[東京 22日 ロイター] - 不動産投資会社のセキュアード・キャピタル・インベストメント・マネジメントが、東京駅に隣接するオフィスビル、パシフィックセンチュリープレイス丸の内(東京都千代田区)の売却プロセスに入ったことがわかった。
目標価格は約1800億円超とされる。複数の関係筋がロイターに述べた。
売却がこの価格で成立すれば、2008年のリーマン・ショック後、国内で最大の不動産取引になる。売却プロセスは始まったばかりで、仲介会社が買収に関心を持つ投資家や事業会社に接触を始めた段階にある。具体的な買い手候補の名前は現段階で挙がっていない。
セキュアード・キャピタルは、アジアの不動産投資会社PAGのグループ会社で、この物件を09年に約1440億円で買収していた。同社は都心の不動産価格が今後も回復するとにらみ、売却の好機と判断した。
セキュアード・キャピタルはコメントを差し控えた。
同物件は2001年に竣工後、2006年に不動産投資会社のダヴィンチ・ホールディングスが取得。その後世界的な金融危機を背景に物件の価値が大幅に下がり、それにより借入金の返済が滞ったことで、物件を売却する権利は債権者の新生銀行8303.Tに移転。その後、セキュアードがこの物件を取得した。パシフィックセンチュリープレイス丸の内は、都内で最も賃料が高く、空室率が低い丸の内オフィス街の一角にある。三菱地所8802.Tが多くの物件を所有する同エリアでは、「売り物」が出ること自体珍しく希少物件といえる。
このため今回の入札の動向は、都内のオフィスビル市況の行方を占ううえで重要なカギを握るとして、業界関係者の注目を集めている。
都内のオフィスビルの空室率は、このところ低下傾向が続き、一部では賃料も回復している。景気拡大への期待を背景に、この傾向がしばらく続くとの見通しが広がっている。
三鬼商事によると、同物件のある千代田区の今年4月の空室率は5.2%で、半年前の6.1%から低下した。同区のオフィス賃料は3.3平方メートル当たり1万7959円と、港区の1万6885円や新宿区の1万3762円に比べて高く、安定した収益が期待できる。
ただ、売却金額が1800億円となれば、同物件からの期待利回りは3%を上回る水準にとどまる。日本不動産研究所によると大手町、丸の内のAクラスのオフィスビルの期待利回りは4%となっており、パシフィックセンチュリープレイスは、割高な投資になる可能性もある。
直近の都内の大型不動産案件としては、シンガポールの投資会社GIC Pte[GIC.UL]が今年4月、雅叙園のオフィスビル(東京都目黒区)を約1340億円で買収合意した案件のほか、積水ハウス工業1928.Tが今年3月、約740億円で国際赤坂ビル(東京都港区)の買収に合意した案件などがあった。
*内容を追加して再送します。
藤田淳子 編集:田巻一彦
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