[シカゴ 8日 ロイター] 米ダラス地区連銀のフィッシャー総裁は8日、米経済の状態は厳しく、米連邦準備理事会(FRB)には、金融システムの健全化を図り、米経済を持続的な回復軌道に再び乗せるためにあらゆる手段を尽くす義務があると述べた。
同総裁は、日本経済研究センター(JCER)主催のフォーラムでのスピーチの予定原稿の中で「米国の経済活動を支え、雇用を創出し維持してきた人々は、身を守るために身をすくめている。その結果、米経済は停滞した」と述べた。
その上で、企業が経費削減、特に人件費の削減に向けてあらゆる手を尽くすなか、米国の失業率は3月末の8.5%から、今年末には10%まで上昇する可能性があると予測。「現時点でのリスクは、デフレ的な雇用の喪失だ」と述べた。
さらに、米経済の2009年第1・四半期成長率は、昨年第4・四半期のマイナス6.3%成長と同程度のマイナス幅になった見通しだと述べた。いつプラス成長に戻るかについては述べなかった。
また、世界は「過剰生産能力のもとで苦しんでいる」と指摘。このため「価格の安定維持において問題になるのは当然、インフレではない」と述べ、向こう数年間はインフレは問題にはならないとの見方を示した。
フィッシャー総裁は、FRBは「非常に積極的、かつ革新的」に信用市場を回復させ、2007年12月に米国を起源として始まった深刻な景気後退(リセッション)の拡大を食い止めるために努力してきたと語り、FRBには「金融システムを健全化するためにあらゆる手段を尽くす義務がある」と述べた。
証券の買い入れによりFRBのバランスシートが膨れ上がっていることについて、FRBのドル建て債券のポートフォリオの価値が損なわれるとの懸念は、今のところ顕在化していないと述べた。
また「米国債の需要は、その代替となるものよりどれだけ魅力的であるかということで決まる。最も理性的な将来のシナリオに照らし合わせてみると、米国債がより魅力的であると判断されるとみている」との見方を示し、「ユーロをめぐる問題の方が、米国が直面する問題よりも大きい可能性がある」と述べた。
フィッシャー総裁は今年はFRBの連邦公開市場委員会(FOMC)の投票権のあるメンバーではない。