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コラム:イエレン議長への「5つの質問」=鈴木敏之氏

[東京 12日] - 米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長が17日(日本時間18日未明)、定例の記者会見を行うが、多くの問題で曖昧な答弁しかできない可能性が高い。量的緩和(QE)による資金供給が終わるというのに、出口政策の具体的な姿は示されそうになく、奥深そうな問題が残されたままということだ。

 9月12日、三菱東京UFJ銀行・シニアマーケットエコノミストの鈴木敏之氏は、証券購入プログラム終了を間近に控える米金融政策の視界は悪く、17日の定例会見でイエレンFRB議長は曖昧な答弁しかできない可能性が高いと指摘。提供写真(2014年 ロイター)

労働市場のスラック(余剰)を金融緩和で縮小する意向であるならば、今後はフォワードガイダンスが有力な手段になる。記者会見は市場へシグナルを送る重要な機会だ。しかし、ある程度明確な先行き見通しを市中に持たせることは、今の状況では至難に見える。イエレン議長が以下5つの疑問に明瞭な説明を与えることができれば話は別だが、おそらく無理と思われるからだ。

●QEの効果はフローがもたらすのか、ストックがもたらすのか。

米連邦準備制度のバランスシート規模はすでに4.5兆ドルに膨れ上がっている。QEの効果は、毎月の証券購入による資金供給のフローによるものなのか、それともFRBが対象証券を大量保有することによる市場の需給バランス、すなわちストックによるものなのか。この判断が曖昧にされたままである。

フローのQE縮小は終わりに近づいているが(10月終了見通し)、ストックが緩和効果を持つものであるならば、強烈な緩和が持続するということになる。この問題を曖昧にしておくことによる不透明性はあまりに大きい。特にバブル発生懸念が解消されない。

また、この問題を曖昧にしたまま、利上げに進むならば、FRBは一見、緩和と引き締めを同時に実行しているようにもなってしまう。これでは、市場の先行きの期待形成が定まらず、フォワードガイダンスによる緩和が成り立たないと言われても仕方がない。

●保有証券の満期までの期間が短くなる影響をどう見るか。

保有証券の償還分の再投資をどうするのか。結局、明瞭な説明に至らないまま、フローのQEが終了しそうである。

再投資をやめれば、バランスシート規模が縮小するだけではない。保有する証券の満期までの平均期間が短くなっていくのである。すなわち、満期までの期間の長い債券の需給バランスが変わり、イールドカーブをスティープ化させることになる。

このことが経済にいかなる影響を与えるのか。フォワードガイダンスを標榜するならば、本来、FRBが説明すべき話である。

●欧州中銀(ECB)の緩和とユーロ安の影響は。

ECBが4日の理事会で電撃的な追加緩和を決定し、それを受けて、ユーロの対ドル相場が下落した。他国・他地域の金融緩和がその通貨を減価させる効果を持つと、ドルは相対的に上昇する。それは果たして米国の金融政策に中立な要因だろうか。

FRBはこれまで日銀の緩和については、日本がデフレから脱却するほうが大事ということで寛容であった。しかし、ユーロ圏は自らデフレに陥ったとは認めていない。ECBの政策を許容するならば、ユーロ圏がいかなるデフレに陥っていて、それが米国経済に与える影響は何かを説明しなければならないところである。

●「マクロプルーデンス政策」の具体的な姿は。

フィッシャーFRB副議長が公式の場(8月11日のストックホルムでの講演)で、金融市場の安定確保と銀行の厳しい監視という「マクロプルーデンス政策」の重要性に言及した。これは、新たな規制が始まるということだろうか。その具体的な姿が不透明なままだと、金融機関の行動を萎縮させかねない。

つまり、具体化しないことが引き締め効果を持つのである。それは、フォワードガイダンスで緩和を進めていることと矛盾する。

●正常化に失敗した場合の「プランB(次善策)」は何か。

4.5兆ドルのバランスシートを抱えて、金融政策の正常化、利上げに向かうのは、実に難しい仕事である。乗用車の運転の経験しかないのに、大型トラックを運転しようというのに等しい。ハンドルをどれだけ回せば、車が方向を変えるのか、止めるためにはどれだけ強くブレーキを踏めばいいのか、わからないのである。

失敗すれば、元に戻せばよいという単純な話ではない。QE再開は、無理だろう。「QEの過度の拡大は好ましくない結果をもたらす」として、離脱を図ってきた経緯があるからだ。フォワードガイダンスで失敗したときに備えて、プランBが欲しいところだ。しかし、それが用意されているようには見えない。

このように金融政策の先行きが不透明になる影響について、イエレン議長はおそらく曖昧な答弁しかできないだろう。金融政策をめぐる不確実性が経済パフォーマンスを悪化させるリスクを心配しなくてよいものだろうか。

*鈴木敏之氏は、三菱東京UFJ銀行市場企画部グローバルマーケットリサーチのシニアマーケットエコノミスト。1979年、三和銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。バブル崩壊前夜より市場・経済分析に従事。英米駐在通算13年を経て、2012年より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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