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存在感増すPTS、流動性高まり取引量が拡大

 水野 文也記者

 1月8日、存在感増すPTS、流動性高まり取引量が拡大。昨年3月、都内の株価ボード(2009年 ロイター/Toru Hanai)

 [東京 8日 ロイター] これまで日本では個人による小規模な夜間取引が中心だったPTS(私設取引システム)が、急速に存在感を増している。取引の流動性を提供する企業が増え、かつ日中の取引が可能になるなど流動性が拡大、法人や海外機関投資家も参加し始めたためだ。

 しかし、欧米並みに取引を活発化させるには、なお課題もある。とりわけ取引所と比較した最良執行に対する投資家意識をどう高めるか、が今後の成長の鍵を握るとの見方が多い。

 現在、国内でPTSサービスを展開しているのは、SBIホールディングス8473.T系のSBIジャパンネクスト証券(PTSのブランド名:ジャパンネクスト)、大和証券グループ本社8601.T傘下の大和証券(ダイワPTS)、野村ホールディングス8604.T系のインスティネット証券(ジャパン・クロッシング)、松井証券8628.T(即時決済PTS)、マネックスグループ8698.T傘下のマネックス証券(マネックス・ナイター)、カブドットコム証券8703.T(Kabu.comPTS)の6社。このうち取引シェアでみると、ジャパンネクスト、ジャパン・クロッシング、Kabu.comPTSが3大勢力となっている。

 日本におけるPTSの歴史はまだ浅く、スタートしたのは金融システム改革で法的に認められた1998年。本格スタートしたと言えるのは、2005年4月にオークション方式が認められ、実質的にPTSと既存取引所とで売買方式に違いがなくなってからだ。そして、PTSが市場の関心を集めたのは、カブドットコム証券が日本で初めてオークション方式によるPTSを開始した06年9月。それまでほとんど存在感が無かったPTSが浮上するきっかけになると期待された。

 ところが、参入業者が増えながらもPTSは鳴かず飛ばずの状態が続く。その理由は流動性の不足。たとえば、1社のみでPTSを運営する場合、その証券会社の顧客だけが注文することになるため、売りは同証券の口座に保管されている株式に限られる。買いたい顧客が多くても、売り注文が出ないと商いが成立しないことから、多くの業者が参加する既存取引所に比べて流動性の面で大きなハンデを背負ってしまう。カブドットコム証券の齋藤正勝社長もPTSをスタートした当初に「売り注文をいかに増やせるかがポイントになる」と流動性の確保を課題に挙げていた。

 しかし、昨年後半あたりから変化の兆しが出始めた。各社のデータを基に算出した既存取引所に対するPTSの売買代金シェアをみると、06年の0.095%、07年の0.231%、08年1─10月の0.317%から、同11月には月間ベースでは最大の0.514%を記録。取引所の立会外取引とのシェアは、昨年11月に9.018%と1割に近づく勢いをみせ、「取引所の補完勢力と言っても良いレベル」(ある証券会社のPTS関係者)に達した。

 背景にあるのは、内外機関投資家のニーズが多い昼間の取引に参入する業者が増えた上に、ジャパンネクスト、カブドットコムの両社のPTSに有力な外資系証券数社が取引に参加するようになり、課題となっていた流動性が確保されるようになったためだ。

 たとえば、ジャパンネクストでは昨年10月28日に昼間のPTS取引をスタートさせた直後から取引が急増。それまで1日あたり平均10億円前後で推移していた売買代金が11月は30億円を突破、ピークとなった11月28日には1日の取引分だけで95億円に達した。

 これについてSBIジャパンネクスト証券の福士光徳社長は「海外機関投資家はもともと注目度が高かったこともあるが、複数の外資系証券の参加で流動性を供給するとともに、質の高いインフラを提供したことで取引量が拡大した。1日の売買代金1000億円を目標としている」と話す。

 一方、カブドットコム証券の石川陽一執行役PTS統括部長も「個人が多かった夜間のみの時と異なり、昼間の取引を開始以降は参加者の9割が法人や外国人であるため、外資系各社や三菱UFJ証券などの参加で流動性を提供したことが大きい」と指摘する。

 こうした中、顧客指値対等方式とVWAP(出来高加重平均価格)で売買価格を決定し、機関投資家向けに特化しているインスティネット証券は「先行きオークション方式を実施する可能性もある」(野村証券PTS関係者)としており、3社が競い合う構図が鮮明になっていきそうだ。

 PTSの取引所としてのシェアは全体で1%に満たない水準であり、ビジネスとして成り立たせるには、さらなる発展が必要とみられる。そのためには日本において最良執行の概念が定着するか否かにかかっている、とPTS関係者は口をそろえる。

 最良執行とは、注文する時点で最も良い条件で取引を約定できる仕組み。たとえば、ある銘柄を買う場合、取引所が1000円、PTSが999円で売り板があった場合、999円で買うことを優先させる。

 現状ではなお、最良執行に対する日本の投資家の意識は低い。欧米と異なり「PTSに注文を流さないと決めている国内機関投資家も多い。中には、運用資金を預託する顧客から『なぜ取引所以外で取引したのか』といった点をうまく説明できないために、PTSを利用しないところもある」(野村証券のPTS関係者)との声もあった。

 「徐々に機関投資家の意識も変わり始めた」(SBIジャパンネクスト証券の福士社長)との指摘もある最良執行だが、PTSの存在がより注目され、利用度が高まっていくには、ブローカーが執行の質を競い合い、それを投資家が選別する目を高めていく環境を整備していく必要がある、との声も出ている。

 (ロイター日本語ニュース 編集 北松 克朗)

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