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焦点:米FRB内で声明変更の機運高まる、利上げに向け下準備

[ジャクソンホール(米ワイオミング州) 24日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)の内部で、早ければ来月にも米経済が改善していることを一段と明確に示し、約10年ぶりとなる利上げに向けた下地をつくろうとする機運が高まっている。

 8月24日、米FRB内、早ければ来月にも米経済が改善していることを一段と明確に示し、利上げに向けた下地をつくろうとする機運が高まっている。ワシントンで2月撮影(2014年 ロイター/Mary F. Calvert)

一部FRB当局者らによると、景気の底堅さを示す兆候や、長期間にわたり金利を低水準で維持するリスクに関する懸念の高まりを受け、連邦公開市場委員会(FOMC)声明の書き換えをめぐる議論の準備が整ったという。

9月16─17日のFOMCで利上げ期待を抑えるために使われていた文言を変更・削除するかどうかは現時点で不透明だが、10月にそうなることはほぼ間違いなさそうだ。

中立派として知られるアトランタ地区連銀のロックハート総裁はインタビューで、「文言の一部変更は検討されており、向こう数回の会合で検討されるべきだ」と指摘。一握りの当局者は迅速な変更を求めているが、総裁は9月に変更するのは「まだ早い」との認識を示した。

同総裁は、たとえ数カ所でも声明を削除もしくは変更するのは潜在的な危険が伴うと指摘。FRBがコミュニケーションで失敗すれば、世界的に金融市場のショックを引き起こし、最悪の場合は景気回復を後退させかねないと付け加えた。

声明で意見が分かれているのは、10月に資産買い入れプログラムを終了させた後も事実上のゼロ金利を「相当な期間(considerable time)」維持するとしている文言だ。

また、労働市場には「著しい(significant)」緩みが残っているとする文言に対してもFRB内部で反対の声が出ている。

フィラデルフィア地区連銀のプロッサー総裁はロイターに対し、「私は、こうした文言によりわれわれが良くない箱に閉じ込められていると考えている」と指摘。7月下旬のFOMC声明に出ている「相当な期間(considerable time)」という文言に反対した上で、タカ派の当局者と同様に、時間軸にとらわれない「非常にシンプルな、指標次第の」ガイダンスが望ましいと述べた。

<タカ派の圧力強まる>

市場の反応とは別に、FRBのイエレン議長は米景気に影響を及ぼしかねない世界の経済情勢とも向き合わなければならなくなる。

ジャクソンホール会合では、英国や欧州、日本の中央銀行当局者がそれぞれ、自国や地域の景気回復ペースが予想よりも緩慢だと説明した。

現状では、投資家や主要なFRB当局者は来年央まで利上げはないとみている。

しかし、文言の修正は6年間に及ぶ事実上のゼロ金利の終了に向けたスタートとなりそうだ。一段と正常な金融政策ヘ回帰することに対し、市場の準備を促す必要もある。

イエレン議長は22日の講演で、早めに政策を引き締める可能性を普段にも増して強調した。内部のタカ派からの圧力が強まっていることを背景に、声明の変更が計画されていることを示唆した形だ。

FRBの元副議長で、現在はプリンストン大学教授を務めるアラン・ブラインダー氏は「少数の例外はあるものの、指標の大半は人々の見方をややタカ派にしている」と指摘。「全体の見方が移動しているため中間点も移動しており、イエレン議長の見方も移動している」と述べた。

7月29─30日分のFOMC議事要旨では、何人かの参加者は、労働市場の緩み(スラック)の度合いや利上げ時期の見通しに関する表現を含め、声明の一部文言に同意しなかったことが分かった。こうした不同意の意見は強まる一方だとみられる。

イエレン議長は22日の講演で、近いうちに声明のトーンを変更する必要がある可能性を認めた。「経済がわれわれの目標に近付く中、FOMCの重点は、残る緩みの度合いに関する課題に自然と移るだろう」と指摘。「そして、どういった環境下で異例の緩和(政策)をわれわれが引き戻し始めるのかをめぐる課題」に移るだろうと述べた。

(Jonathan Spicer記者、Michael Flaherty記者、Howard Schneider記者 翻訳:川上健一 編集:佐々木美和)

*内容を追加しました。

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