for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up

振幅激しい米国債市場、コンベクシティのヘッジが値動き増幅

 [ニューヨーク 2日 ロイター] 米国債市場の振幅が目立っている。景気回復の兆しを見極めるべく経済指標への注目度が高まる中、米連邦準備理事会(FRB)は積極的な国債買い入れに乗り出す一方、財務省は多額の国債発行の必要性に迫られるなど、市場の波乱要因が増えているためだ。

 だが、市場のボラティリティに拍車をかけている要因は、モーゲージ証券市場で活発な売買を行っているトレーダーによる米国債の売却だ。その戦略は「コンベクシティ・セリング」と呼ばれている。

 米国債市場のベンチマークとなる10年債の利回りは先週、6カ月ぶり高水準に達した。FRBが長期金利の抑制を狙って3000億ドルに上る債券買い入れプログラムを進めているにもかかわらず、長期金利の上昇に歯止めがかかる様子はみられない。

 その一因は「コンベクシティ・セリング」にある。金利が上昇すれば、ファンドマネジャーはポートフォリオの目標リターンを維持するため、米国債の売却を通じてポートフォリオのデュレーション変動を抑えようとする。

 デュレーションは利回りや金利の変動に対する債券価格の感応度を示す指標で、債券ポートフォリオのデュレーションが長くなるほど、ポートフォリオの変動も激しくなる。つまり、ポートフォリオのリスクが拡大することになる。

 例えば、デュレーションが7年のポートフォリオは3年のポートフォリオよりもリスクが大きい。デュレーションが7年のポートフォリオは、金利が1.0%変動するごとに価値が7.0%変動する。それに対し、デュレーションが3年のポートフォリオは、1.0%の金利変動に伴う価値の変動幅は3.0%にとどまる。

 一方、コンベクシティは、利回りや金利の変動に対するデュレーションの感応度を示す指標だ。コンベクシティが高くなるほど、金利変動に対して債券価格は変動しにくくなる。逆にコンベクシティが低ければ、その債券は金利変動による影響を受けやすいことになる。

 債券利回りが急激に変動した場合にコンベクシティをヘッジするには、大量の国債を購入あるいは売却する必要が生じる。それは多くの場合、モーゲージ担保証券(MBS)や他のコーラブル債(発行体が期日前に償還できる債券)をヘッジするために行われる。

 MBSのコンベクシティはネガティブで、利回りが変動してもノンコーラブル債ほど価格は変動しない。債券利回りが急激に変動した場面では、モーゲージ債ポートフォリオのパフォーマンスは米国債などに比べ動きが鈍くなる。

 モーゲージ債のファンドマネジャーは、なぜ米国債市場の急激な変動を懸念しているのだろうか。それは、ファンドマネジャーやモーゲージ会社が、金利リスクをヘッジするために米国債を用いているためだ。米国債利回りが大幅に変動すれば、モーゲージの返済ペースに影響を及ぼす。

 利回りが低下すればモーゲージの借り手の多くが借り換えを行うため、モーゲージ金利も低下する。そうなれば期限前返済されるモーゲージも増えるため、MBSの投資家は予定通りの金利収入を得ることができなくなる。そのため、投資家は目減りした金利収入を補うため、米国債を購入する。

 一方、金利が上昇すれば住宅保有者はローンの借り換えを行わなくなり、期限前返済も減少する。そのような状況で米国債を保有していれば、MBSばかりか米国債価格も下落するため、ポートフォリオのパフォーマンスが一段と悪化する。そのため、投資家は流動性の高い米国債を売却することになる。

 では、米国債のどのセクターでコンベクシティのヘッジが行われるのだろうか。投資家による売買が活発なのは、残存期間が5年から10年の中・長期セクターだ。これは、住宅ローンの平均的な残存年数を反映したものだ。

 米国債の利回りがいずれかの方向に急激に振れ、主要なレベルを突破した場合、コンベクシティのヘッジによって投資家は米国債の購入あるいは売却を迫られることになる。それは債券市場の振幅を一段と激しくする要因となりかねない。

(ロイターニュース 原文:Richard Leong、翻訳:長谷部正敬)

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up