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GMが連邦破産法申請へ:識者はこうみる

 [東京/ニューヨーク 31日 ロイター] 米政府高官によると、米ゼネラル・モーターズ(GM)GM.Nは6月1日に連邦破産法の適用を申請する。3カ月以内での再建を目指す。市場関係者のコメントは以下の通り。

 6月1日、米政府高官によると、GMは6月1日に連邦破産法の適用を申請する。昨年12月撮影(2009年 ロイター/Mike Cassese)

 ●金融市場を通じた日本経済への影響に注意

 <野村証券金融経済研究所 チーフエコノミスト 木内登英氏>

 GM破たんが直接的に日本経済に与える影響は限られる。むしろ日本経済への影響としては、金融市場を通じた経路に注意したい。GMの一時国有化に伴う米国財政赤字拡大懸念が米国市場でのドル安、債券安、株安傾向を生じさせる場合には、日本では円高、株安、長期金利上昇が実体経済に打撃となるだろう。

 ●再建長期化なら米債需給悪化も

 <三菱UFJ証券 チーフ債券ストラテジスト 石井純氏>

 危機が表面化してから時間が経過しており、サプライズはない。米ゼネラル・モーターズ(GM)GM.N向け債権については、世界の金融機関の多くがGMAC向けを中心に相当の引き当てや消却を済ませていると推測される。2008年9月の米リーマン・ショック級の激震が金融システムに再発する可能性は低いとみている。金融当局によるセーフティ・ネットも構築されており、金融市場に安心感を醸成している面もある。

 米政府による資金支援が巨額に膨らむ場合、米国債の増発観測が米債の需給悪化懸念を助長するリスクがあることには留意が必要だ。破産法を申請すれば総額500億ドルに達する可能性が指摘されている。しかし、経営再建が長期化すればさらに支援額が膨らむ事態に陥りかねない。米長期金利が需給悪化懸念から急反騰に転じ、節目の4%を目指す事態になれば、日本の長期金利も連れ高が避けられそうにない。

 ●破たん処理の細目にサプライズなし

 <ドイツ証券・シニア為替ストラテジスト 深谷 幸司氏>

 米ゼネラル・モーターズ(GM)GM.Nの破たん処理について、米財務省が90億ドルの債務を引き受け、新会社株の60%を取得するなどの細目が明らかになってきた。全体にサプライズはなく、短期的なインパクトは限定的だ。むしろ、不透明感が後退することで、ドルがアク抜けする可能性もある。

 ただ、米雇用を中心に、マクロ経済に対する2次的、3次的影響がどの程度広がるかが問題。時間をかけて把握するしかないが、必ずしもGMによる悪影響が景気回復を阻害する方向で考えているわけではなく、(景気の)回復過程で吸収されてしまう可能性もある。

 ●市場に衝撃与えず、クレジットのタイト化要因

 <トヨタアセットマネジメント 投資戦略部 シニアストラテジスト 濱崎 優氏>

 米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)GM.Nが連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用申請に踏み切ることが濃厚になったが、米政府が破産処理にうまく関与してきたことで、マーケットに大きな衝撃を与えるような事態は回避されるとみている。

 米政府がここまで破たん処理に時間をかけたことは、あまりにも会社規模が大きすぎてマーケットに悪影響を及ぼす可能性があり、多少のコストをかけてもいいと判断したと考えられ、地ならしが必要だったのだろう。

 5月29日の米株式市場は続伸し、1日午前の東京株式市場で日経平均が年初来高値更新するなど堅調な展開となっている。GM問題がようやく決着することで、クレジット市場においてもタイト化要因として受け止められよう。

 今後の破たん処理の過程で、人員整理、販売網・部品関連会社の縮小などで10数万人規模の失業者が出てくると見込んでいる。

 ただ、米国全体でみた雇用への影響は比較的小さく、景気全体を押し下げるまでに至らないとみている。債権者との交渉である程度の支持を得ていることから、デフォルト(債務不履行)が増え金融危機に陥るようなことも考えにくい。

 ●中長期的に2つのリスク

 <三菱UFJ証券 投資情報部長 藤戸 則弘氏>

 短期的な影響は限定的だろう。マーケットは時間をかけて破たん前提に織り込んできたため大きな株価の変動はないとみている。ただ中長期的には2つのリスクがあろう。

 ひとつはGMGM.Nが自動車会社として今後、収益を上げていけるかどうかに懸念が残る点だ。GMが得意とするのは大型車であって、環境対応車には手をつけたばかりだ。米国景気が回復して自動車市場のパイが大きくならない限り十分な収益をあげるのは苦しいのではないか。経営再建がうまくいかない場合、米政府は追加の支援を迫られることになる。米債券市場は財政赤字の拡大に神経質になっており、ドル安も進行する可能性があろう。

 第2のリスクは雇用減少だ。中堅自動車部品メーカーなど連鎖破たんの可能性があるが、米政府がすべての企業を救済するのは不可能だ。雇用環境の悪化は個人消費に大きな重しとなるだろう。

 ●再建後も体質変わらない

 <メリーランド大学のピーター・モリチ氏(経済学)>

 GMGM.Nは資本構造に問題があり、労務費も割高だ。破産法の下ではこの2つの問題に対処するのだろう。 

 ただ全米自動車労組(UAW)の譲歩後も、労務費は高い。破産法の下で再建を終えても体質は変わらないだろう。政治的な色合いの強い取締役会になるだろう。

 ●ドル反応薄、焦点は4日のECB理事会

 <東京都民銀行 シニア為替アドバイザー 角田秀三氏>

 米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)GM.Nと米政府は31日、GM再建に向けた最終調整を行い、同社がきょうにも破産法適用申請をする準備を整えた。

 ドルはこの報道で若干買い戻されたが、全般的に反応薄だ。今夜のオバマ大統領の発言後に、一部短期筋によるドルのショート・カバーが見られるかもしれないが、短期的にはGMの話は消化済みと言っていいだろう。

 為替市場では、株価の回復を背景にユーロ、英ポンド、コモディティ通貨、商品などのが買い戻される流れが続いている。現在で1.41ドル後半を推移するユーロが1.42ドルを超えれば、ユーロが一段高となる可能性がある。

 この意味で、4日に予定されている欧州中央銀行(ECB)の理事会は注目される。ECBは以前ユーロが1.6ドル台でユーロ高を放置したが、現状ではこれ以上のユーロ高は景気面から厳しいだろう。4日にはカバードボンドの詳細発表が予定されているが、現状のユーロ高では、金融面から一段のてこ入れが必要になるかもしれない。

 ●短期的には織り込み済み、今後に懸念残す

 <ステート・ストリート銀行金融市場部長 富田公彦氏>

 米ゼネラル・モーターズ(GM)GM.Nの破たんについては、短期的にはクライスラー破たんのときのように為替への大きな影響は回避できるという見方が市場の大勢だ。

 しかし、5月のシカゴ地区購買部協会景気指数がは34.9と予想外の悪さになっており、GMの影響が広がったものとみている。金融市場は景気回復期待で先走りすぎているきらいもあり、今後、GM破たんの影響がじわりと出てくるのではないかと懸念している。

 ●当局は用意周到に対応、株への影響限定的

 <カブドットコム証券 投資情報局 マーケットアナリスト 山田勉氏>

 今回の米ゼネラル・モーターズ(GM)GM.Nの破たんは、米政府当局の用意周到な対応の結果だ。目先的にはGM関連のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)清算についてテクニカル面での不安などはあるものの、イベント通過感の方が強く、株式市場への影響は限定的とみている。足元のグローベックス(シカゴの24時間金融先物取引システム)における米株先物は強含み、香港などアジア株も買われている。

 GMへの部品供給やGM絡みの債権を保有していた日本企業は、個別に短期的なリスクを抱える半面、日本の自動車メーカーにとってシェアを拡大する機会となる可能性もある。

 中長期的には、雇用減を通じた実体経済への下押し圧力が懸念され、楽観はできない。ただ、政府による経済対策の効果によって相殺されることも可能であり、必要以上に警戒することはないとみている。

 ●政府所有、財界人による管理が最善

 <RSMマグラドリーのスコット・ペルツ氏>

 米政府はゼネラル・モーターズ(GM)GM.Nを所有する方法を選択せねばならない。1つの方法は株式を信託化し、一部の受託者に財界関係者を指名することだ。信託の管理や所有者としての運営は政治家ではなく財界人が行うべきだ。

 政府による所有の問題は、時に一貫性がなくなる可能性があることだ。

 政府のために財界関係者のグループが管理を行うのが最善のシナリオだ。

 ●莫大な公的資金要し、決定も遅れる

 <ミッチ・マコネル共和党院内総務(ケンタッキー州選出)>

 マコネル院内総務は、360億ドルの救済資金を要し、結局は法廷外でまとまらなかったゼネラル・モーターズ(GM)GM.Nとクライスラーの再建に関する意思決定プロセスを批判した。

 「両社が生き残ることを望んでいる。そのためにはスリム化し、競争力をつける必要があるのは明らかだが、莫大な公的資金を要し、数カ月前に到達することも可能だった地点にたどりつくのが遅れた」

 ●1つの区切り、クレジット市場にタイト化圧力

 <新生証券 債券調査部 シニアアナリスト 松本 康宏氏>

 米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)GM.Nが連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用申請に踏み切る見通しとなったったものの、事前の予想通りで、マーケットへの影響は限られるとみている。マーケットの関心はすでに適用申請後に移っており、破たんそのものの衝撃は小さいと考えられる。

 クレジット市場も破産法適用申請を織り込んでおり、タイト化の流れにある。破産法適用申請がクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の清算事由に該当するが、これまで経営破たんした例を見てわかるとおり、大混乱に陥ることは想定しにくい。むしろ目先は、破たんという1つの区切りができたことで、さらなるタイト化圧力がかかりやすくなるとみている。

 ●前例のない企業破産

 <米ジョージア州立大学法学部のジャック・ウィリアムス教授>

 ゼネラル・モーターズ(GM)GM.Nの時価総額は知られる通り、加速的に減少してきた。のれん価値はこうしている間にも消えつつある。従って、破産手続きを遅らすことは誰の利益にもならない。

 GMに残った継続企業としての価値を保護するため相当迅速に動く必要がある。それと同時に適正手続きに関する権利のバランスを取らなければならない。

 規模ではなく、新生GMにおける政府のこれまでおよび今後の役割という点で、前例のない企業破産になる。

 ●イベントリスクは回避、影響は実体経済に徐々に波及

 <三菱東京UFJ銀行・企画部経済調査室長 内田和人氏>

 政府が債権者向けの保証を事前に進めて、再生プログラムの中で中核的な役割を果たすという方向であるため、株価が大きく下落するなどマーケットへのインパクトは限定的になっている。

 今回のゼネラル・モーターズ(GM)GM.Nの問題は、経済的な影響という意味では2つポイントがある。1つめは、GMがリストラ計画を進めていくうえで、雇用の調整やディーラーの削減、工場の閉鎖などが米国内にとどまらず、下請けのメーカーで工場の停止などといった形でじわじわと拡大する懸念があること。2つめは、新生GMが一定のビジネスモデルで復活した過程を想定した場合、今後新規の自動車購入需要が見込まれるアジアや新興国では、中低価格志向であるため、価格競争力やマージン低下に直面する。環境対応車の開発についても日系メーカーから遅れを取り、品質性からみても韓国を含めアジア勢に対し劣勢にあるため、再生するにしても立ち上がりがスムーズに進むことは期待できない。

 GMの問題は、今回の政府が慎重にパッケージを進めてコミットするという点を踏まえると、イベントリスクとしては回避ができるが、中期的に工場の閉鎖や失業者の増加など、破たんの影響は着実に実体経済に調整要因として出てくるとみられる。米国の消費が年率で3%程度伸びないと、世界経済は厳しい局面が続くとみられる。

 米国経済全体については、政府が7870億ドルにのぼる経済対策を打ち出し、金融安定化プランという形で目先については処理が進んでいるため、2010年にかけて米国経済はそれなりに回復するという方向で見ているが、その要因は公共投資や、一時的な減税効果といったもので、消費主導ではない。

 自動車販売は、住宅を含めある程度資産効果が出てこないと難しい。米国を含めた先進国は、買い替え需要しかないため、その部分で刺激が必要な状況に陥っている。2010─2011年にかけては、株価や住宅が大きく持ち直して消費、需要が喚起されるというところまでは期待できない。米国の家計部門の過剰借金の調整は4年程度かかると思われ、その間は消費は弱く、自動車の需要についても回復は期待できないとみている。

 ●米国消費への影響は限定的、7─9月GDPのプラス見通し変えず

 <第一生命経済研究所 主任エコノミスト 桂畑誠治氏>

 雇用と生産に影響が出やすい。工場閉鎖があると、部品メーカーの生産にも影響がある。米国内での自動車生産という面では、日本メーカーよりビッグ3の方が大きいので、日本メーカーが生産の減少分を補うのはむずかしい。日本メーカーも破たんの影響を見極めるとみられるので、ビッグ3の生産減の影響が当初は出やすい。

 雇用への影響については、GMGM.N単体でみれば、10万人までいかなくても、数万人の削減が行われる可能性が高い。ただ、破たんがすぐに失業率に反映しない場合もある。すぐに削減する部分と、数年にわたって削減する部分があるためだ。

 米国内での全生産で自動車メーカーが占める割合は昨年で8%程度。消費への影響という面では、金融の問題が払しょくされて、マインドが少し改善している流れが出ているが、これをやや鈍化させる程度の影響ではないか。自動車販売への影響はあろうが、消費全体に対する悪影響は限定的とみる。消費は今も弱いが、ここで、さらに弱まることはないとみる。

 7─9月期から米国のGDPがプラスに転じると見ていたが、在庫調整も4─6月期でも進むと見られることもあり、その見通しは変えない。

 日本への影響については、日本の米国向け自動車輸出が鈍化する影響があるだろうが、今、米国内での日本メーカーの在庫も減ったようなので、それを補う輸出が5月か6月にはありそうだ。それで打ち消される可能性が高い。ただ、GM製自動車が売れなくなる分、日本車の需要が増えるかといえば、元々景気が悪いこともあり、そこはあまりリンクしないとみる。市場への影響は、申請が実際にされたとしても、急に株が下がることはなさそうだ。

 ●米自動車業界全般、安心できない

 <みずほインベスターズ証券 シニアマーケットエコノミスト 落合昂二氏>

 6月1日に連邦破産法11条の適用を申請することは、予定通りだ。マーケットへのインパクトはほとんどない。円債市場への影響は、ほかのマーケットを通じて、間接的に影響を受ける部分があるかもしれない。ただ、社債のマーケットを通じて、多少需給の変化がみられる程度だろう。

 一方で、長期的には影響が出てくることは避けられない。米ゼネラル・モーターズ(GM)GM.N1社の話ではなく、米自動車業界全般には安心はできないと受け止めている。航空業界でも同じようなことが起きていて、業界全体が厳しい競争にある中、1社を救っても、また、別のところが悪くなる。業界の構造問題が根っこにあると考えている。新生GMとしてスタートするやり方として、適正だったかどうかという点では、将来の時点になってみないとわからない。グローバルな競争が激しさを増す中、米自動車業界が生き残るにはネガティブな状況にある。生産会社としてのバリューは、相当な努力がないと復活できないとみている。

 雇用の点は合理化するため、長い目でみて、景気には悪材料になるが、市場は覚悟しており、ある程度織り込んでいる。どの程度、実体経済に影響するか見守りたい。

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