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潜在成長率上がらなくても、物価目標は達成可能=日銀総裁

[東京 23日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は23日、都内で開かれた経済同友会主催のイベントで講演し、足元でゼロ%台半ばまで低下している潜在成長率が上昇しなくても、2%の物価安定目標の達成は可能だと語った。

6月23日、日銀の黒田東彦総裁は講演で、足元でゼロ%台半ばまで低下している潜在成長率が上昇しなくても、2%の物価安定目標の達成は可能だと語った。ワシントンで4月撮影(2014年 ロイター/Joshua Roberts)

夏場に向けて消費税率引き上げの影響を除いた消費者物価(生鮮食品除く)の前年比上昇率は「いったん1%近傍まで縮小するとみられる」としたが、その後はさらなる需給ギャップの改善と予想物価上昇率の上昇によって、物価は再び上昇していくとの見解を示した。

総裁は足元の消費者物価がプラス1.5%まで上昇率を高めていることについて「緩やかな景気回復が続くもとで、幅広い品目で改善の動きがみられる」と語った。先行きには夏場に向けて、エネルギーを中心とした輸入物価の押し上げ効果が減衰していくことから、「しばらくの間、1%台前半で推移すると予想している。特に夏場に向けては、いったん1%近傍まで縮小するとみられる」と言及。

もっとも、その後は基調的な物価上昇圧力の強まりに伴って、今年度後半から再び上昇傾向に入り、2015年度を中心とする期間に目標の2%に達すると指摘。その先も予想インフレ率が2%に向かって収れんしていき、需給ギャップのプラス幅拡大によって、物価は「強含んで推移する」との見通しを示した。

<物価上昇は予想外ではない、目標には途半ば>

足元の物価上昇の実現は、日銀にとって「予想外の物価上昇が起きているわけではない。量的・質的金融緩和(QQE)を導入した際に思い描いていたメカニズムに沿った上昇」とし、QQEが「所期の効果を発揮しているため」と強調。この1年余りで実際の物価が上昇していることに加え、アンケートや市場の指標から予想物価上昇率も上昇しており、需給ギャップと物価上昇率の関係を示すフィリップス曲線も「上方へのシフトが始まっているとみられる」と語った。

一方で、QQEの目的は「(物価が)2%に一時的に達することではなく、これを安定的に持続することだ」と説明。そのためには、現実の物価上昇率と予想物価上昇率をさらに引き上げていくことが必要」とし、「(目標達成は)途半ばだ」とも付け加えた。

そのうえで、金融政策運営は物価2%の安定的な持続に必要な時点までQQEを継続すると述べ、「何らかのリスク要因によって見通しに変化が生じ、物価安定の目標を実現するために必要になれば、ちゅうちょなく調整を行う方針だ」と追加緩和を辞さない姿勢を示した。

<供給問題の取り組みを、物価目標実現は「日銀の責任」>

さらに総裁は、日本の潜在成長率が足元でゼロ%台半ばまで低下する中、「大規模な金融緩和、財政支出、民間活動の活性化によって需要が高まってきた結果、水面下に隠れていた供給力の問題が顕現化してきた」と供給問題にあらためて言及。「今こそが、課題克服に向けた取り組みを進めるチャンス」とし、資本ストックの蓄積や女性・高齢者などの労働参加拡大、規制・制度改革の重要性を挙げて「政府による成長戦略の着実な実行」に期待を表明した。

政府が掲げる2%の実質成長率目標は「野心的な戦略だが、不可能とは思わない」と述べ、特に労働力の質・量両面における改善が「当面、極めて重要だ」と語った。

もっとも、「実際に潜在成長率が引き上げられるまでには、ある程度の時間を要する」と述べ、「仮に潜在成長率が上昇しないからといって、金融政策運営上、物価安定の目標の達成が困難になることはない」と主張。「潜在成長率がどうであれ、日本銀行の物価安定についての使命は変わらない」と述べ、「自らの責任において、できるだけ早期に2%の物価安定の目標を実現する。あらためて約束する」と強調した。

また、総裁は為替相場の変動が物価に与える影響について「中長期的な因果関係はあまり強くない」と指摘。為替は「短期的にはいろいろな要因で動く」としたが、むしろ「中期的には金融市場、長期的には物価動向に影響される」と語った。

原子力発電所が再稼働された場合の円高進行の可能性に関する質問に対し「石油やガスの輸入が少し減って、円高・デフレ要因になることはない」との見解を示した。

伊藤純夫 竹本能文 編集:田巻一彦

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