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豚インフル米国拡大なら景気回復に遅れ、豚肉輸入が大幅減も

 [東京 28日 ロイター] 豚インフルエンザ感染の広がりによる日本経済への影響を見極める上で、メキシコに隣接する米国への感染が広がるかどうかが最大の焦点になりそうだ。

 4月28日、豚インフル米国拡大なら景気回復に遅れ、豚肉輸入が大幅減も。写真は10日、東京・銀座で(2009年 ロイター/Yuriko Nakao)

 民間エコノミストは米国への物流や人の出入国の制限、「巣ごもり消費」などの影響が出れば、今年後半と期待されている世界経済の回復は遅れると指摘する。北米とメキシコからの日本への豚肉輸入は全体の7割を占めており、これらの輸入が大きく落ち込めば、日本の食卓への影響は相当大きくなりそうだ。

 <企業活動に影響、影響がメキシコにどとまれば影響小さく>

 世界保健機関(WHO)が豚インフルエンザの警戒水準(フェーズ)を「4」に引き上げたことに伴い、日本企業では今後の対応を検討し始めた。ソニー6758.Tは「27日からメキシコシティへの日本からの出張は緊急・重要案件以外は自粛している。ただ、それは27日まで。警戒水準がフェーズ4に引き上げられたため、今後の対応は検討中」としている。同社のメキシコ生産拠点では、米国や中南米向けに液晶テレビやDVDディスクなどを生産、現地駐在員を含め約7000人をメキシコ国内で雇用しており、今後の対応次第では生産体制にも影響が出る可能性がありそうだ。

 自動車業界や商社なども相次いでメキシコ出張の自粛や禁止を決定。三洋電機6764.Tやブリヂストン5108.Tでは、メキシコに加えて米国への出張見合わせも指示。こうした中、米国務省は27日にメキシコへの渡航自粛を国民に勧告。日本政府も渡航延期の勧告を決めるなど、各国の対応も厳しさを増している。

 こうした動きを受けて、エコノミストからはゴールデンウィークの海外旅行自粛の影響とメキシコとの貿易の減少、生産面への影響などが指摘されている。

 2008年度貿易統計によれば、日本はメキシコとの貿易黒字を維持。貿易収支全体が赤字となった中で、相対的にメキシコ貿易のウエートが高まっている。

 日本からの輸出は約9300億円で全体の1.3%。電機製品が25%のウエートを占める。次いで自動車14%、音響映像機器部品12%、鉄鋼11%と続く。主に部品や素材を輸出して現地加工した上で第3国向けに出荷している。こうした輸出品目では日本国内での生産に多少影響が出る可能性がある。 

 もっともエコノミストの間では豚インフルエンザの感染が主にメキシコ国内にとどまっている場合には、貿易ウエートからみて、日本経済全体への影響は限定的との見方が大勢となっている。

 バークレイズ・キャピタル証券のチーフエコノミスト・森田京平氏は、日本・メキシコ間の人やモノの移動が停止するような極端な場合、国際収支の「貿易収支」「輸送収支」と「旅行収支」の対メキシコ取引が一時的にゼロとなるとすると、3つの収支を通じた影響は約1600億円の外需圧縮になると試算。豚インフルエンザの影響が1四半期で止まるのであれば0.03%のGDP押し下げ効果に止まると指摘している。

 <米国への拡大なら世界経済停滞>

 今後、影響が米国に拡大した場合、世界経済への悪影響は相当に大きくなると見られている。ある総合商社系シンクタンクのエコノミストは「米国で広がりを見せた場合、日本からの人の往来も多いため、影響は大きいとみられる」と懸念する。みずほ証券・シニアエコノミストの飯塚尚己氏は「世界中から米国へ渡航自粛となれば、ただでさえ停滞している米国の経済活動に影響が出かねない。高額消費の落ち込んでいる米個人消費も巣ごもり状態になるだろう」と懸念する。

 野村証券金融経済研究所・チーフエコノミストの木内登英氏は「スペイン風邪では米国GDPへの影響がマイナス11.3%、英国がマイナス16.9%、カナダがマイナス14.7%と極めてじん大であった。アジア・インフルエンザでも、米国への影響がマイナス3.1%、英国がマイナス3.3%、カナダがマイナス3.5%、日本がマイナス2.6%と大きい」ことを紹介。世界的な広がりを見せる(パンデミック)感染病が実体経済に深刻な悪影響を与える可能性があることを物語っていると指摘している。

 <日本の食卓に影響、豚肉不足に>

 日本国内で直接的に影響がもっとも大きいと想定されるのは豚肉の輸入だ。08年の統計では、豚肉輸入の7割を米国・カナダ・メキシコが占める。みずほ証券・飯塚氏は「これら北米自由貿易協定(NAFTA)諸国からの豚肉輸入が自粛、あるいは禁止となれば、豚肉が不足することは間違いない」と指摘する。国内消費量は約160万トン程度と推計されているが、その半分の82万トンが輸入豚肉だ。その7割が輸入できなくなれば食卓や外食産業への影響は大きく、企業活動とともに、食生活への影響も広範囲で出てくる公算が大きい。

 (ロイター日本語ニュース 取材協力 武田晃子記者、寺脇麻理記者;編集 田巻 一彦)

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