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中国が検閲ソフト搭載義務を延期、産業界は歓迎

 [北京 1日 ロイター] 中国政府は、7月1日から予定していた国内販売パソコンへの「検閲ソフト」搭載義務付けを延期すると発表。突然の延期発表に、反対派や産業界からは、歓迎の声が上がっている。

 7月1日、中国政府は国内販売パソコンへの「検閲ソフト」搭載義務付けを延期すると発表。写真は江西省のインターネットカフェ(2009年 ロイター)

 新華社は6月30日夜に、中国工業情報省は「検閲ソフト『グリーン・ダム』のコンピューターへの搭載義務付けを延期する」と報じた。

 中国当局は、検閲ソフト搭載の目的について、インターネットポルノの排除と主張してきた。これまでの計画では、中国で7月1日以降に出荷・販売するパソコンについて「有害サイト」への接続を遮断できる中国製の検閲ソフト「グリーン・ダム」の搭載を義務付けるはずだった。

 この計画に対しては、政治的な意図によるもので、技術的にも非効率などとして、検閲反対派や産業界、米政府当局から強い批判を浴びた。

 中国で人気の高いウェブサイト「網易(www.netease.com)」のエディター、Wen Yunchao氏は「(延期は)国内のインターネットユーザーや国内外からの圧力の結果」と話す。政府は最終的に計画を復活させ、搭載義務付けに踏み切る可能性もあるが「工業情報省が今回、ぎりぎりになって延期したことは、正義にとって小さな勝利だ」と述べた。

 中国工業情報省は、同省のウェブサイト(www.miit.gov.cn)に掲載した声明で、コンピューター業界の批判を受け入れる姿勢を明らかにした。搭載義務付けの新たな開始時期は、明示していないものの、検閲ソフト搭載計画が将来的に何らかの形で復活する可能性は残されている。

 中国では現在3億人がインターネットを利用しているとされる。共産党が今後もインターネットへの警戒感を持ち続けることは間違いない。 

 <米国の圧力>

 中国工業情報省が発表した声明では、検閲ソフト搭載義務付けは言論の自由を脅かし、国際通商ルールに違反するとの批判を否定している。

 ワシントンに本拠を置くコンピュータ・情報産業協会(CCIA)のエド・ブラック会長は、(検閲ソフト搭載延期について)米国の中国政府への影響力が依然、強いことを示すと指摘。電子メールで送付した声明で「米国の通商関係者が関与すれば成果が得られることを示す。インターネット検閲は広範囲に及ぶ問題だが、これまであまりに長きにわたって、企業は独自に他国の政府と交渉するしかなかった」と述べた。

 個別のコンピューター会社は、中国の検閲ソフト搭載義務付け計画について直接的な批判は控えており、延期の報にも目立った反応はない。

 世界第3位のパソコンメーカーで、台湾が本拠のエイサー(宏基電脳)2353.TWは、中国政府から説明を求める、としたほか、検閲ソフト搭載義務付けの新たな開始時期が決まればそれに従う姿勢を示した。

 エイサーの広報担当は「従うべきルールがあれば、最善を尽くしてそれに従うだけだ。計画には賛否両論があるが、当社はパソコンの販売会社にすぎない。われわれがルールを作るわけではない」と述べている。

 最も強硬な批判を展開したのは、中国国内の多くのインターネット活動家やブロガー、弁護士らで、法的措置も辞さない構えを示していた。

 「グリーン・ダム」反対のキャンペーンを張った北京の人権活動家のChen Yongmiao氏は、中国政府を計画延期に追い込んだのは米政府や産業界の苦情だった、と指摘した。「インターネット活動家の力だけでは、中国政府の意向を変えることはできなかった。米国や各国産業界の圧力があったからこそ、計画の実施見送りにつながった」としている。 

 (Chris Buckley記者;翻訳 吉川彩;編集 内田慎一)

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