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アップルが半導体開発の動き、ベンダーは戦々恐々

 [サンフランシスコ 30日 ロイター] 米アップルAAPL.Oは携帯電話端末「iPhone(アイフォーン)」向けの多機能チップの自社開発を目指し、半導体業界からの人材確保を進めているようだ。

 4月30日、米アップルによる半導体開発の動きは既存サプライヤーにとっては機会損失の脅威となる。写真はロンドンのアップルストアで2006年3月撮影(2009年 ロイター/Dylan Martinez)

 アナリストによると、アイフォーンは現在、韓国のサムスン電子005930.KS、米ブロードコムBRCM.O、米マーベルMRVL.O、英CSRCSR.L、独インフィニオンテクノロジーズIFXGn.DEといった複数の供給先から調達したチップを使用している。しかし、アップルが自社開発に成功すれば、現在のサプライヤーのリストから少なくとも1社の名が消える可能性がある。

 アナリストは、省電力プロセッサメーカーの米PAセミ買収や、米半導体大手アドバンスト・マイクロ・デバイシズ(AMD)AMD.Nからの専門家の引き抜きといったアップルの動きを例に挙げ、同社の半導体戦略は少なくとも1年前から明白だったと指摘する。

 米調査会社ブロードポイント・アムテックのアナリスト、ダグ・フリードマン氏は、アップルの半導体開発戦略が事実としてもその実現にはあと2年ほどかかるとみており、「今後1─2年、あるいはそれ以上の間、サプライチェーンに深刻な影響が出るとは思っていない」と語った。

 アナリストの見解によると、アップルが開発を進めるのは、現在はサムスンから調達している電話機のマルチメディア機能にかかわるアイフォーン用のアプリケーションプロセッサだ。

 米FBRキャピタル・マーケッツのアナリスト、クレイグ・バーガー氏は「アップルの根本的な意図は、自社の将来を他社の手に委ねたくないということ」と分析。その上で「アップルにとっては、低い消費電力で高精細な画像処理を行う能力が最大の課題だ」としている。

 アップルとサムスン電子は、ともにコメントを控えている。

 <現サプライヤーには「機会損失」>

 仮にサムスン電子がアップルのアイフォーン用チップのサプライヤーとしての地位を失った場合、アナリスト推計で数億ドル規模の収入を逃すこととなる。サムスンにとってこの金銭的損失自体は「巨額」とまでは言えないものの、今後大きな成長が期待される携帯電話プラットフォームから同社が除外されるという意味合いを持つ。

 一方、アップルが自社開発するアプリケーションプロセッサが、マーベル、ブロードコム、インフィニオンといった接続やタッチスクリーンのインターフェース関連のチップ業者に与えるインパクトは、まだ判然としない。

 米証券会社カウフマン・ブラザーズのアナリスト、ショー・ウー氏は「直接の影響はないかもしれない。しかしこれらWiFi向けおよびブルートゥース向けのチップを手掛ける企業は、将来は今以上にそのビジネスが拡大することを期待している。その分が機会損失となる」と指摘。

 ウー氏もまた、アップルが約1年前からアイフォーン用アプリケーションプロセッサの開発を進めているとみる1人だ。フリードマン氏同様、自社開発チップの完成にはあと少なくとも1年はかかると予想しており、今夏リリースが予想されるアイフォーンの新機種に搭載されることはないとみている。

 観測筋は、アップルのような自社の知的財産を厳格に管理する企業が、最も人気が高い商品の1つの重要部品を自らの管理下に置きたいと考えるのは当然という見方が大勢だ。2007年の発売以来2100万台以上を出荷したアイフォーンが同社の大ヒット商品であることに疑いはない。

 <新領域へ>

 アップルにとって今回の動きは、自社の定評ある高度なエンジニアリングを新領域へと拡大させるチャンスとなるだろう。同社はパソコンの「マッキントッシュ(マック)」により台頭し、携帯音楽プレーヤー「iPod(アイポッド)」のリリースでその富を増大させてきた。

 アップルは、エンジニア職の人材集めや半導体開発手段の獲得に現在の景気低迷を利用しているようだ。

 ともにAMDのグラフィック製品グループ最高技術責任者(CTO)という経歴を持つ、ボブ・ドレビン氏とラジャ・コドゥリ氏の採用がその最たる例だ。アナリストはまた、昨年IBMIBM.Nを去りアップルのデバイス・ハードウェア・エンジニアリング部門のシニア・バイスプレジデントに就任したマーク・ペーパーマスター氏も半導体の経験が豊富だと指摘する。

 しかし、複雑で競争の激しい半導体ビジネスにアップルが近く参入するとの見方に懐疑的なアナリストもいる。

 米調査会社インスタットの主席テクノロジーストラテジスト、ジム・マクレガー氏は、チップ開発には数億ドルがかかると前置きし、「アップルにとって実行は可能だが、それが分別あることかどうかは分からない」と述べた。「アップルはすべての物事を首尾よくできるメガ・カンパニー(さまざまな事業分野を持つ巨大で優秀な企業)ではない」というのがその理由。

 ただし、アップルは収益を順調に上げており、業界でのポジショニングに成功していることも事実だとして、結論には含みを持たせた。

(ロイターニュース 原文:Gabriel Madway、Clare Baldwin、翻訳:植竹 知子)

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