[東京 2日 ロイター] 民間シンクタンクを対象にしたロイターの聞き取り調査によると、16日に内閣府が発表する10─12月期の実質GDPは前期比マイナス3.1%(年率マイナス11.8%)程度となりそうだ。
外需と設備投資などが押し下げに寄与し、下落幅としては、日本経済が第1次オイルショックの悪影響に苦しんだ1974年1─3月期(前期比マイナス3.4%、年率マイナス13.1%)以来の大きな下落幅となる。前期比マイナスは3四半期連続。1─3月期についても、10─12月期より下落幅は縮小するものの、大幅なマイナスが続く見通しとなった。
<外需寄与度のマイナス幅は、現行統計では最大に>
10─12月期GDPは、下落幅として、1955年以後で2番目の大きなものとなりそうだ。GDP実額では542.6兆円程度と、05年10─12月期(542.3兆円)以来の低水準に逆戻りすることになる。民間エコノミストからは「10─12月期GDPは内外需総崩れの状況が改めて確認されることになろう」(ニッセイ基礎研究所)などの指摘が聞かれた。
今回GDP押し下げに最も寄与するのは外需だ。寄与度はマイナス2.3%ポイント程度となり、前期のマイナス0.2%ポイントから急拡大、1996年1─3月期まで遡及可能な現行統計では最大のマイナス幅となる。
日銀が発表した実質輸出は、10月が前月比マイナス2.8%、11月が同マイナス14.0%、12月が同マイナス9.8%と、つるべ落としの様相となったが、それと整合的だ。「世界経済の失速により、自動車や半導体、建設機械などの品目を中心に、あらゆる地域への輸出が落ち込んでいる」(みずほ総研)ためだ。
設備投資も同マイナス4.9%の大幅減少となる。前期のマイナス2.0%からマイナス幅が拡大、2001年10─12月期(同マイナス6.6%)以来の大幅下落となる。同時期は、ITバブル崩壊と米国同時多発テロの悪影響が強く見られた。
シンクタンクからは「外需の激減により、生産設備の稼働率は急低下、企業の多くは投資計画の見直しや取り止めを余儀なくされた」(BNPパリバ証券)などの声が聞かれた。設備投資と相関がある資本財出荷も10─12月期は前期比マイナス8.9%と大きく下落している。
GDPの中で最大のウエートをもつ消費も同マイナス0.7%と、08年4─6月期(マイナス0.7%)以来、2四半期ぶりにマイナスとなる。同四半期は、1─3月期がうるう年で一日多かったことの反動がでて、大幅マイナスとなったとされる。10─12月期の下落は「雇用情勢の悪化や株価下落で消費マインドが一段と低下」(日本総研)したことなどが影響したようだ。
また、GDPデフレーターは前年比プラス0.2%となり、消費税率引き上げの影響で物価が上昇した1998年1─3月期(プラス1.1%)以来のプラスに転じる見込み。
原材料価格下落などで輸入デフレーターが大幅に下落したとみられるためだが「デフレ脱却を示すものではない」(第一生命経済研)との指摘もあった。同社によると、外需の影響を除いた国内需要デフレーターは10─12月期は前年比プラス0.5%と、前期のプラス1.4%から伸び率が大きく縮小する見込みという。
<1─3月期マイナス続く、下落幅は縮小>
09年1─3月期については前期比年率マイナス5.8%程度と大幅下落が継続、「海外経済の本格的な回復が早くとも2010年中頃であると見込まれること、所得や雇用環境の一段の悪化が内需を押し下げる可能性があり、1─3月期も厳しい状況が続く」(三菱総研)ことになりそうだ。
30日に経済産業省が発表した鉱工業生産見通しによると、1─3月期の生産は前期比マイナス20%程度と「底が見えない状況」(農林中金総研)に陥っている。
しかし「10─12月期よりも外需の下落幅が緩やかになりそう」(三井住友アセットマネジメント)、「今回の景気後退では、在庫があまり積み上がっていない」(バークレイズ・キャピタル証券)などもあり、1─3月期GDPの下落幅が10─12月期よりも縮小する可能性もある。1974年1─3月期は戦後最大の下落幅となったが、翌4─6月期は前期比プラス0.7%(年率プラス2.9%)と下げ止まりをみせた。今回はどういう形になるか注目される。
10─12月期GDPが従来予想(1月ESPフォーキャスト調査の予想は前期比年率マイナス5.1%)よりも、かなり低めになりそうなことから、三菱UFJ証券・景気循環研究所では、08年度見通しをこれまでの前年比マイナス2.0%からマイナス2.5%に、09年度をマイナス0.2%からマイナス0.7%に下方修正した。
また、今後についても「足元の景気対策は短期的な浮揚効果に乏しい。実体経済の回復は2010年1─3月期以降にずれこもう」 (モルガン・スタンレー証券)などの予想も聞かれた。
(ロイター日本語ニュース 児玉成夫記者、寺脇麻理記者、武田晃子記者)
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