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アングル:中国鉄鋼輸出が税優遇フル活用で急増、アジア諸国と摩擦も

[東京/シンガポール 29日 ロイター] - 中国は、このところ税優遇措置を受けられるボロン添加鋼の輸出を急激に増やしている。中国から安価な鋼材が大量に流入しているアジア諸国は強く反発しており、貿易摩擦につながりかねない様相を呈している。

 10月29日、中国は、このところ税優遇措置を受けられるボロン添加鋼の輸出を急激に増やしている。遼寧省営口で昨年8月撮影(2014年 ロイター)

輸出が急増しているのは、農機具や鉱業向けに鋼材の硬度を高めるボロンを添加した製品。中国政府は付加価値の高い鋼材の輸出を促進しようとしており、ボロン添加鋼は輸出時の関税が低く設定されている。

しかし、インドなどの製鋼所は、税優遇を受ける目的のために最低限のボロンが添加されている、と批判。自国政府に対策を求めている。

コンサルタント会社MEPSのアナリスト、ジェレミー・プラット氏は「抜け穴だ。アジア諸国が不満を持つのも当然」と述べた。

中国の製鋼所は、鉄鋼1トンにつき0.0008%のボロンを添加すれば、添加にかかる費用の5倍の輸出税還付を受けることができる。

微量のボロンを添加しても質に大きな変化はないが、ボロン添加鋼は特殊鋼、または合金鋼と分類されることになる。リベートの分だけ価格を下げられるため、安価に輸出することが可能になるというわけだ。

中国の鉄鋼輸出は先月、過去最高を記録。今年上期のボロン合金鋼の輸出は1158万トンで、鉄鋼輸出全体の30%近くに達している。

中国鋼鉄工業協会(CISA)幹部の李新創氏は、中国政府は鉄鋼業界を補助しているわけではないと強調。ただ、輸出急増が続けば問題も起こりうるとし、妥当な解決策を探る必要があるとの見方を示した。

李新創氏は先週、天津で開催された会議で「強い不満を感じている国もあるが、われわれの顧客は非常にハッピーだ」と述べた。

協会の別の幹部によると、税還付措置は7月から一部撤廃。政府は年末までに、税還付の対象となる鉄鋼製品のリストを改定するという。

<アジア諸国はダンピングと反発>

中国の鉄鋼輸出増のあおりを最も受けているのがインドだ。インドでは、4─8月に鉄鋼輸入が21%増加したが、中国からが大半だった。

インド第3位の鉄鋼メーカー、JSWスチールの共同マネジングディレクター、セシャギリ・ラオ氏は「中国の製鋼所はごく少量のボロンを添加しただけで、それを合金鋼と呼んでいる」と批判。まさしくダンピング行為だと述べ、インド政府に問題を提起した、としている。

インドのマハラシュトラ州は7月、中央政府に対して、同州の鉄鋼セクターは競争力の欠如により、「閉鎖の瀬戸際」にある、と訴えた。

日本でも中国からの鉄鋼輸入は急増している。日本鉄鋼連盟によると、中国からの特殊鋼(ステンレス鋼除く)輸入は1─8月は52万3652トンで、前年同期比177%増加。経済産業省の山下隆也鉄鋼課長は、中国から安価なボロン添加鋼が海外市場に流入し、貿易摩擦を引き起こしていることについて、中国側に懸念を伝えた、としている。

<中国、税優遇撤廃の可能性小さい>

中国が税優遇措置を廃止するとの観測もある。ただ一部アナリストは、税優遇を撤廃すれば業界への打撃が大きいため、税関での検査強化などの措置にとどめる可能性が大きい、と見ている。

CLSAのコモディティストラテジスト、イアン・ローパー氏は、輸出を減らす唯一の方法は課税と指摘。「中国の輸出が目先、減少するとは思えない。その前に世界の鉄鋼価格は大幅に下落する」と述べた。  

景気減速のあおりで国内需要が減退するなか、中国の鉄鋼輸出は1─9月、40%増の6530万トンだった。今年の生産が推定で8億トンを上回ることを考えると、輸出に回っているのはまだごく一部だ。

Yuka Obayashi記者、Manolo Serapio Jr記者 翻訳:吉川彩 編集:吉瀬邦彦

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