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株高進む、FRB出口言及せず流動性相場に期待感

 [東京 25日 ロイター] 25日の東京市場は株が買い進まれ、午後の取引で日経平均は9800円台に乗せた。外為市場でドル/円が円安方向に振れたほか、24日の米連邦市場公開委員会(FOMC)後に発表された声明が超緩和策の出口に言及しなかったことで、世界的な流動性相場が継続するとの思惑が浮上しているという。

 6月25日、株高進む。FRBが超緩和策の出口に言及せず流動性相場に期待感。写真は昨年9月、都内の株価ボード前で(2009年 ロイター/Yuriko Nakao)

 一方、2年利付国債入札が順調だった円債市場では、大幅な株高には反応せず、長期金利(10年最長期国債利回り)は1.4%を下回る水準で推移している。

 <環境関連などに買い>

 株式市場では日経平均が続伸。注目されたFOMCでは景気認識の上方修正はなく、市場はあまり注目しなかったという。「結果的に為替がドル高/円安方向に進んだことで、短期筋を中心に先物を買う動きが広がった。全体が落ち着いた動きとなったことで、リスクを取りやすくなった個人などの環境関連銘柄物色も活発化した」(準大手証券トレーダー)との声が出ていた。

 米連邦準備理事会(FRB)は23─24日に開いたFOMCで、予想通りフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0─0.25%に据え置いたほか、米国債とモーゲージ債の買い取りを継続する方針を示した。FOMC声明では、FRBによる米国債買い取りをめぐり、期待されていた増額方針や増額への道筋を描いた政策の過程に関しても言及はなく、「米市場参加者の中には失望感が台頭」(国内証券関係者)し、米長期金利はやや上昇した。

 だが、2年債、5年債と順調に入札をこなしているため、市場は「悪い金利上昇」とはみていない。むしろ金融緩和の長期化による流動性相場の持続に期待感を強めている。みずほ投信投資顧問・シニアファンドマネージャーの岩本誠一郎氏は「市場の流動性は潤沢であり、金利が安定すればマネーは再びリスク資産に向かう可能性がある。ただ、バブル的な要素も大きくなるため、各中央銀行のかじ取りが今後も重要になってこよう。一部の材料株には過熱感もただよっているが、投資家は資金の回転が利いている状態なので、テーマを変えて循環物色を続けるのではないか」と指摘している。 

 <米より日本の景気順調の声>

 また、みずほ証券・投資情報部マーケットアナリストの高橋幸男氏は「経済協力開発機構(OECD)が24日、最新の経済見通しを発表し、加盟国全体の成長率予想を2年ぶりに上方修正した。日本への評価が米国よりも順調との見方で相対的に高かったことは、プラス材料だ」と述べるとともに、「日本株は6月12日(ザラ場ベース)をピークとした調整の中の値固めの局面。テクニカル面での過熱感が修正され、主力株にも押し目買いが入りやすくなってきた。米長期金利が再び上昇してくる可能性など懸念材料はあるものの、円安基調が続けば再度、上値トライの場面が来るとみている」と話している。

 株価は午後の取引で上げ幅を拡大した。市場筋によると、海外ファンド勢の一部が不動産株を物色したとの見方が出ていたほか、先物主導で現物価格も上げ、朝方に売り先行だった短期筋の買い戻しも誘発したという。

 <ドル上昇は複合要因、持続性に疑問の声>

 FOMC後の外為市場ではドルが上昇。前日海外でユーロ/ドルが1.38ドル後半に250ポイントの下げとなったのに続き、東京ではドル/円が96.27円まで買われて22日以来の高値をつけた。

 米金利上昇を背景とするドル高をけん引した最大のエンジンとなったのは、23日のドル急落だ。24日のFOMCが市場予想に反して国債買い入れの増額・期間延長ともに見送ったことで、「23日に買い入れ増額期待が市場に浮上し、ドルが数百ポイント下落した分の反動」(バークレイズ銀行東京支店・トレーディング部長の小川統也氏)が生じ、ドル買い戻しを誘発したのが実情だったという。

 スイスフランの急落も、側面からドルの上昇を支えた。前日海外の取引では、スイス中央銀行(SNB)か国際決済銀行(BIS)、あるいは両方が24日、2度にわたって対ドルや対ユーロでスイスフラン売り介入を実施したとの観測が広がり、ドル/スイスフランは1.06スイスフラン半ばから1.11スイスフラン前半に400ポイント弱急伸した。

 <ECBが大量資金供給>

 さらに欧州中央銀行(ECB)が前日に実施した初の期間1年の資金供給オペが事前予想を上回る額となったことが、ユーロ安/ドル高につながった面もある。ECBは1%の固定金利で4422億4100万ユーロを供給。供給額は過去最大で、事前予想中央値の3000億ユーロを上回った。発表後の取引ではユーロが下落、銀行間貸出の主要指標とみられる3カ月物EURIBORは過去最低となる1.195%を付けた。前日の欧州短期金融市場では、複数の銀行がECBのオペでユーロを調達し、ドルに交換したとのうわさも出回った。

 海外市場ではさまざまな要因が重なってドルが上昇したものの、この流れが続くかは不透明だ。FOMC声明が金融緩和の長期化と経済収縮ペース鈍化の両面に言及する「両にらみ」姿勢を保ったことで、市場では「手掛かりにならない」(邦銀)との見方が大勢。バークレイズ銀の小川氏も、FOMCは「ドル95―98円、もしくは94―97円付近を中心とするレンジ相場を大きく変えるニュースにはならなかった」と話している。

 <2年債入札は順調>

 円債市場では、米債の下げを受けて、円債市場でも売りが先行。国債先物9月限は反落して取引を始め、一時は前日比21銭安の137円49銭まで下げ幅を広げた。しかし、午前の取引終了間際にかけては短期筋の買い戻しが優勢となりとプラス圏を維持して午前の取引を終えた。FOMCに対する失望感はあったものの、季節性も含めた需給環境の良さが勝り、相場の下げも限定的となった。

 2年利付国債の入札は、発行額が2兆4000億円と前月までの2兆円から4000億円の増額となったが、市場が「好調」と判断する結果になった。みずほインベスターズ証券・マーケットアナリストの井上明彦氏は「4000億円分は、難なく吸収できたという印象だ」と指摘。RBS証券・シニアストラテジストの市川達夫氏は「足元の運用資金が潤沢であることが鮮明となった」と述べている。

 <FOMC声明の評価はさまざま>

 市場の関心が集まっていたFOMC声明に関しては、超緩和政策の出口に関する議論をめぐって明確な言及がなかった半面、デフレ懸念などの表現も削除されたため、中銀ウォッチャー間でも意見が分かれた。

 みずほ証券・チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏は「声明文の内容は明らかにタカ派に傾斜している。景気認識、金融認識、物価の各上方修正、デフレ警戒表現の削除、信用流動性供給プログラムに調整を加える可能性が出てきている。ハト派の部分は、かなりの緩みの存在がコスト上昇圧力を打ち消す可能性が高いという部分だけだ。米連邦公開市場委員会(FOMC)内の雰囲気として、ハト派的な意見が通りにくかったのだろうと推測できる」と分析する。

 一方で、新生銀行・キャピタルマーケッツ部・次長の勝智彦氏は「両方の見方ができるようで、悪く取れば正常化に向けて何もできなかった、良く取ればあえて何もしなかったと言えるが、どちらかと言えば良い方に受け止めている。経済指標に良い結果が混じるようになり、先行きに対する見方が少しずつ改善してきた中でも金利の上昇は抑えられており、米連邦準備理事会(FRB)はある程度、金利上昇はコントロールできているという自信があるのではないか」と述べる。

 クレディ・スイス証券・チーフエコノミストの白川浩道氏は「かじ取りが困難化しているFRBの苦悩が反映されている。景気の現状・先行き判断がほとんど上方修正されず、FF金利の早期引き上げも否定された一方で、デフレ警戒は緩められた。しかも、デフレ警戒に関しては、アウトプット・ギャップが物価を当面押し下げる可能性を認めつつ、商品インフレ圧力の高まりからそれを緩めるという、やや苦しい対応になった」と指摘。「さらに量的緩和については下方修正の可能性を指摘し、量的緩和が淡々と拡大するのではないかという市場の思惑を牽制した。米国金融政策を取り巻く環境が複雑化しており、市場の期待形成が不安定化するリスクに備えるべき、ということではないか」とみている。

 (ロイター日本語ニュース 田巻 一彦 ;編集 山川 薫)

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