[東京 16日 ロイター] - キリンビールは16日、クラフトビール事業に本格参入すると発表した。東京の代官山と同社の横浜工場に醸造設備を新設し、製造・販売を行うほか、レストランも併設して、ビール体験を幅広く提供する。
独自のビールを打ち出すことで、ビール離れに歯止めをかけ、新たな消費者層にもビールの良さをアピールしたい考え。
新ブランド名は「SPRING VALLEY BREWERY(スプリングバレーブルワリー)」。キリンビールの磯崎功典社長は会見で「日本のビールは今までのあり方から変化を遂げ、新たなステージに突入する過渡期に立たされている」と指摘。横並びで競争するのではなく、独自のビール文化の創造に取り組むと意気込みを語った。
2015年1月に100%出資の新会社を設立する。投資金額は10―20億円を見込んでおり、来春には製造・販売を始める。2020年にはビール市場の3%、6―7万キロリットルの規模にしたいという。6万キロリットル規模になれば、売上高は150―200億円、利益は60―70億円が見込まれるという。磯崎社長は「5年で単年度黒字になれば成功だ」と述べた。
クラフトビールは、小規模な醸造所で作られたこだわりのビール。世界的にも人気化しており、米国では、金額ベースでビール市場の14%を占めているという。
来春のスタートを前に、9月からは試作品「SPRING VALLEY BREWERY 496」をオンラインで限定販売する。330ミリリットル・6本で3000円(消費税・送料込み)。田山智広マーケティング部商品開発研究所所長は「従来のカテゴリーに収まりきらないハイブリッドな商品」と位置付け、今後も、全く異なるタイプのビールを第2弾、第3弾として発売していくことを明らかにした。
キリンの1―6月期ビール系飲料(ビール、発泡酒、新ジャンル)の課税出荷数量は、前年同期比6.6%減の6518万ケースとなり、大手4社の中で唯一シェアを低下させた。磯崎社長は「これまでの行儀良さから脱し、戦う集団となるべく営業の意識改革を行い、課題に対してスピーディーに取り組んでいく」と述べ、下期に挽回を図る決意を表明した。
一方、経営資源を集中させるとして臨んだ「一番搾り」は1―6月期で同0.4%減とマイナスになったものの「缶と瓶がプラスとなり、ブランド育成には手ごたえを感じている」との認識を示した。
清水律子
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