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円急落の背景に市場の「異変」、米金利急騰でドル需要が増加

 基太村 真司記者

 5月29日、米金利の急騰に伴って金融市場間に生じた「異変」を受けて、一部参加者がポジション調整的にドルを積み増し。写真は都内の外貨両替所で昨年10月撮影(2009年 ロイター/Yuriko Nakao)

 [東京 29日 ロイター] 28日の海外市場で円が全面安となったのは、米金利の急騰に伴って金融市場間に生じた「異変」を受けて、一部参加者がポジション調整的にドルを積み増したことがきっかけだった。

 まとまったドル/円の買いは対ユーロなど他通貨に対する円売り圧力をも強め、これまで円を買い仕掛けてきた短期筋は、相次ぎ損失確定の円売り戻しを迫られた。米金利の上昇が一巡した29日、円は早くも下げ止まりを見せ始めており、一段の下落が続くかは微妙な情勢だ。

 「ハイブリッド・ブックのドル買いがすごい」――。28日の外為市場では、聞き慣れない言葉が飛び交った。文字通り金利と為替の「混成」を意味するハイブリッドとは、金融機関が保有するデリバティブなどの金利商品や、比較的長期の為替ポジションなどから生じるリスクを組み合わせて管理する仕組み。リスク管理のプロが相場を大きく変動させるきっかけになるほどのドル買いに動いたのは、もちろん理由がある。

 米債市場ではこの1週間、10年米国債利回りが0.6%上昇して半年ぶり高水準を付けるなど、米金利はじりじりと連日のように上昇。しかし、金利上昇と同時に上昇基調を保ってきた米株が20日の高値をピークに1日おきに上下して、ダウ平均が8000ドル半ばでもみあい始めるという「異変」が起こった。

 金融市場が従来と違う値動きを見せ始めたことで、金利・株・為替と関連デリバティブなど多数の商品を一元管理するハイブリッドのリスク管理には、次第にゆがみが生じ始めた。そして、10年米国債利回りが26日に直近の高水準を上抜けてさらに急騰する一方、米株は27日に大きく下落。株高と金利上昇が同時発生する前提で作られたポジションは「ついに持ちこたえられなくなり」(外銀)、ハイブリッド関係者は28日にかけて、いっせいにリスク量の圧縮に向けヘッジに動いた。それが通貨ドルの調達、ドル買いポジションの積み上げだったというわけだ。

 他の多くの市場参加者のポジションもドルの売り持ちに傾き、買い戻しが誘発されやすいタイミングだった。ドル/円は前週に93.85円まで下落したが、3月に付けた安値には届かず、90円割れなど一段の下押しを狙った売り仕掛けは、3月に続いて失敗。その後95円台へじりじりと切り返してきたことで、海外ファンドなどで「ショートを仕掛けた向きが買い戻しに動き始めていた」(別の外銀)という。

 大型投信の設定直後だったことも、円売りを助長した。野村アセットマネジメントの「野村新米国ハイ・イールド債券投信」の設定額が約1300億円と多額の個人マネーを集め、設定に伴って円売り/外貨買いが進む可能性があるとの観測から、海外投機筋を中心に円の売り仕掛けが入りやすかったという。

 投信設定に伴う外貨買い/円売りフローは、設定額内で外貨を調達するのみ。以前からドル/円を売り仕掛けているファンド勢の中には「多少金額が大きくても、投信絡みなら、買いが一巡すればもう一度ドル/円は下落するとの読みがあった」(都銀)。

 しかし、実際のドル買い圧力は、そうした向きの想定以上だった。複数の市場筋によると、ファンド勢が断続的に上値でドル/円を売り込みながらも、結局は損失確定の買い戻しに動かざるを得なくなったことが、ドル/円上昇の値幅をさらに大きくした。

 28日海外市場で一時97.24円まで上昇したドル/円は、米金利の上昇が一服になるとともに96円台へ反落。29日の取引では一進一退が続いた。円は英ポンドや豪ドル、NZドルなどに対して一時、直近安値を下抜けたものの、こうした通貨は対ドルでも最近の取引レンジ上限を突破しており「円が主導している相場ではない」(邦銀)との声が多い。円相場の全面的な下落が続くかどうかは、米長期金利の動向と密接に絡んだドルの行方が、大きく左右することになりそうだ。

 (ロイター日本語ニュース 基太村真司記者;編集 田巻 一彦)

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