[ロンドン 13日 ロイター] 今年7月に1バレル=147.27ドルの過去最高値を付け、その後は下落傾向の続いている原油相場。アナリストやエコノミストは、目先50ドルを割り込み、40ドルもしくは35ドルまで下落する可能性もあるとしている。
ただ、その後は、遠くない将来に再び上昇に転じるとの声が多い。
指標となる米原油先物は13日、1バレル=55ドルを下回って22カ月ぶりの安値に下落。7月の最高値からは60%を超える下げとなっており、景気後退が深刻化すれば原油需要に大きな影響を与えるという兆候が強まっている。
アナリストの多くは、原油価格が反転するまでにはさらに一段と下落し、心理的な抵抗線である1バレル=50ドルも下回ると予想。バークレイズ・キャピタルのアナリスト、ケビン・ノリッシュ氏は、1バレル=35ドルまで下がる可能性も指摘している。
過去4カ月の原油価格の急落は、市場が複数の要因による影響を同時に受けたことを反映。世界的な景気後退の大きさが明確になるに従い、エコノミストらは原油需要予測の見直しを迫られている。
国際エネルギー機関(IEA)も世界の原油需要見通しを下方修正。2008年の需要の伸びはここ最近で最も低いものになるとし、2009年は前年比で日量35万バレルの需要増にとどまるとしている。
<保守的な見通し>
IEAは世界の原油需要を2008年が日量8620万バレル、2009年が同8650万バレルと予想するが、一部のアナリストは、この数字を保守的過ぎると指摘。先進国での劇的な需要減少は、そのほかの地域での需要の伸びを相殺し、世界全体では需要は純減するとしている。
こういった見方を受け、原油トレーダーの間では、市場は供給過剰になるとの見方が広がっている。
石油輸出国機構(OPEC)は先月、11月1日から日量150万バレルの減産を行うことを決定。多くの関係者は、OPECがさらに減産に動くとみている。
MFグローバルのアナリスト、ロブ・ラフリン氏は、世界の原油の40%前後をまかなうOPECが生産量を絞れば、相場が反転し始める可能性があると指摘。「OPEC加盟国の一部はすでに、現在の価格では収支を合わせるのが難しくなっている。比較的コストが高いイランやベネズエラといった国々は深刻な痛みを感じている」と述べた。
また、MFCグローバル・インベストメント・マネジメントのエネルギー担当アナリスト、デビッド・ダグデイル氏は、原油価格が50ドルを大きく割り込む水準では、北海の海底油田など多くのプロジェクトでコストが重くのしかかってるため、将来の生産量が抑えられる可能性があるとしている。
<過剰反応>
ダグデイル氏は、供給側の動きは市場には時間差で現れると指摘。「例えばOPECの先月の減産決定は、市場に織り込まれるには2─3カ月かかる可能性がある」としている。
今のところ、原油相場のモメンタムは下向きに見える。多くのアナリストは、需要の大幅な減退では説明がつかない水準まで価格が下落する可能性があるとみている。
国際エネルギー機関(IEA)の田中伸男事務局長は12日、ロイターの取材に対し、原油価格はすでに下向きに「行き過ぎ」との見方を示し、「市場は過剰反応している」と述べた。
アナリストらは、原油価格の動きをゴムの上に乗った重りに例える。ほとんどの場合は需給に応じて狭いレンジで上下動しているが、時に大きな衝撃が加わると大きく振れることになる。
ダグデイル氏は「(原油相場は)アップサイドに振れ過ぎていたので、ダウンサイドにも同じように行き過ぎるだろう」と述べた。
一方、ロイターがアナリスト34人を対象に実施した調査では、原油価格が向こう数カ月以内には再び上昇に転じるとの見方が大勢。米国産標準油種WTIについては、2009年が平均81.30ドル、2010年には約90ドルとの予想が示された。
バークレイズ・キャピタルは、2008年第4・四半期中に米原油価格が78ドル程度に戻ると予想、2009年には105ドルを超えるとの見通しを示している。
(ロイター日本語ニュース 原文執筆:Christopher Johnson 翻訳:宮井 伸明)