[東京 25日 ロイター] - 国家公務員共済、地方公務員共済、私学共済の3共済が5月以降、国内株式を積極的に購入している。市場筋によると、3共済から資金配分を受けた運用会社が5月から株式購入を開始、6月末までに購入を終わらせるよう求められているという。
東証の投資主体別売買動向データによると、共済など公的セクターの動向を示すとみられている信託銀行経由の株式買いは5月に入って拡大。同月は月間で6873億円と、2009年3月以来の高水準となった。信託銀行の株式購入は6月も続いており、統計の出ている第1週と第2週の合計ではおよそ2000億円ほどに達している。
足元の東京株式市場では、日経平均株価.N225が5月21日に1カ月ぶり安値をつけたあと10%近く上昇、TOPIX.TOPXについては11%近く上げた。信託銀行を経由した3共済の買いが相場上昇のけん引役となっているとみる市場関係者は少なくない。
これまでの株価上昇局面をみると、年金基金はリバランスの必要性から売り手にまわることが多く、現在の上昇局面で3共済による株式買いは異例な動きといえる。日本株が80%近く上昇した2012年11月から2013年5月にかけて、信託銀行は総額で約4兆円を売り越した。
3共済による日本株積み増しの背景として考えられるのは、公的年金マネーをリスク性資産に投入し、市場活性化を促そうという安倍晋三政権の強い意向だ。
安倍首相は、年金積立金運用基金(GPIF)による株式への資産配分拡大を成長戦略の柱のひとつに位置付けており、今月、田村憲久厚生労働相にGPIFの資産配分見直しを前倒しするよう指示した。
GPIFの基本ポートフォリオでは現在、国内株式への投資比率を12%とし、上下6%ポイントまでの乖離を許容する、という形をとっている。これに対し、見直し後は国内株式への配分が20%前後に引き上げられるとの見方が強い。
3共済は、来年10月にはGPIFとの一元化が予定されているが、3機関を平均するとGPIFと比べて国内株式のポートフォリオ比率がさらに低く、一元化を前に資産配分を見直す必要があるとみられている。
昨年3月末時点の3共済の国内株式の運用額は合計で約3兆5000億円。仮に比率が20%に引き上げられた場合、その額は5兆8000億円に膨らむ計算だ。
3共済の資産規模は合計で29兆円。GPIFの129兆円には及ばないものの、資産配分の変更は市場に大きな影響をもたらす。
シティグループ証券のチーフ日本株ストラテジスト、阿部健児氏は3共済が株式を購入しているかは正確にはわからない、とした上で、3共済がGPIFとの一元化を見越して株式比率を上げる必要がある、と指摘。「GPIFが10月から動くと明確に言っているので、それで株が上がる前に動こうということがあるかもしれない」と話している。
植竹知子、佐野日出之 編集:北松克朗
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