆ドル程度に達するとみられていることも、市場の圧迫要因になると懸念されている。

 パトナム・インベストメンツのマネジングディレクター、ビル・コーリ氏は「(中国の景気対策に対して)米国債市場が真っ先に示した反応は、中国がインフラ投資の資金を捻出するために米国債を売却せざるを得なくなるとの見方に基づくショックだったようだ」と指摘する。

 だが今のところは、米国経済の急激な悪化や商品市況の下落を背景としたインフレ圧力の鈍化により、米国債価格は堅調に推移している。

 中国の景気対策が発表された直後の10日は米国債市場が一時的に下落したが、コーリ氏によると、すぐに「リスク回避や景気減速懸念という圧倒的な波」に飲み込まれ、安全な資金の逃避先とされる米国債市場に資金が流入した。

 しかし、このような市場の動きは、世界各国の政府が経済成長促進策のために債券発行を拡大する中で、長期債の供給増加に伴うリスクを覆い隠しがちだ。

 コーリ氏は「長期的に見れば、財政問題や国債の増発が長期債にとって圧迫要因となる」と指摘している。

 タバックのチーフ債券ストラテジスト、トニー・クレセンツィ氏は、リサーチノートの中で、中国は景気対策に必要な資金を手当てするため「保有する米国債あるいはエージェンシー債を売却するか、それらの買い入れペースを落とさざるを得なくなる」との見方を示した。

 米国債市場が下落し、長期金利が上昇すれば、回復の兆しが見られない米国の住宅市場にも打撃となる。米国の住宅市場を安定させるには住宅ローン金利を引き下げる必要があるが、10年債利回りが上昇すれば住宅市場の回復も遠のきかねない。

 アナリストの推測によると、米連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ) と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)が発行した債券を加えれば、中国は総額1兆―1兆5000億ドルに上る米国の債券を保有している。

 ブラックロックのロバート・カピト社長はロイターサミットで「彼らが国債を売る必要が生じるとは思えない。ほかに売却できる資産がある」と述べ、ファニーメイやフレディマックなどのエージェンシー債を売却する可能性があるとの見方を示した。

 ユーロ・パシフィック・キャピタルのチーフ・グローバルストラテジスト、ピーター・シフ氏は、中国がインフラ投資を中心とする景気刺激策を講じる上で必要な資金は、2兆ドル近くに上る外貨準備でまかなわれる可能性が高い。その多くは米国の国債やエージェンシー債で構成される」と指摘、「中国がこのキャッシュに手をつければ、米国が過去最大規模の国債発行に動く中、中国はネットで売り手となるだろう。買い手は連邦準備理事会(FRB)しかいなくなる」と警告している。

 もっとも、長期的にみれば、中国の景気対策に伴う資金需要が米国債利回りを大幅に押し上げる可能性は低いとの見方もある。

 カリフォルニア州立大学の経済学教授、スン・ウォン・ソン氏は、中国は現在年間2500億ドル程度の貿易黒字を計上しており、世界の景気減速が黒字を圧迫したとしてもなお1500億ドル程度の黒字となる見通しで、これは景気対策に充当するのに十分な金額だと指摘している。

 同氏は「過去にも中国が外貨準備を使おうとした話を聞いたことがあるが、その時も影響は一時的なものにすぎなかった」と語っている。

 ただ、それでも短期的には、例えば200億ドル程度の「比較的少額の」米国債の売却でも、利回りにかなりの影響を及ぼす可能性があるという。

 (John Parry記者;翻訳 長谷部正敬)

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