[バンコク 7日 ロイター] - タイのインラック首相が政府高官人事で職権を乱用したとされる裁判で、憲法裁判所は7日、インラック首相の行為は憲法違反とする判決を下した。違憲判決が下ったことで、憲法の規定により首相は失職する。
人事決定にかかわった9閣僚も違憲と判定され、失職することになるが、法曹界の一部で懸念されていたインラック選挙管理内閣の総退陣という事態は免れた。
問題となったのは、2011年の国家安全保障会議(NSC)事務局長の人事。判事は、首相が職権を乱用し、NSC事務局長だったタウィン氏を別のポストに異動させ、後任に首相の縁者が就くようにしたと指摘。「国のためになるとして実施された人事でない」と述べた。首相は、情実人事はしていないと主張していた。
判決後、選挙管理内閣は、インラック首相の後任に、ニワットタムロン・ブンソンパイサーン副首相兼商業相が就くと発表。7月20日に実施予定のやり直し選挙を計画通り行う考えを示した。
インラック氏は会見で、違法行為は一切行っておらず、辞任に追い込まれたことは遺憾としながらも、明るい表情で国民に謝意を示した。その上で「いかなる状況にあっても、民主主義の道を進む」と表明した。
同氏の上訴が認められるのかや、政治参加の禁止、もしくは他にも罰があるのかについては現時点で不明。
通常なら下院議会が首相を選出するが、その議会は、首相が反政府デモ収束を狙い前倒し選挙実施を表明した昨年12月に解散している。
今年2月に実施された議会選挙は、投票が妨害され当選者が確定しない選挙区が続出。憲法裁は、2月の議会選を無効とする判決を下していた。
経済格差に根差す深刻な社会対立を映すタイの政局は、首相失職という事態を受け一段と不透明になっている。
バンコクを拠点とする反政府デモの主導者は、憲法裁の判決を歓迎するとしながらも、抗議活動は継続する考えを示した。またインラック政権支持派が判決に反発するのは確実で、反政府派、政権支持派がともに大規模な抗議活動を予定するなど、タイの混乱が収束する兆しは見えない。
すでに輸出の低迷や鉱工業生産の落ち込み、観光業への打撃に苦しむタイ経済に対し、政治危機は一段の足かせとなっている。
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