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焦点:終わらない「朝鮮戦争」、境界海域は中国関与で不安定化

[延坪(韓国) 17日 ロイター] - 韓国・延坪島の住民は、晴れた日には10キロ離れた北朝鮮を見渡すことができる。ただ、視界に入る風景はそれだけではない。住民は、韓国軍の艦船が北朝鮮や中国の漁船を追跡する様子を目の当たりにしている。

 6月17日、黄海上の南北境界線である北方限界線(NLL)付近には5つの島があるが、その海域は現在、両国の緊張が最も高まっている場所となっている。写真は白ニョン島で4月撮影(2014年 ロイター/Damir Sagolj)

延坪島が浮かぶ黄海上の海域は、世界有数のワタリガニの漁場だ。最近、そのカニ漁師の生命を脅かす事件が起きた。5月22日、北朝鮮が同島周辺で砲撃を行い、島の住民は防空壕への避難を指示された。

この事件の前には、北朝鮮の船舶が事実上の南北境界線である北方限界線(NLL)を越えたとして、韓国海軍が10発の警告射撃を実施していた。

NLLは1950─53年の朝鮮戦争を受け、米国主導で国連が一方的に設定。両国の間では休戦協定が結ばれ現在に至っているが、正確に言うと両国は戦争状態にある。

NLL付近には5つの島があるが、その海域では両国による砲撃が急増。両国の緊張が現在、最も高まっている場所となっている。

北朝鮮はNLLを認めておらず、NLLは国際的に認められている境界線でもない。そのため、北朝鮮軍の艦船は、日常的にNLLを越えて航行している。

軍事的緊張の高まるNLL付近の島々では、外国メディアの取材が制限されている。最近行ったロイターの取材では、韓国海軍の艦船が毎日のように中国漁船を追跡していることが確認できた。

韓国の海洋警察関係者や地元当局者によると、北朝鮮軍は、同海域の漁場の操業権を中国に売却することで、長年にわたって資金を得ているという。

延世大学(ソウル)のジョン・デリューリ氏は、「第3者である中国漁船の存在が、情勢をさらに不安定化させている」と指摘。その上で「米国と中国を巻き込む事態に発展する危険が差し迫っている」と付け加えた。

<休戦協定>

1953年8月30日に結ばれた休戦協定は、非武装地帯(DMZ)を設置するため、両国軍に軍事境界線の38度線から2キロ離れるよう求めた。

しかし、黄海上には不規則に島が浮かんでいることなどから、この軍事境界線を黄海上に延伸することは困難で、両国は合意に至らなかった。そのため、休戦協定の署名から1カ月後、海上での衝突を避ける目的で、米陸軍大将のマーク・クラーク国連軍司令官が境界線を引いた。

NLLについて、韓国側は陸上の軍事境界線を延伸したものであり、事実上の南北境界線とみなしてきた。その一方で、1974年に機密解除された米中央情報局(CIA)の文書で、「NLLは国際法的根拠はない」と判断されていたことが明らかになった。

  対する北朝鮮は12カイリの範囲が領海だとし、近年その主張を強めている。これには、NLL付近の5島も含まれる。

1999年と2002年には、カニ漁が行われる6月に両国軍の艦船が衝突。02年の衝突では韓国船1隻が沈没し、北朝鮮船も激しく損傷した。

また、2010年11月には、北朝鮮が延坪島に向けて砲弾170発を発射。その半数が同島に着弾し、民間人2人と韓国軍兵士2人が死亡した。

<火薬庫>

延坪島の崖の上に、両国のにらみ合いを観察できるスポットがある。取材中、韓国海軍の巡視艇2隻とコルベット艦1隻が、中国漁船の船団をNLLの南側から追い出そうとしていた。

島の住民の話では、漁船の活動にはしばしば、北朝鮮海軍の護衛艦が同行しているという。延坪島の崖の上には、平壌を射程に入れた巡航ミサイルなどが配備され、浜辺には上陸防止のフェンスが張り巡らされている。

また、船の残がいの間に機関銃の台座が設置され、戦車も配備されているほか、地雷に見えるものには近づくなとの警告看板もある。この状況は、5島の中で最も大きい白ニョン島の住民の1人が、「武器や爆弾が多数ある火薬庫に等しい」と表現するほどだ。

<砲撃の音>

砲撃の音は島の住民にとって、聞き慣れたものになっており、地元の子どもたちは、砲撃訓練をしているのが北朝鮮なのか、韓国なのかを判別することができるようになるという。

延坪島の自治会責任者を務めるChoi Sung-ilさんは、「子どものころ、砲撃の音は子守歌のようなものだった。でも、2010年の砲撃事件以来、砲撃の音を聞くとビクビクするようになった」と話す。

住民の話によると、砲撃事件を受け、駐留する韓国軍兵士の数が増加し、軍が買い取った土地の範囲も広がった。

延坪島の基地の敷地内で、ブドウ畑を所有するShin Soon-jaさん(72)は、「砲撃事件前に防空壕に行ったことはなかった」と振り返り、「北朝鮮には失望している。金正恩(第1書記)は卑劣だ」と語った。

正恩氏は2012年、北朝鮮の指導者として初めてNLLの北側の島々を訪問した。朝鮮中央テレビによると、正恩氏は兵士らに対し、韓国が砲撃してきた場合、「直ちに反撃」するよう指示。「局地戦にとどめることなく、国家再統一のための聖戦を行うよう」求めたという。

<中国漁船>

延坪島で半世紀以上にわたって農業を営むIm Byung-chulさん(68)は、農地から見える中国漁船の存在が、脅威というよりも安全を図るバロメーターになっていると語る。

「今は中国船がたくさんいる。北朝鮮で重要なイベントがある時は、中国船を目にすることはない。中国船がいれば、砲撃されることはなく安全なはずだと考えている」。

韓国海洋警察の関係者は、中国漁師は北朝鮮軍に1カ月1万1000ドル(約110万円)以上を支払っていると説明。韓国外務省の報道官は、中国人漁師が同海域で操業することは違法だと強調した。

一方、中国外務省はNLLについて、韓国と北朝鮮の2国間の問題であり、「朝鮮半島の隣国として、対話を通した解決を支持している」とした。

絶えず砲撃の危険にさらされながらも、島の住民からは非現実的とも思える期待の声が聞こえる。それは、冒険好きな観光客を誘致しようというものだ。

前出のChoi Sung-ilさんは、「裸眼で北朝鮮を見ることができる。われわれは、政府にここを『防衛観光スポット』にしてほしいと要望している」と明かした。

さらにChoiさんは「延坪島を訪れる学生たちが防衛に関する経験を得られるよう、政府にはインフラ整備を求めている」と続けた。ただ、その計画は期待通りには進んでいないという。

 (James Pearson記者 Ju-min Park記者、翻訳:野村宏之、編集:宮井伸明)

*誤字を修正して再送します。

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